オレ様男の心理と生態、没落の実例・不器用な男の見本帳

人生において、一人か二人は「俺様なオトコ」に出会う機会があるでしょう。

漫画やドラマでは俺様オトコが可愛く描かれていますが、実際の俺様オトコは可愛くありません。
非常に手がかかる生物です。

それが職場となると、先輩後輩や上司と部下といった立場の違いが影響してさらに面倒なことになりかねません。

ここでは私が出会った俺様オトコの生態と没落。俺様オトコが行きついた孤独についてお知らせします。

オレ様男の心理と生態、没落の実例

オレ様男とは、上から目線、或いは自分中心で生活を送っている男性のことを言います。

自信があるように見えますが、その実弱い部分を持っていて、悟られないよう、強がっている人が多いように感じられます。

私が出会ったオレ様男は職場の先輩でした。
当時私は、男性ばかり数十人がいる営業内で、ただ一人の女性でした。

女だから使いにくいと言われたくなくて、男性ぽく振る舞っていました。

男性たちに交じって昼夜問わず仕事をしていくうちに、男性達に一人混じって飲みに行くことに抵抗がなくなりました。
上司や先輩や後輩男性と二人で飲みに行くことも、珍しくありませんでした。

私が酒好きなことは知られていましたし、女性としてカウントされていなかったので、「麒麟となら男女二人でも問題ない」と思われていたと思います。

そのうち一回り近く上の年齢の先輩と仲良くなりました。
それがオレ様男のT氏です。

オレ様男の実態

T氏は容姿に自信を持っており、ジムで鍛えるなどしていました。
実際スタイルが良く、ハンサムだと思います。

T氏と同年代の先輩から聞く話では、20代からモテていたのは確かなようでした。
私が出会った時、T氏は30代中盤でしたが未婚で、彼女もいませんでした。

目当ての女性はいるようで、アプローチしていましたが、どう聞いても都合よく使われているだけに見えました。

また、彼女はT氏がアプローチしていることにも気づいていないのでは? と思うほど、ソフトな押し具合でした。

T氏には「女性への押しが足りない」とアドバイスをしました。

T氏は怒りましたが、その割に私をよく飲みに誘い、話しをしてきました。

社内で孤立する原因はプライドの高さ

T氏が20代の頃。
同じ年の同僚、M氏とI氏の3人でよく遊びに出ていました。
仕事終わりに3人で渋谷に行き、ナンパをしていたのだそうです。

T氏が「あの娘に声かけて来い」と指令を出し、M氏とI氏が声をかけに行きました。
大抵が失敗に終わりましたが、とても楽しかった思い出です。

しかし私は、3人が一緒にいる姿を見たことがありません。
私が入社した時には、3人が分裂状態だったからです。

オレ様男とM氏が仲違いした理由

T氏はM氏を嫌い、無視を続けていました。

M氏は私の直属の上司です。
M氏は器用な人ではありませんでしたが、能力があり、驕りもなく尊敬できる人でした。

どうしてM氏を無視するのかとT氏に聞くと、「あいつが社長の犬だから」と言いました。
T氏がM氏を嫌ったのは、M氏が役職に就いたことがきっかけでした。

社長は好景気時代に大量の仕事を取り、実績を作りました。
しかしT氏と同様にプライドが高すぎるきらいがあり、人望がありませんでした。

社長とM氏は親戚でした。
T氏は、M氏が役職に就いたのは社長のコネがあるからだと非難しました。

T氏より上の年代の先輩たちの中に、社長に反感を持っているアウトロー一派がありました。
一派はM氏や社長の陰口を酒の肴にしていました。

私はアウトロー一派に気に入られ、よく飲みに行きました。
そこでM氏や社長の陰口を聞いていました。

社長は人を尊敬する姿勢が欠けていたので非難される理由がわかりますが、M氏への陰口は妬みに感じられました。

私はM氏の部下でしたので、一緒に打ち合わせに出たり、泊りがけの現場に入ることがありました。
また、二人で飲みに行くこともありました。そこで度々、T氏との話を聞きました。

M氏はT氏が自分の陰口を言っていることをよく知っていました。
社内でもこれ見よがしにM氏を非難している場に、頻繁に居合わせていたからです。

M氏は「昔は仲が良かったのにな。なんでこうなっちゃったんだろうな」と寂しそうに言いました。

「俺に社長のコネがあるのは本当だ。社長にも、俺の力で役職に就かせたんだから尽くせと言われてる。親戚の付き合いがあるから、下手に反抗できない。俺の生活もあるし、親の体面もある。突っぱねたら仕事を失うかもしれない……」

