私はかつて、怒りで友達をコントロールしようとしていた時期がありました。
大人になり子どもができると、子どもの友達に同様のタイプが現れました。
家庭の事情や環境に共通点が見られましたので、身近な例を元に考察しました。
怒りで友達をコントロールする子ども
長女が幼稚園の年長だった頃の話です。
幼稚園から帰宅し、玄関に入ったところで長女が突然泣き出したことがありました。
驚いて理由を聞くと、「そらちゃん(仮名)が、命令するの」と言います。そらちゃんは幼稚園に入園する前からお友達として付き合いのある子でした。
「命令? どんなことを言うの?」と訊ねると、「靴を履かせてとか、園庭で遊ぶときも〇〇ちゃんより先に園庭に出ちゃいけないって言う」と話します。
その他にも、
二人ペアになる際、他の子と組むと怒り、許されない。しかしそらちゃんは別の子と組もうとすることがある。
長女がそらちゃんを優先するのは当然だと、言葉や態度に出して言う。
母親とはママ友として出会い、付き合いがありました。
そらちゃんは幼稚園の保護者の間でも、癇癪や主張が激しいことで知られていました。
親子で一緒に出掛けた時には、出先でもよく癇癪を起していました。母親はそらちゃんに手を焼いていて、よく怒っている姿も目にしていました。
長女は入園前から付き合いがあったからか、幼稚園でも世話役を買って出ているようでした。そらちゃんが長女を好きだと言い、長女も当初は喜んでいました。他の友達はそらちゃんの命令口調や癇癪を嫌がり、「そらちゃん好きじゃない。一緒に遊ばないでおこう」と言い出す子がいて、積極的に関わる友達が次第に少なくなっていました。
そらちゃんは、ますます長女に依存しました。
幼稚園に迎えに行き、園庭で少し遊ばせてから帰るときもその様子が見えましたので、少し気になっていました。「そらちゃんとばかりではなくて、その時々で遊びたい子と遊んでいいんだよ」と話したのですが、大人が見ていないところでそらちゃんが怒り、自由に動くことを許さなかったようです。
長女とそらちゃんの様子を知るために、第三者である園の先生の話しを聞くことにしました。
担任の先生に長女から聞いた話を伝えると、先生は驚きました。
「泣くほど嫌がっていたんですね。すみません。長女ちゃんに甘えていました」とすぐに謝られました。
そらちゃんの癇癪や機嫌には、先生たちも手を焼いていたと言います。
長女が話しかけたり相手をすることで、そらちゃんが機嫌をよくして円滑に進むことが多かったのだそうです。長女を気にかけて言葉をかけたこともあったのだけど、長女が「大丈夫!」と元気に笑うので、ついつい任せてしまっていたのだとか。
長女は家では活発で手がかかる子ですが、外では「しっかりしている子」として見られていました。
長女は他の子たちとも遊んでいましたが、そらちゃんが癇癪を起こしたり、怒るたびに引き戻されていたようです。それは入園当初から始まっていて、二年近い日々が経っていました。
年長になり、ついに限界に達した長女が家で泣き出したのでした。
「怒りで人をコントロールする」は遺伝するのか
私はそらちゃんの家庭の事情を知っていました。
母親から愚痴をよく聞いていたからです。
それによると、そらちゃんの父親も機嫌を悪くしたり怒ることで家族を思い通りに動かそうとする人でした。それも四六時中その方法をとっているようです。
父親は自分の感情には敏感ですが、人の感情には鈍感でした。本人としては人の気持ちをある程度想像しているつもりなようですが、的外れで被害妄想が強い傾向がありました。
怒りからの鬱症状もあり、精神的に不安定だということでメンタルクリニックに通っていました。統合失調症を始めいくつかの診断を受けていましたが、後に典型的な自閉症(アスペルガー症候群)であることがわかります。
怒りで人をコントロールすることが自閉症から来るものなのか、単に育った環境の中でそれを学んでしまったのかはわかりません。
父親の母親は息子が不機嫌になるたびに望むものを買い与え、大人になって家庭を持ってからも変わりませんでした。そらちゃんの母親は夫の言動に頭を悩ませていました。
私は事情を知っていましたので、そらちゃんの行動は、父親から学んだやり方かもしれないと思いました。
結果的に父親の母親もそらちゃんの母親も、父親の機嫌を損ねないように生活しているので、そうすれば人が思い通りに動くと知ってしまったのかもしれません。
それにしても私はそらちゃんの母親の愚痴の聞き役でしたので、私の子どもがそらちゃんから被害を受けていて、父親と同じことをしていると知ったらショックを受けるだろうと思いました。
歯に衣着せぬ付き合いをしてきていましたので、私から母親に伝えることもできたのですが、この時は先生から「怒ることで友達をコントロールしようとするところがある。注意してみてほしい」と伝えてもらうよう頼みました。
怒りで人をコントールしていた私の話
