数年前にHSPという特性を知りました。
自身の性格に思い当たることがあったのでネットで簡易テストをしてみたら、「HSPである可能性が高い」と結果が出ました。
私はHSPなのかもしれないと思って過ごしてきましたが、最近「なんちゃってHSP」の存在を知りました。
HSPと似た症状がでる、別の精神的現象があるというのです。
「……あれ、私、HSPではなく、こっちじゃない?」と気が付きました。
詳細を以下にまとめます。
HSPとは
HSPとは「繊細な気質」を持つ人を指す言葉です。
1996年にエレイン(エレン)アーロン博士が心理学上の概念として提唱したもので、精神医学の言葉ではありません。
病名ではありませんし、治療法もありません。
生まれ持った性質であるとされ、全体の2割の人がHSPだと言われています。
HSPであるかどうかは以下の4つの感覚処理感受性を段階的に評価し、マーカーが極めて高い人が該当するとされています。
〇 刺激に対する圧倒されやすさ
〇 情動的な反応性や共感性の高まりやすさ
〇 ささいな刺激に対する気づきやすさ
これら4つの感受性は、英文の頭文字をとってDOES(ダズ)と呼ばれています。
HSPの主な特徴は以下の通りです。(参考:新宿ストレスクリニック)
〇 掘り下げて調べ物をするので、知識が非常に広くなる。
〇 お世辞を見抜く。
〇 物事を深く考えるため、時間がかかる。
〇 浅い会話や人間関係を好まない。
〇 人のしぐさや言葉に敏感で、感情を強く察することができる。
〇 他人や映画などの作品に感情移入しすぎる。
〇 光、匂い、音、肌触りなどに敏感で、不快に感じることが多い。
私は妙なことをグジグジと考え、思考を膨らませて勝手に傷つくことがあります。
表面的な付き合いしかしていない人には「豪快、飄々、鷹揚」としてイメージを持たれるのですが、よく知る人には「繊細、神経質」と評されるのです。
私は繊細と言われることが長らく嫌でした。
不幸がっているように感じてしまい、自己嫌悪に陥ってしまうのです。自意識が強いのだと考え、益々嫌悪しました。
哀しいなどの負の感情を出さないようにして動揺を隠し、理想の自分に近づけるように装うようになりました。
それが「豪快、飄々、鷹揚」という評価に繋がっているのでしょう。
HSPという言葉が知られるようになると、ネットなどで「私はHSP」と名乗る方が出てきました。
彼らが生きづらさを感じていることが、よくわかりました。
私がいくつかのサイトで簡易テストをしたところ、「HSPによる鬱病の可能性が高いため受診を勧める」との診断が出ました。
非常に簡易なテストですので、そう出る可能性が高いのかもしれません。
私が精神的不調を強く感じていた頃に比べて、概ね寛解していますので、特に気にせず生活を送っていました。
HSPは多くの人に当てはまる
HSPの大きな特徴に、「相手の気持ちを考えすぎて疲れる」というものがあります。
……これ、日本の文化そのものですよね。
言葉にしなくても考えて察して先回りして相手が喜ぶ行動をする、或いは不快にならない行動をするもの、と教えられてきました。
不快なことを言われてもその場で論じることはせず、一旦飲み込むのも文化の一つです。
その場で反論して、自分の意見が偏っていたら周囲になんて思われるかわからない、といった自己防衛も働きます。
後から「意見を言うべきではなかった」と思ったり、「あの人に反論せず飲み込んだけど(それが大人の対応と評されるのも日本の文化)納得いかない」と後から憤ることもあります。
察する文化である日本の対人関係は、正面からぶつからず、あとから逡巡することが多いのです。
正解がわからないまま月日を重ね、あとから「あの時のあなたの行動はよくなかった」と言われたら、積み上げた経験や思考を疑うようになるのは自然です。
そしてより繊細に考えなければと神経を張るようになります。
つまりその繊細さが生まれ持ったものなのか、環境の中で培ったものなのかの判別は難しいように思います。
日本の多くの方は「もしかしたらHSPかも?」と思われるのではないでしょうか。
なんちゃってHSPは過覚醒
なんちゃってHSP
ところで簡易テストで最高値の「HSPによる鬱病の可能性が高いため受診を勧める」と出た私ですが、「HSPではない」と疑っています。
HSPには「なんちゃってHSP」があり、HSPに似た別の症状があると知ったからです。
似た症状を発するものの一つに、発達障がいがあります。
発達障がいの特性は多岐に渡りますが、「他人の気持ちを想像しにくい」場合があります。(ケースによります)
しかし当人は「他人の気持ちを考えすぎている」と思うことがある厄介なものです。