M氏はT氏やアウトロー一派に目の敵にされていて、大きなストレスを抱えていました。

T氏の話しぶりを思い出しました。
T氏はM氏の悪口を頻繁に言ってはいましたが、本当に嫌っているようには見えなかったのです。

オレ様男とI氏、後輩たちの関係

T氏とI氏は会話がありましたが、I氏はT氏を煙たがっていました。
あれをやれ、これをしろ、と指示をしたり、からかってくるのを面倒に感じていたのです。

二人は同じ年齢ですが、入社が一年遅かったためにT氏はI氏のため口を許しませんでした。

T氏は自分が優位に立とうとする言い方をするため、煙たくなるのはよくわかりました。

アウトロー一派に組み込まれる

盆や年末に、T氏とアウトロー一派が中心となり、スノーボードや避暑地のコテージに泊りがけのイベントを企画しました。
そこに私も引きずり込まれて、T氏を支柱に、私が宿などの手配をするようになっていました。

会社の忘年会の幹事もT氏と私がやっており、社内でイベントごとと言えば私とT氏の名が挙げられるようになっていました。

どんなに仲が良くなっても、アウトロー派によるM氏の陰口には賛同ができませんでした。

私が「言いすぎではないか。M氏はそんな人じゃない」とやんわりと伝えると、「お前はどっちの味方なんだ」とよく怒られました。「どちらの敵でもない。双方の味方だ」と繰り返し伝えました。

男性同士だとここで喧嘩になるのかもしれませんが、私が唯一の女性だったからか「こいつは放っておいても毒にはならない」といった感じで、それ以上責められることはありませんでした。

人間関係の変化

人望が厚かった会長が、癌で急逝しました。

社長はアウトロー一派に益々圧力をかけました。
アウトロー一派は怒り、一人、また一人と退社していきました。

行き先は社長に反感を持っている関連会社や、独立した個人会社でした。

T氏の仲間が去っていき、T氏と私は益々一緒に飲む機会が増えました。

私は当時束縛の激しい彼氏がいましたが、アウトロー一派とのスノボや避暑地に一緒に参加していたため、彼氏はT氏のことをよく知っていました。

T氏は“大丈夫”だと信用しているようで、一緒にいることを責められることはありませんでした。(泊りがけのイベントは別部署も参加しているため、女性が複数人います)

オレ様男の口説き方

T氏は目当てだった女性に脈がないと気づき、あるキャバ嬢をターゲットにするようになりました。

T氏は面食いです。
連れている女性が自分の評価に繋がるような発言をしたり、もし結婚をした時には「嫁に仕事を辞めさせて家事育児をさせる」と、男尊女卑丸出しの発言をしていました。

T氏の目当てのキャバ嬢にどんなアプローチをしているのか聞くと、「俺は貢ぐ男じゃないから、店にはほとんど行かない。個人的に会いたいという連絡を待っているんだ」とプライドが高い答えが返ってきました。

キャバ嬢からは予想通り、「店に来て」という連絡以外来ませんでした。

「金を落とさない男に、初めから外で会おうなんていうキャバ嬢はいない。もっと通って、コミュニケーション取って魅力を知ってもらってからじゃないと、外で個人的に会おうなんて思わない。とりあえず店に通え」と言っても、「昔は美人のクラブのママや、キャバ嬢に言い寄られたことがあったんだ」とかつての栄光話を繰り返しました。

T氏は40代目前の年齢になっていました。

「40まで未婚だと、何か問題があるって思われるんだよな……」とよく愚痴を言いました。

「そのやり方じゃ女は落ちない。上から言うんじゃなくて、正面から気持ちを伝えなきゃ」と言うと「俺は鹿児島の男なんだ。鹿児島では女は男に酒を出し続けるんだ。男はこういうものなの!」と主張しました。

結局プライドが邪魔をして、傷つくことから逃げているようでした。

オレ様男と私

社内のイベントや休暇中のイベントの手配が、ほぼ全て、私の仕事になっていました。

雪山を滑るより、家でダラダラしたりゆっくり飲んでいる方が楽しいと気づいた私は「休暇中のイベントに行かない」と言いましたが、T氏に「お前は俺と居なきゃダメなの!」と却下されました。

休みの日や現場から直帰予定の日にも、約束をして二人で落ちあい、飲みに行くようになっていました。

ある日T氏は、私のカバンを持とうとしました。
付き合ってもないのに先輩が後輩のカバンを持つなんて不自然だと断りましたが、「いいから」と持たれてしまいました。

「マズイ。長年彼女が居らず、社内でも孤立しかけているものだから、血迷い始めたのかもしれない」と焦りました。

私は彼氏の話しを積極的に出しました。
その効果が出たのか、帰るころには普段のT氏に戻っていてホッとしました。

T氏の話は殆どが仕事の愚痴でした。
他のアウトロー一派のように退職をしたくても、プライドの高さから関連会社に「オレをもらってくれ」とは言えないようで、転職先が見つかりません。

T氏が社内で孤立しかけているのを、どうにかできないものかと考えました。

M氏との関係の復活

M氏は部下や協力会社から尊敬されていましたが、アウトロー一派から目の敵にされていたこともあり、自分に自信が持てないようでした。

T氏とM氏の双方に少しずつ探るように話しをしていくと、双方とも実は「関係を修復したい」と思っていることがわかりました。
これは修復のチャンス。二人の関係修復を図ろう! と思いつきます。