私はかつて、そらちゃんのような手段をとっていたことがありました。
目を血走らせ、怒鳴り、物に当たりました。
口で勝てない父を追い詰めて逃げ場を無くすので、父は暴力に走り、母と弟に手をあげました。
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私が怒りで人をコントロールしようとしたのは、小学生低学年の時と、中学校の一時期でした。
小学校の時は家庭で与えられなかったおやつを食べたくて友達の家に行った際、「お菓子がないなら帰る」と言って出させようとしました。
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中学校の時は家に帰りたくなくて、友達の家に居させてもらう時に、「今日は無理」と言われると不機嫌になるといった、厄介なものでした。
不安定で拠り所のない精神は、同じく不安定な両親でも、守るべき弟でもなく、近くにいる友達に向かいました。いずれもコントロールしようとする対象は親しくしていたごく一部の友達で、特定の場面で現れました。
私が遠い高校に通い出したこともありますが、私と付き合っていても面白くなかったのだと思います。
性質か、育った環境か性格か
「怒って見せて、友達を操作しようとするところがある」と、幼稚園の先生からそらちゃんの母親に伝えられました。
そらちゃんの母親から、「先生にこう言われた」と聞きました。
伝えてほしいとお願いしたのは私でしたので、ドキッとしました。
そらちゃんの母親は年長中盤になってそらちゃんが発達障がいではないかと疑うようになり、発達の検査を申し込みました。数ヶ月待って初めはグレーと言われていましたが、ほどなくしてアスペルガー症候群(自閉症)の診断が下りました。
医師が話すそらちゃんの症状は、そらちゃんの父親のことではないかと思うほど、二人の性質が似ていました。
そらちゃんの母親は、夫がアスペルガー症候群だと確信するようになりました。(後に正式に診断が下りています)
詳細な話を聞いていると、私の父親とそらちゃんの父親の性格もよく似ていました。
そらちゃんの父親が防犯カメラを多量に設置して人を監視しようとするのに対し、私の父親は「家を覗かれている」「盗聴されている」と言ってカーテンを閉めたり、あると思い込んでいる盗聴器に向かって攻撃的な言葉を投げかけている点が似ていました。また、頻繁に癇癪を起し、怒りのポイントがわからないことや以下の点も共通していました。
共感性が低い。
自分の機嫌を自分でコントロールすることができない。
俺を怒らせるお前が悪いと人に責任転嫁する。
部屋に閉じこもり、都合のいい時しか部屋から出てこない。
被害妄想が強い。
後先考えずに勢いで重要な判断をして、家族が尻ぬぐいをする。
どれもこれも「可能性は低い」と出ましたので、私は違うのか……よくわかりません。
感情と理性の根源
同時に友達間や園生活で社会性を身に着け、コミュニケーションの方法を徐々に学んでいきます。
怒り、無視、泣き喚きも同等
自尊心と怒り
怒りで人をコントロールしようとする人物を総括して、以下のように言われることがあります。
自尊心が低く、不安を抱えている。怒りや悲しみといった負の感情を処理できない人物が、人をコントロールしようとすることで自身と向き合うことから目を背けているからである。
当時の自分を重ねて、納得します。
親に否定される生活を送っており、居場所がありませんでした。不安と苛立ち、モヤモヤとした説明ができない感情と息苦しさが溢れていました。自分を見つめなおすとかそんなこと以前の問題で、その時々を過ごすことで精一杯でした。
私が自分を分析し、見つめなおすようになったのは親元を離れて生活するようになってからです。
それでも実家の揉め事に巻き込まれると、途端に霧の中に引き込まれるような感覚を覚えました。
私が両親を分析するようになってわかったのは、母も負の感情を処理できないまま日々を過ごしていたということでした。
母は父と上手く行っておらず、専業主婦だったため家族しか存在を認めてくれる人がいませんでした。それにも関わらず、父は母に敬われないことに腹を立て、母の尊厳を潰すような発言を繰り返しました。
その反動が常軌を逸しているのでは? と思われるほどの喚きと、記憶のすり替えに繋がりました。
母は離婚する勇気が持てませんでしたので、今も不満や不安を抱えたまま父との生活を続けています。感情を整理できないまま募ったストレスが、家族や親戚間への攻撃に転じて行ったのだと思われます。
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自分が負の感情の渦に呑まれないためには、その環境から抜け出すことが確実な解決方法と言えます。
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