HSPと似ている発達障がい
ある知人のケースです。
アスペルガー症候群の診断を受けた男性は、仕事の効率が悪く、物事を上手く進められませんでした。
彼は家業を継いで、ある施設の代表となりました。
代表に就く前、施設の一従業員として働いていた彼は、他の従業員から「仕事ができない人」と噂されていました。
彼もそう見られていることを知っていました。
代表に就任した後も従業員とコミュニケーションが取れず、益々孤立していきました。
公的な書類等の提出期限が守れず、他業種との兼ね合いも上手く取れないために、多方から催促を受けて対応に追われるようになりました。
彼は追い立てられる日々の中、「あの従業員はこう思っているはずだ」「あの施設利用者はこんな悪口を言っているはずだ」と被害妄想に襲われました。
そして従業員を解雇し、物言わぬ従業員だけを残しました。
益々現場は混乱し、施設利用者も去る人が現れました。
彼の被害妄想は一部当てはまっていましたが、多くが的外れでした。
彼は人の心を想像できない人でしたが、当人は「人の気持ちを想像してわかり過ぎて辛い。俺は繊細だ」と思っていたのです。
人の心を思いやるのではなく、被害妄想から勝手な想像をしていた結果でした。
HSPと似ている症状例
私は自分が発達障がいではないかと疑いました。
HSPに似た特性があるからでもありますが、精神的に非常に不安定な両親が発達障がいではないかと疑ったからです。
発達障がいは一定の確率で遺伝すると言われています。
毒親にはいろいろなタイプがあり、軽いものから犯罪に当たるものまで様々です。親と子の相性の違いも関係してくるでしょう。これは私が体験した話しです。☆ 毒親に悩んだら読む本・8選毒親家族私はごく普通の一般家庭で育ちました。両[…]
両親は一日に何度も起こす癇癪、こだわり、盗聴されていると思い込む妄想、被害妄想、音や臭い、光への敏感さ、恐ろしいほどの感情の振れ幅、片付けができず思考が散らかっている様がありました。(記事を読むと詳しくわかります)
私がネットで複数の発達障がいの簡易テストをすると、どれも可能性が低いと出ました。
それではやはりHSPなのかしらと考えました。
私にあるHSPらしき症状は以下の通りです。
たしかにHSPの特徴と似ています。
しかし、誰でも当てはまる様にも思います。
HSPとそれらしき症状の違い
私よりずっと繊細な「これぞHSP」の友人がいます。
彼女は見た目に反して非常に繊細な神経の持ち主です。自己免疫疾患の脱毛症に悩まされています。
彼女は酷く怯えるような精神状態が続き、そのストレスからたまに爆発しては友人関係に多少のトラブルを起こします。
それに比べると、私はまだ軽いのです。
嫌だなと気に病むことがあっても、興味のない人が相手ならある程度割り切ることができます。
HSPの方は疲れながらも自己評価が傷つくことを恐れたり、期待に応えるために付き合ってしまいますが、私は興味がない相手に言い寄られそうになったら、暗に線引きをして虚勢する程度は割り切ることができます。
私は気に病むこととやまないことの差が大きいのです。
これは周囲からも時々指摘されていました。
精神過敏を引き起こす過覚醒
そんなことを考えていたある日。
精神科医のこんな文章を読みました。(出典:精神科医井上智介)
子どもが長期的に言葉の暴力やネグレクトを受けると、成人になっても治癒しないほどの「脳に深い傷」と残します。
発達段階の子どもの脳は耐えがたいストレスを感じると、過覚醒や不安な状態に陥ります。
すると様々なホルモンを調整するHPA軸というシステムの主軸が正常に働かなくなり、炎症を引き起こすストレスホルモンが発生し続ける状態となります。ホルモン調整の機能が異常なまま大人になってしまい、不調を引き起こして身体症状に苦しみやすいことが指摘されています。
私は長く精神的不調に悩まされてきました。
育った環境による影響だと考えています。
略歴美術系高校、芸術大学を卒業後、イベント企画、装飾企画営業職を経て結婚。三姉妹を育てる母です。 夫と晩酌をするのを楽しみに日々を過ごしています。育った環境両親との関係に悩み、心のバランスを崩していた時期がありました。 […]
両親の荒れぶりは非常に激しいものでしたが、周囲に理解されることはありませんでした。
全ては閉ざされた家庭内で行われていて、その場面を見ていなかったからです。
しかし最近になって両親が祖母を引き取ったことで、祖母が私の両親の異常さを知りました。
祖母が異常だと訴えたことは、私が長らく受けてきた仕打ちそのものでした。
