「ケーキの切れない少年たち」認知テストの図の描きし写しを6、9、11歳がやってみた結果

少年院に勤める精神科医の著書「ケーキの切れない少年たち」が話題です。

罪を犯して少年院に入ることになった少年たちは、少なくない割合で発達障がいがあったり、認知機能が低いことが記されています。

発達障がいや認知機能が低いから犯罪を犯してしまうわけではなく、本人は努力しているつもりでも叱られることが多かったり、無理な努力を求められてストレスを溜めたり、虐めに遭ったり、他人の感情を読み取る能力が低いことで認知の歪みを起こし、結果的に独りよがりな思考になることで、犯罪に走りやすくなることがわかります。

その「認知機能」を測るため、実施されているテスト(試み)があります。
その一部が「図形の描き写し」です。

モデルはこちら。

出典:ケーキの切れない非行少年たち

認知機能が低い入所者が描き写した例を、著者である宮口幸治さんが再現した図がこちらです。

出典:ケーキの切れない非行少年たち

私は「ケーキの切れない少年たち」を興味深く読んでいる読者の一人です。
関連書物も読んでいます。

三人の子どもの母親である私は、「子どもに描き写しをさせたらどう描くのだろう」と気になりました。

何歳程度から認知機能が育つのだろうと、興味が湧いたのです。

そこでわが子達3人に、同テストを受けてもらいました。
子どもの年齢は、当時6歳、9歳、11歳(当時)、全員女児です。

誰も「ケーキが切れない少年たち」を読んでおらず、図も見たことがありません。
テストに何の意味があるかもわからない状況で、それぞれ描いてもらいました。

結果をお知らせします。

認知テストの図の描きし写しを、小学生がやってみた結果

11歳長女の認知テスト結果

まずは11歳の長女から。

乳児期は二歳になるまで深夜一時間置きに起きる子どもでした。起きている時間の半分は癇癪を起していて、癇癪を起していない時は家中を走り回り、どこかにぶつかってやっと止まる程活発でした。テーブル二台を壊し、障子6枚を格子ごと破って折り、襖も同様に6枚、北斗の拳並みにボコボコに穴を空けた実績を持っています。

擦り傷から骨折まで怪我が少なくありませんでした。話しは通じていると感じるのに、「欲求が止められない」ようで困りました。

長女が幼稚園生のころ、ベッドで寝ている次女の顔を故意に蹴るなどして、次女が何度も病院に通うことになりました。長女に手を焼いていたこともあり、通っている幼稚園や小児科医に発達について相談しました。

しかし幼稚園では「発達障がいの心配は全くない。周囲を良く見ていて状況判断が上手く、精神年齢が高い」と言われました。小児科では幼稚園で言われたことを参考に話したのが影響したのか、「家の中で母親に甘えているのでは。『激しい性格』というだけで、発達の問題ではないのでは」と言われました。

長女の激しさは10歳頃まで続きました。散々悩みましたが、小学校高学年になった今はかなり落ち着いています。

友人関係も問題なく、勉強もスポーツも自ら取り組んでいる様子を見ると、幼少期はエネルギーが有り余っていて、持て余していたのだろうか……? と感じています。

そんな長女(11歳)が描き写した図がこちらです。

描き写す際、定規を使って描きたいと言われましたが、フリーハンドで描いてもらいました。
描き終わった後も「定規を使えばもっとうまく描けるのにな」と少々不満げでした。

9歳次女の認知テスト結果

次女は育児書に書いてある通り、授乳をしたら二時間程度は寝てくれるという、手がかからない子でした。

運動は得意ではありませんが特別苦手でもなく、ビーズや折り紙など手先を使って何かを作ることが好きな子です。
引っ込み思案でもなく、かと言って皆を引っ張っていくようなタイプでもなく、勉強も運動も平均的な出来、といったところ。友達付き合いも特別問題はありません。

今はルービックキューブにハマっていて、日々記録を更新するべく頑張っています。

長女に手がかかりすぎて、あまり手をかけてあげられなかったのが心残りです。

そんな次女(9歳)が描いた図がこちらです。

長女同様、よく写せています。

6歳三女の認知テスト結果

6歳の三女の図は、姉達より完成度が低くなるだろうと期待(?)していました。

三女は先天性の皮膚の難病を持っており、軽度ではあるものの一般とは明らかに違うために出生時から痛い思いをして育ちました。
非常に珍しい病気だったこともあり、総合病院の産科医や皮膚科医たちが産まれたばかりの三女を連れ立って見学に来たことを覚えています。

見た目にわかる病気なため、周囲に見られたり、心配されたり、友達に「どうしてこんな風になってるの?」と聞かれることが珍しくありません。行動にも多少の制限があります。
身体に大きな変化が出ることもあり、一般より多くのストレスを感じていると思われます。

発達面を心配したことはありません。
病気が原因と思われるあるきっかけで幼稚園で泣き続けた時期があったのですが、園の協力で解消し、その後は大きな問題は起きていません。姉達とも友達ともよく遊ぶ子です。

そんな次女(6歳)が描いた図がこちらです。

想像していたよりしっかり写していましたが、実はこれは二枚目なため、途中で違うことに気を取られて最後まで描き切りませんでした。

最初に書いたのはこちらです。

書いていて「違う」と感じたようで、違う紙を取り出して、勝手に二回目の描き写しをしていました。

このテストは描き直しがアリなのか? と疑問ですが、一回目の描き写しもある程度全体を見て形を捉えているようなので、まずまずといったところ。

ホールケーキを三等分にする認知テスト・小学生の答え

因みに「ケーキの切れない非行少年たち」には円柱のホールケーキを三等分にするにはどう切るか、というテストも紹介されています。

子どもたちにそのテストをしようと思いましたが、三人ともあっさり中心から120度程度の角度をつけて放射線状に線を描きました。これは認知機能がどうという事ではなく、「誕生日ケーキをそうやって切って食べたことがある」という経験が大きく影響しているようです。

