心を覗くアプリを作り、人を笑った男たち・モテ男といい男は違う

心を覗けるアプリがあったら、使いたいですか?

それを使って楽しめますか?

これは実際にあった、心を覗けるアプリの話です。

あるモテ男と、恋心

あの子は、あの人が好き。
ではあの人が好きなのは誰?

人の恋路が気になったことはあるでしょうか。

心を覗きたいと思ってものぞけないから、ヤキモキしたり、それが恋心を燃え上がらせることがあります。

私が華の20代を謳歌していた頃、ある男性が中途採用で入社してきました。

男性を仮に辻君とします。

辻君は私と同じ年の、いわゆるモテ男でした。
今どきで、ちょっとお調子者でした。タレント活動をしたことがあり、自分にある程度自信を持っていました。

しかし自分がどう見られているか理解していましたし、場の空気を読む力があり、周囲のに気に入られる術を持っていました。私がデスクで負った、ちょっとした怪我も見逃さずに絆創膏を差し出して来るなど、辻君は気遣いにも長けていました。

インテリやちょい悪の男仲間たちと常につるみ、合コンを頻繁に行い、派手目の女の子たちも混ぜてよくイベントをしていました。

私は根暗でしたが、男性ばかりの会社で唯一の女性の企画営業職としてやっていくために、男勝りのキャラクターを作っていました。
そのせいなのかファッションのせいだったのか、辻君は私を派手なタイプと誤解しているようでした。

一般客を対象としたイベントの仕事では、辻君を目当てに知人らしい綺麗な女の子が来場することがあり、モテ男は凄いなと感心しました。

ある時、私と辻君が中心となって新規のイベントの立ち上げを担当することになりました。
大規模なイベントでしたので、連日終電で帰宅するのも難しいほど忙しくなりました。

ある晩、私は辻君と二人でイベントの事務局に残り、雑談をしながら仕事をしていました。

辻君はこんな実体験を話し始めました。

心を覗くアプリを作り、人を笑った男たち

辻君が大学生の時の話です。

タレント活動もしていた当時、辻君は今と変わらず派手(と思われる)な仲間たちとつるむ日々を送っていました。

仲間の一人があるアプリを作りました。

相性占いができるアプリです。
自分と気になる相手の名前を入力すると、相性の結果が表示されるという簡単な作りでした。

そのアプリを、仲間達は大学内の知人に広めて行きました。

実はそれは、「人の心を覗くアプリ」でした。

誰かがアプリを使って相性診断をすると、「自分」と「気になる相手の名前」がアプリ製作者のもとに送られるシステムとなっていたのです。

得た情報を見て、製作者と辻君の仲間は面白がりました。

誰が誰を好きかが手に取るようにわかったからです。

意外だったり、付き合ってる相手がいるのに他に気になる相手がいるようだとか、誰と誰が三角関係だとか、製作者と仲間で情報を共有して日々の生活で学生を観察して楽しみました。

心を覗くアプリは面白い

「作った奴、めっちゃ頭よくない!? 俺、スゲー頭いいと思った。面白いでしょ、この話」

満面の笑みで辻君は私に同意を求めました。

深夜の事務局で、私は手を止めて、「マジで最低だね」と言いました。

「え?」と心底驚いたように辻君も手を止めました。

人の恋心を知りたいと思った時、それを知る手段としてアプリを作ったのなら「頭がいい」のかもしれません。
しかしその前に、道徳心と理性が働かないことに怖さを感じます。

発明や探求心は時に不道徳です。
真っ向から反対しては、発展はないのかもしれません。しかし、生身の人間として関係を築いている個人を集団で笑う心理が理解できませんでした。

嘘の告白をして人を弄ぶ行為に似た印象を持ちました。

「人の心を勝手に覗いて、観察して仲間と笑いものにして楽しんでるってことでしょ? そういうの好きじゃない」

辻君は後輩でしたが同じ年という事もあり、率直な意見を言い合える相手でした。
私はいつものように、率直に感想を述べました。

「……面白くない? のかー……」

辻君は呟きました。

これまでもこの話を「おもしろ話」として男女問わずに話してきたようです。
私のように拒否反応を示す人はいなかったのだとか。

このアプリを最低だと思うの人は少ないのでしょうか。
それとも、最低だと思っていても辻君にそう言う人がいなかったのでしょうか。
はたまた辻君が今どきの人気者だから、辻君のすることは受け入れてしまう人が多かったのでしょうか。

彼は、「仲間の家で飲み会をして男女ともに雑魚寝して、ふと気づくと目の前に女の子のおっぱいがあった。あったら触るよね。だから触った。触ったら女の子はむしろ喜んで身を委ねてくる」という人でした。

モテる男は拒否される経験が少ないのでしょうか。
自分は弄ぶ側であり、弄ばれる側にはならないと思っているように感じられました。

学ぶべきことを学ばないまま大人になってしまったのでしょうか。
単純に私とは価値観が違い過ぎるだけでしょうか。

辻君は私を同類と思っている節がありましたので、一緒に笑うものと疑わなかったようですが……。

心外です。

彼と同様に所謂「一軍」の方でも、人の心を弄ぶようなアプリに疑問を感じる方はいると思うのですが、どうなのでしょう。

「仲間と観察して笑っている自分、好き?」と聞くと、「え? わかんない。ただ面白いだけ」と辻君は半笑いで答えました。

私と彼は同僚として仲良くしていましたが、どこまで行っても心が交わることはないと痛感しました。

モテ男といい男は違う

辻君はモテますので、これまで彼女が何人もできました。

しかし付き合い始めても長く続かなかったと言います。
付き合うまでは楽しく過ごせるけれど、付き合い出すと外に目が向いてしまい楽しく過ごせなくなるのだそうです。

人対人の付き合いができない人なのだろうか、と想像しました。

そんな彼にも特別な出会いがあれば変わるのかもしれませんが、そんな天変地異が簡単に起こるのでしょうか。

私も辻君を観察して面白がっている同類なのでしょうか。

私の結論は、「モテ男といい男は違う」という事でした。

そして「アプリを簡単に信用するな」と学びました。

皆さまもお気を付けください。

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