離婚して事実婚を選択する理由・婚姻の甘えと離婚後の自立

三児の母でありモデルの牧野紗弥さんが、夫と離婚し、事実婚を選択することが報道されました。

世間からは、「事実婚をして一人親の手当てをもらうためではないか」、「苗字を変えたら家庭内のモヤモヤが解消できる意味が分からない」、「子どもが可哀そう」といった批判的な意見が聞かれました。

(因みに一人親の手当てについては既婚未婚に関わらず収入により変わりますし、同居(事実婚)者の収入も合算されますので、的はずれな批判です)

私は既婚ですが、離婚して事実婚の選択は大いに「アリ」と感じました。

その理由について述べます。

婚姻関係の甘え

私は事実婚の選択は「アリ」と感じましたが、牧野紗弥さんがどういう方なのかは全く知りませんでした。
ファッション雑誌を買うこともなければ、モデルにも疎いので、事実婚の選択の意図を想像するところから入りました。

私が事実婚を「アリ」と思う理由は「婚姻関係の甘え」にありました。

夫側の甘え、妻側の甘えどちらもあることなのですが、特に妻側にしっかりとした収入がある場合に、妻は夫側の甘えに苦しむことがあります。

家事は妻がするもの。
妻が稼いでいても、家事ができなければ妻として失格。
妻は夫を立てるもの。
夫が育児をすれば褒められるが、妻が完璧に育児をするのは当然。
夫がする家事育児は妻のサポートに過ぎない。
こういったジェンダーによる先入観は、女性が働く、或いは働かざるを得ない世の中になっても残ったままとなり、延々と妻を苦しめています。先入観が世間的に「正しい」と定義され、それが夫にも根付いていることが多くあるのです。
妻が過労に苦しみ負担を夫に訴えても、「こういうものだから。俺は世間に比べたらやっている方だ」と自身を肯定し、妻を軽視することが珍しくありません。
世間的ジェンダーの先入観が、妻を助けなくてよい免罪符になっているのです。
実際、私の知人に同様の例がありました。
夫に家事育児の負担を求めたところ、夫は小手先の育児をしただけで「俺は世間よりやっているいい夫であり父である」と主張し、夫婦喧嘩を繰り返すことになりました。
夫は妻に負担を強いていることに気が付いていましたが、面倒なので自分はやりたくないと思い、見て見ぬフリをしていました。
妻が求めてくることは、一般論を免罪符として退けました。
妻はそんな夫のズルさを肌で感じていました。
妻は親に相談をしましたが、妻の親でさえ「男はそういうものだから、仕方がない。女はみんな我慢しているんだから」と妻に耐えるように言いました。
夫の親も「息子(夫)は働いているんだから休ませてあげて」と求めました。妻も夫と同様に働いているにもかかわらず。
妻は夫があてにならないことを悟り、また、自分が夫に愛されていないのだと知って悲しくなりました。親族も敵でしかありませんでした。
しかし絶望している暇はありません。子どもの生活を守るために家でも職場でも働き続けなければなりませんでした。
休みたい。
愛されたい。
そんな妻の疲れた心が、夫への憎悪に変わりました。
妻は夫が帰宅するとイライラが止まらなくなり、夫に冷たく当たりました。或いは無視をするようになりました。
夫は家庭に居場所がなくなり、浮気に走りました。
浮気が発覚し、夫は有責でありながら離婚したくないと縋りましたが、妻は夫に心底失望して離婚に至りました。
しかし不思議なことに、その夫婦は離婚してからの方が夫婦(元)関係が上手く行くようになったというのです。

離婚後の自立

元夫は、妻が家庭内で労働するのは当然だと思い込んでいました。
夫の親も祖母も、女性が当然のように家事育児をしていたからです。

家事育児は基本女の仕事であって、それを放棄するのは夫を蔑ろにすることだと思っていました。

妻は自分と同等の稼ぎがありながら家事育児と忙しそうでしたが、それは女として当然だし、夫への愛情であり敬意の表れである。自分は男だから、子どもや家事の細かいことはわからなくて当然だと思っていました。

しかし夫の浮気が発覚し悲しんだ妻を見て、自分が愛されていたことを知りました。妻に離婚を突きつけられました。浮気はきっかけに過ぎず、多くの不満を妻が抱え続けてきたことを実感しました。

これからは家事育児もすると妻に告げましたが、信じられないと突っぱねられました。
それまで自分が免罪符として「男だからできない」と暗に言い続けていたので、今更できると言ったところで信じてもらえないのは当然でした。

離婚が成立するまでの話し合いの日々の中で、家庭内の妻の動きをよく見ていると、妻がどれだけ動き回っているか、夫である自分に何を求めているかが見えてきました。

自分がなんだかんだ理由をつけて、単純に面倒だから家事育児をしたくないと思っていたことに気が付きました。
気づいたときにはもう遅く、妻の離婚の意思は変わりませんでした。

