無職の男の恋愛・好きな女とデートはするが「責任が取れないので付き合えない」の不思議

ジェンダーレスな社会作りが叫ばれています。

ジェンダーレスとは、性による社会的、文化的先入観を無くそうとする考え方です。
確かに男性らしさ、女性らしさを求められることで、与えられる精神的肉体的負担があるのが現状です。

ジェンダーレスな社会作りに大いに賛成! ではあるのですが、男性によくある思考、女性によくある思考の傾向があるのも確かだと感じています。

私は結婚して初めて、「男女の価値観の違い」を知りました。

多くの知人夫婦の内情を聞くようになり、男女の思考の違いを、如実に感じるようになったのです。

もちろんすべての方に当てはまるわけではなく、「傾向がある(気がする)」というもので、人によって変わります。
しかし男女の思考の傾向の違いを感じる度に、“面白い”と感じるようになりました。

そんな私が思い出す、ある男友達の「悩み」があります。

男友達は度々「男として」と言うわりに、全然男らしさを感じない内容でした。
面白かったので、是非ご一読ください。

無職の男の恋愛・好きな女性をデートに誘う

30代前半だったその男性は、当時無職でした。

数年勤めていた会社を思うところあって円満退社し、約半年~一年ほどが経過していました。

彼は学生時代に実家を出ており、社会人になってからも暫くは一人暮らしをしていましたが、その後実家に戻って、実家から通勤していました。退職をしてからも実家に住んでいましたし、多少の貯えがありましたので、生活には事欠きません。

無職の間は、趣味のカメラで撮影した写真を知人が経営するバーに飾らせてもらって、度々小さな個展を開いていました。

彼は芸術系の大学を出ていますが、卒業後は少し絵を描く程度で、大きな作品は作っていません。
元々人目を引く作品を作るタイプでもありませんでした。

そのためか、根強い劣等感を持っています。
しかし弁は立ちましたので、周囲と衝突をすることもありました。

ある平日の昼間のことです。
彼は興奮して、友人である私に連絡をしてきました。

「好きな女性ができた。どうしたらいい?」

誰かに話したくて、仕方がなかったようです。

「へー。それはよかったねぇ」と適当に返事をしました。
私は仕事で屋外に居ました。よく晴れた暑い日でした。「暑い熱い」と思ったのを覚えています。

「彼女は店に飾られていた俺の写真が好きだと言って、買いたいと言ったんだ。俺に会いたいと言って、呼び出された。写真を買ってくれた。俺の撮る写真が好きだって!」

興奮していました。

どこか不安定だった彼の前に突如現れた女性は、彼にとって女神でした。

私は一時期ですが彼と付き合っていたことがありました。別れてから何年も経っていますし、互いに異性としての好意がありませんので、同性の友達のような感覚がありました。

いい出会いがあってよかったと、心から思いました。

「店で会ったのをきっかけに、何度も誘って出かけてるんだ」
「まるでデートだね!?」

「デートだよな、デートだよな!? 嬉しそうに誘いに乗ってくれるのって、いい感じだよな? 真面目な子だし、これまで男性と付き合ったことがないって言うんだよ」

彼は嬉々として語りました。

そういえば彼は、「初めての男」になりたがっていました。
彼の元カノ達も皆経験がある子だったそうで、私と付き合った時にも経験があることを知ると、しつこいくらいに何度も愚痴を言っていました。

なるほど。
彼にとって意中の女性は、自分の劣等感を埋めてくれる絶好の存在でした。

「いい感じだね。付き合ってって言えば付き合えるんじゃない?」
「……そうだよな」

まんざらでもない、期待を込めた「そうだよな」でした。

その日はそこで連絡を終えました。

責任が取れないので、付き合えないと言う無職の男

少しして、また彼から連絡がきました。

意中の女性とは、高頻度でデートを繰り返しているようです。
既に付き合っているような状態であるように感じられましたが、彼氏彼女にはなっていないのだと彼が言いました。

まだ愛の告白をしていないからです。
好意を伝えたいけれど、伝えられないのだそう。

「俺はもういい年だし、次に付き合う子とは結婚したいんだ」

彼は私と別れた後に、身近な女の子に散々手を出して遊びまわっていました。そんな彼もついにそんな心境になったのかと、成長を感じました。息子を見るような感動です。

意中の女性とは結婚を考えられないから付き合わないのかと、聞きました。

「できたらあの子と結婚したいと思ってる。次に付き合う人とは結婚したいと思ってるって話も、その子にしてる。『いいですね』って言ってくれてる」

何も問題はないように思われました。

話を聞く限り、大いに好意をもたれてるように見えましたので、告白をして、名実ともに付き合えばよいと伝えました。
しかし彼は、

「だって、俺無職だし」

と言いました。

無職の足かせと、男の思考

意中の女性は、当時卒業を控えた大学生でした。

彼が無職であることは、女性も初めから知っています。
その上で、彼の誘いに応じていたのです。

確かに無職(ほぼ無収入)の男性と結婚を前提で付き合い始めるのは、躊躇う女性が多いかもしれません。

「収入がないのに、年下の学生に結婚を前提に付き合ってくれって言うのは、男としてできない」と彼が言いました。

彼はなぜ職に就いておらず、写真によるわずかな収入しかない状態で、結婚をほのめかすことを意中の女性に伝えてしまったのでしょう。誠実さを表したかったのかと思いましたが、聞いてみると、単に深く考えずに口にしてしまったようでした。