つまりケーキを等分して切れない子の中には、周囲の人と分けた経験がないから学べなかった、というケースがあると想像します。

認知機能が育たない原因

私は酷く荒れた中学校を卒業しました。

地元でも荒れていることで有名な公立中学校で、週に数回は警察が来ていました。
誰が鑑別に入ったとか、そんな話が良く聞かれる中学校でした。

詳しくは別の記事に書いています。
いつの時代の話? と私でも思うくらい、荒れていました。

関連記事

貧困と教育と子どもの非行現在、40代に足を突っ込んだ主婦です。私が小学校高学年になるころ移り住んだのは、県営団地や市営団地が集まっており、いわゆる低所得家庭とそうでない家庭の差が激しい地域でした。一言に低所得と言っても、[…]

荒れていた子達の多くは、「混乱」しているように見えました。
どうしていいかわからない、という不安が怒りを呼んでいるように感じられたのです。

背景には貧困や、親が薬物で逮捕や入院を繰り返しているなどの背景、経済的身体的DVなど本来保護されるべき子どもたちが見過ごされるなどの環境が大きく影響しているようでした。誕生日にホールケーキを食べたことがない子も少なくありません。

近年、酷い虐待などで、子どもに発達障がいに似た症状が後天的に現れることが知られるようになりました。

生きていれば、環境や偶然遭った出来事を通して考え方が変わって行きます。
生き抜くことに精一杯な環境にいる子どもが世の中や自分を俯瞰して見られなくなるのは、ある意味自然です。食べるものや寝る場所の確保で頭がいっぱいで情緒が不安定となり、未来を考える余裕がないのです。

後天的な要因で思考が凝り固まってしまったり脳が委縮してしまった場合も、やはり認知機能に影響が出るのでしょうか。その辺りも知りたいところです。

また、少年院に入った少年たちが精神科医に「図を描き写すように」と言われた際、皆が真剣に取り組むものでしょうか。
荒れていた友人達は、大人を信用していませんでした。そんな彼らが図の描き写しを求められたら、「面倒なことさせるな」と心で思い、適当に描くかも……? とも想像できます。

「図を描き写せない子が居るわけがない」と言いたいのではありません。
やる気がなくて適当に対応する入所者も、一部いるかもしれないと思うのです。

著者の宮口さんは、「少年院入所者は不良ではなく、一見普通に見えるが認知機能が弱いために犯罪を犯してしまう子が増えている」と書いています。いわゆる不良と言われた私の友人達は、「ケーキの切れない非行少年たち」とは別ものなのでしょうか。

荒れていた友人達の中には、学校に来ていないのに全国テストだけを受けに学校に来て全国区で好成績を収める子がいました。他の子達は学校に通っていたとしても授業に集中していませんでしたから、漢字や、場合によってはカタカナも怪しい子がいました。

貧困や虐待などで学習する環境になかった結果そうなった可能性がありますし、環境は良くなくても自ら勉学に励むケース、先天的な脳の障がい、或いは後天的に障がいを持った子がいた可能性もあるのかもしれません。

精神科医の実体験として「異常な行動を起こす裏に、脳の傾向がある」というのは説得力がありますし、実際にそうなのだろうと素人ながら思います。

宮口さんが取り組まれている「少年たちの一方的な思い込みを、他者の視点を知ることで変えていく試み」は、犯罪を犯した人に関わらず一般人にも必要なことであり、犯罪に到るかどうかは適切な教育や環境により大きく変わるのだと感じました。

認知機能テストと採用面接

興味本位で子どもたちにテストをした記事ですが、この記事を書くにあたりインターネット上でいくつか検索をかけました。

その中で気になる投稿を目にします。

「ケーキの切れない非行少年たち」を読んだ採用側が、認知機能を試したのでしょうか。
認知機能や注意力を高めるための「コグトレ」の一環として、採用試験に組み込んでいるという可能性もありますが。

私がこのような試し方をされたら、不快に感じるでしょう。
子どもたちに興味本位で描かせた私も、同罪でしょうかね?

「ケーキの切れない非行少年たち」が話題となったことで、「認知機能が弱いと犯罪を犯す」という誤った印象を持った読者が少なからずいたことには、偏見を生みかねない怖さを感じます。

 

「ケーキの切れない非行少年たち」著者の宮口幸治さんは、認知機能を育てることを目的に「コグトレ」を開発されています。

興味のある方は見てみてはいかがでしょうか。

コグトレHP

関連記事

40歳を迎えるころから、PMSが強くなりました。夫や子どもたちに「生理前?」と聞かれるようになり、実際その通りだったのです。自身でもネガティブな感情のコントロールが難しくなっているのを感じて、自己嫌悪に陥ることが増えていました。[…]

関連記事

充実しない人の悪習慣「リベンジ夜更かし」よふかしのうた的な感じかな? pic.twitter.com/vg3zsL2Kav— ムギョク@ガチャ禁中 (@mugyoku22) June 17, 2021リベンジ夜更かし[…]

関連記事

3姉妹を育てる母です。長女は小学校高学年です。一学年が50人~60人程度の、小規模な小学校に通っています。ある女子生徒が徐々に登校拒否状態となって行きました。数年後、彼女と仲の良かった女子生徒2名も休みがちになり[…]

関連記事

三人の子どもを育てる親です。最近、小学生の娘があるトラブルに巻き込まれました。それは習い事として通っているダンスサークルで起こりました。一部の保護者の「熱心」さが、周囲を困惑させていくことになります。私はその保護[…]

最新情報をチェックしよう!