双方に、休暇中にみんなでスノーボードに行こうと持ち掛けると、あっさり実現することになりました。

退社したアウトロー一派には声をかけず、T氏とM氏を応援しているメンバーにだけ声をかけて行きました。

T氏もM氏も最初は緊張が見られましたが、数年ぶりに会話をして、昔話をして笑い合えるようになりました。
それをきっかけに社内でも会話をするようになり、周囲の社員は驚きました。

アウトロー一派の関係とT氏の孤立

T氏は退社したアウトロー一派と酒を飲む席で、M氏を擁護するようになりました。

アウトロー一派と喧嘩になりましたが、関係が絶たれることはありませんでした。
しかし会社が違うため、自然と会う機会は減って行きました。

そんな中、T氏が社内で唯一仲よくしていた同僚男性W氏が、精神的病を発症しました。

会社に来ても椅子に座ったまま立ちあがることができなくなったり、出社することも難しくなっていきました。
W氏は退社し、療養することになりました。

その頃私は彼氏との結婚の話が持ち上がっていました。
婚約をして、会社の近くから横浜に引っ越しをして同棲を始めたのです。

私の通勤時間が延びたことで、T氏と飲みに行かなくなっていきました。

オレ様男の精神的不調

久しぶりにT氏と飲みに行ったときに、T氏から「実はメンタルクリニックにかかっている」と聞きました。
気持ちが不安定になるのだと言います。

私が勤めていた会社の業界はかなり忙しく、営業やデザイナーが精神を病むことは珍しくありませんでした。
幻覚や幻聴で退職し、入院することもあれば、服薬しながら仕事を続ける場合もありました。

T氏の場合は多忙よりも、孤立感からくる不安があるように感じられました。

私も当時、仕事の多忙と婚約後の生活が上手くいかなかったことで精神的に安定しておらず、満足にT氏の話しを聞くことができませんでした。

私は婚約破棄をして家を出ました。
直後に現在の夫と知り合って、数か月後にスピード結婚することになります。

T氏はメンタルクリニックに通いながら、ジム通いで体を鍛え、ストレスを発散するようになっていました。
結婚の報告をすると、少し驚いていましたが祝福してくれました。

私は体調の不良から退職しました。

手下の退職

退職後はT氏と飲むことがなくなりました。

社内の同僚から「麒麟がいなくなった後、T氏は酒を飲むたびに『麒麟が戻ってくるのを待ってる』と言っている」と聞きました。

「私が離婚して会社に復帰すると思っているのか。(子持ち既婚女性には厳しい仕事です)不吉なことを言うな!」と思う反面、T氏が未だに孤立気味なのではないかと心配になりました。

T氏は私のような手下がいないと、不安なのでしょう。

オレ様男が社内で孤立する理由

T氏は私が退社したあと、社内のイベントの主催を降りました。

T氏とM氏は会話をするようになっていましたが、昔のように遊びに行くほどの仲には戻れませんでした。
後輩や同僚には相変わらず上から目線のことばかり言うので、煙たがられています。

仕事も新規契約を取れるほど好調ではありません。

後輩がT氏の上司となり、T氏の扱いに困っていると聞きました。
至る所でT氏と後輩上司が衝突するようになり、T氏は益々孤立するようになりました。

葬式で再会

アウトロー一派の一人が癌で亡くなったことがきっかけで、私が退職してから5年後に、通夜でT氏と再会しました。

その間にも私の同期の結婚や、仕事現場のイベントで度々会っていましたが、じっくり話す機会がありませんでした。

通夜後に参列していた元先輩たちを含めて、T氏と飲みに行きました。
かつて仲が良かったメンバーだったこともあり、T氏は終始楽しそうにしていました。

以前と変わらず元気そうに見えましたが、社内では大人しくなったと同僚から聞いていました。

様子を窺うメールを送ったことがありましたが、T氏は返信までに時間がかかるタイプなこともあり、ついつい言いすぎてしまったのを機に返信が来なくなりました。

T氏は今も会社に在籍していますが、寂しそうにしているとか。

オレ様男の心理と没落

若いときはオレ様男が強く見えるのかもしれません。

女性にモテることもあれば、男性に憧れられることもあるでしょう。
しかし“オレ様男”の根底にあるものは“自己防衛”や“虚勢”です。

素直な気持ちや弱音を言えず、「強く見せたい」と虚勢を張っていることに、周囲は気がつきます。
オレ様な態度はそのうち“子ども”だと捉えられ、相手にされなくなっていきます。

弱い自分を見せられる強さが、T氏には足りませんでした。
昔の武勇伝に縋ってしまったのです。
それはそれで彼らしいのですが、果たして彼はこんな未来を望んでいたのだろうかと疑問に思います。

不器用な男でした。

 

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