祖母が両親を「狂っている」と親戚に訴えたことで周囲に知られることになり、私が感じてきたストレスは私のせいではないことがわかりました。
細かなことに敏感になり過ぎることがあると、自覚しています。
特に両親を目の当たりにすると、PTSDに近いような動悸や過敏性、焦りなどを強く感じます。
「過覚醒」を引きずったまま大人になっているのではないかと疑い、調べてみました。
過覚醒の症状
過覚醒とは強いストレスなどを受けた後に起こる防御反応が、その後も持続してみられる現象です。
交感神経が過剰に高ぶり続けている状態を指します。
症状は以下の通りです。(参考:トラウマケア専門こころのえ相談室。抜粋 )
〇 フラッシュバック、パニック発作
〇 動悸、高血圧、口の渇き、肩こり、頭痛、胃痛、吐き気、腹痛、円形脱毛、月経不順
〇 寝つきが悪い。睡眠が浅くなり些細な物音で起きる。
〇 評価や表情、体調に敏感になる。
〇 過度の緊張状態が継続する。疲労感が強い。
〇 人と接触するのが嫌になる。集中できない。
〇 気持ちが高ぶる、驚愕反応がある。
〇 胸が苦しい。手の震え。体が動かない。痺れて、意識が遠くなる。
〇 体が重い。無気力で動けない。
〇 人間関係に過敏になる。自分の心と体が過敏になる。
〇 注意過剰、過度の用心、必要以上に怯える。
私はある内科で、ストレス症状が強く出ていると言われたことがあります。
暫く漢方治療をしました。
これは私が男性ばかりの業界で仕事をしていた頃の話しです。男性社会でさらされた無駄なストレス、体に出た症状、失敗から学んだことを記しています。今ストレスに晒されている方に参考にしていただけたら幸いです。働く女性が負[…]
その病院は東大医学部生が研修に来るクリニックでした。
当初、医師は家族のストレスを疑いました。
私が結婚したばかりだったこともあり、夫との関係が良好かを聞かれました。
夫とは良好でしたのでそう答えると、ストレスの原因は仕事ではないかと言われました。
漢方治療をしましたが、変わらず、環境を変える他改善しないと言われて退職しました。
実際ストレスが減り若干症状が改善しましたが、なくなることはありませんでした。
ストレスの根本は育った環境にあったと、今は思っています。
現在も引き続いてある症状がこちらです。
過去の事を思い出し、自己嫌悪に陥り声をあげる。悲しくなるなども良くあります。
過覚醒の症状にある「胸が苦しい。手の震え。体が動かない。痺れて、意識が遠くなる」は、パニック障害とよく似ていますね。
パニック障害を起こしていた時期もありました。
育った家庭にストレスが多かったことから、長く精神不安を抱えていた経験があります。早くから実家を出て親と距離をとっていたにも関わらず、社会人になってからも振り回される事案がありました。そこに仕事の多忙と、長く付き合った婚約者との別れが[…]
HSPと過覚醒の違い
HSPと過覚醒の違いは、HSPの特徴にある深い共感性や、深い情報処理がない事だそうです。(参考:パークサイド日比谷クリニック)
私の共感性は興味があることに限ります。
また、どちらかと言うと共感より、その背景に何があるのかを考えてしまいます。
情報処理も同様に興味があることに限り、興味がないことには実に適当に対応します。
そのため間違うことも多いです。
それでもいいと思って生活しています。
HSPなのか過覚醒なのかを知る必要性
HSPが知られたことで、それまで「なぜ私はこんなに過敏になってしまうのだろう」と悩んでいた方が救われたケースがあるでしょう。
原因がわからないほど辛いことはないからです。
また、同じような症状を抱えている人がいると知って、救われることもあります。
仮にHSPでもそうでなくても苦しんでいることに変わりはないのだから、あえて「あなたは“なんちゃって”HSP」だ、と言う必要はないと思われるかもしれません。
しかし私は、その原因が何なのか知った方が、生きやすいと感じています。
過覚醒はそれを引き起こした原因があります。
原因に向き合うことで一時は心が大きく乱れますが、その後心の整理が進むと軽快することがあるからです。
HSPだと思ってしまうと、両親から受けた精神的虐待は「気にし過ぎた私のせい」と捉えられかねません。
あらゆることを人のせいにして片づけてしまうのは問題ですが、自分の内にばかり答えを求めても、逡巡が続いて苦しむだけです。
過覚醒かもしれないと思うと、いつ何がどこでどうなって今があるのかを考えることができます。
それは心の整理に役立ちます。
どなたかの参考になりますように。
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