今後職に就くつもりや、他に収入が得られる手段を探すつもりがあるのかを聞きました。

「そろそろ仕事を探そうと思っていた」と答えられましたので、収入がないと男として告白ができないと言うのなら、少しの間はデートを重ねるだけにして、仕事を見つけてから告白したらどうかと提案しました。

「でも待っててもらう間に、他の男が現れて、彼女がさらわれたらどうしよう」

※他に男性の影があるわけではありません。

「……じゃあ先に告白をして、すぐに職に就くと約束をしたらいいんじゃない?」

「でも今、俺は無職だし……」

あ?

私はいったい何を聞かされているのでしょう。
不毛な時間です。

「無職なのに、次に付き合う女性と結婚したいとか言っちゃってる俺、笑えるよね。それなのに好きだから付き合ってとか、結婚を前提にって言うの、男としてできない。」

・無職に引け目を感じながら、デートには頻繁に誘って、彼女に時間を割かせてる。
・無職だから付き合ってといえないのに、彼女が他の男性に惹かれるのが怖くて、就職活動に時間をかけられない。
・彼女はあからさまに彼への好意を示している。

意中の女性が彼に好意を抱いているとしたら、好意を伝えてくれそうで伝えてくれないこの状態は、「蛇の生殺し状態」です。これが長引く方が、見切りをつけられてしまう可能性があるように想像されました。

彼が見ているのは自分ばかりで、女性の気持ちを無視しているようにも感じられます。

「無職だから付き合えないと言いながら、彼女が他の人と出会えるかもしれない時間を暗に拘束する方がどうかと思う。無職でもいいのか、嫌なのかは彼女が判断すること」と伝えました。

そして、多分彼女もあなたに好意があるし、あなたの言葉を待っている気がすると話しました。

男の恋愛と結婚と収入

彼はその後すぐに意中の女性に愛の告白をして、付き合いを快諾されました。

少しして彼は就職をします。
就職後一年と少し経つ頃に結婚をして、今は二児の子を持つパパとなりました。

自分で望んで無職になり、好きな女性と何度もデートをしていい付き合いができているのに、無職だと愛の告白ができないと思うのは、男性ならではではないでしょうか。

それでいて、他の男性にさらわれないように確保しておこうとするのは、私には理解できないことでした。

彼ならではの思考でしょうか。
それとも、男性ならではの思考でしょうか。

私は既婚ですが、夫に出会う前に別の男性と婚約して破棄した経験があります。

婚約者は「結婚」を夢物語のように語りました。両家顔合わせを済ませて入籍前から同棲を始めましたが、いつまで経っても籍を入れる日を決めようとしません。

「俺のタイミングで入籍する」「収入がもっと増えて男として自信が持てたら」を繰り返すのです。

私の方が収入が多かったのですが、私は全く気にしていませんでした。家事は協力を求めても応じてもらえず、全て私がやっていました。

話し合いができないことや、婚約者がいつまでも籍を入れようとしないことに愛想を尽かして、婚約破棄をして家を出ました。家を出る日に元婚約者が私に言った言葉は、「お前(実際は私の名前)は俺から離れられない(はず)」でした。

元婚約者にとって婚約は、私が逃げないように囲うための手段でした。
それでいて責任はとりたくないのです。彼らが一様に口にするのは、「男として自信がない」からだそうで。

私が婚約を破棄して別れようとすると、彼は「俺の親が許さない」など回りくどい言い方で引き留めてきました。それでも引き止められないと分かると、指輪を渡してきて(両家顔合わせのみの婚約だったため、婚約指輪はもらっていませんでした)具体的な入籍日を決めようとしてきました。

「男としてこうあるべき」と社会の価値観が、男性をそのようにさせるのでしょうか。
その男性と付き合うか、結婚するかは双方の同意があって実現することであり、男性に決定権があるわけではありません。

また、“収入が上がったら”と理想を言いながら、成果主義の社会にも関わらず努力をしない現状のどこに「男として自信が持てる」きっかけがあるのでしょう。

結局は勇気が出ない言い訳を、「男として」と言い訳しているように感じられました。

「男らしい」「男として」が時に男性を苦しめることがありますが、時に言い訳にもなるのだと知った一件でした。

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