離婚後、妻は夫と同じ団地に部屋を借りて住むことになりました。
突然父親と離れることへの、子どもの精神面への配慮でした。

離婚後、妻は元夫に何も期待しなくなり、夫の世話もしなくて済むようになったので心身ともに楽になりました。
ただ少し、経済的に不安があることと、仕事で残業になった時に子どものことが心配でした。

夫は離婚後、度々元妻の家に顔を出しました。
妻が仕事で遅くなる時は、子どもの世話を積極的に見るようになりました。

それまでしなかった音読や丸つけの宿題も見るようになり、離婚前はダラダラ寝続けていた休日に、元妻と子どもを誘って遊びに連れて行くようにもなりました。

妻は当初、数ヶ月もすれば終わる一過性のものだろうと、冷めた目で元夫を見ていました。
しかしそれが半年、一年と経ってくると元夫を見る目が変わっていきました。

妻は、もっと夫と向き合っていれば離婚をしなくてもよかったのだろうかと考えるようになりました。
反面、やはり離婚したからこそ今があるのだとも思いました。

元夫はよりを戻したいと妻に言いましたが、結婚後また夫が元に戻ってしまうのではないかと心配で幾度も断りました。
もう安い家政婦には戻りたくありませんでした。

また親族に「妻はこうあるべき」と求められることを考えると、結婚はこりごりだとも思いました。
離婚して夫との信頼関係が回復した今が、一番居心地がいいのです。

結局この二人は8年近くこの関係を続けています。

妻に断られ続けて数年経ち、元夫は恋人を作りました。
妻は自分が断っておきながら、やはり他に女を作るんじゃないかと元夫に失望する思いもありながら、ホッとする気持ちもありました。

恋人とは長続きせず別れたようですが、今後元夫が誰かと再婚したときに大きく関係が変わるのでしょう。

そうなった時、寂しくなるのかもしれないと妻は言いました。

離婚して事実婚の選択をした牧野紗弥さんの意図

牧野紗弥さんはオスカープロモーションに所属し、ママ向けのファッション雑誌「VERY」のモデルをされています。

そのVREYで2020年8月にこのように答えています。(参考

「家事育児は女性のもの」と思ってたけど、モヤモヤが言語化。
家庭内ジェンダーに気づいた

☝この見出しがついた記事の本分がこちらです☟

夫のことは大好きです。信頼もしています。でも、この5年間のうち数年は、精神的な倦怠期がありました。2人目を出産し、7年前モデル復帰してからも、特段疑問を持つこともなく、家事・子育てのほぼすべては私が担っていました。「俺ほどやっている夫はいないよ」「働くのは大賛成。でも俺の仕事の予定は変えられない」「俺のほうが稼いでいる」なんて台詞を吐かれても、確かに夫は、撮影で朝早い私に代わり保育園に送ってくれるし、家にいるときはお願いしたことはやってくれるし、それに稼ぎが全然違うのだから仕方がないと返す言葉がありませんでした。でもちょうど5年前ぐらいから、私の仕事も順調に増え、3人目が誕生、長女は小学校、長男は保育園と通う場所が別々になり、習い事もバラバラ。1人ですべてを担うのは限界に。常に時間に追い立てられてイライラ、笑えなくなっていったけど、不満を的確に夫に伝える術を持っていませんでした。不満を言ったって、口喧嘩になるだけ。

しかし、昨夏、家に届いたVERYで、女性学の第一人者、上野千鶴子先生のインタビュー記事を読み、そのモヤモヤが晴れるような感覚があったんです。我が家になかったのは、夫婦の平等意識。保守的だった分私には衝撃的で、その後ジェンダー問題に関する本を読み漁り、ママ友や世代の違う女子大生と意見交換をするようになりました。そして昨年の秋ごろ、いつもの口喧嘩の末「私がやっていると思う子どものこと、家のこと、書き出してみてよ!」と紙とペンを渡しました。夫は自信ありげに30個くらいをスラスラと書いたのですが、その内容を見て愕然。「長男の学校〝関係〟」「長女のバレエの送り迎え〝など〟」……。私の不満ってこれだ。長男の学校と一口に言っても、プリントチェックから宿題のフォロー、行事の確認、集金の用意……書き出したら止まらないけど、これをすべて、〝関係〟〝など〟に集約されちゃっている。この人は、何もわかってない。そう気づいたんです。話し合いの末、意図的に私が「1週間、家事・育児をやめる」ことを提案。一緒にいても、私はご飯も作らないし、掃除もしない。子どもと一緒に遊んで、すべての家事・育児を夫にバトンタッチしました。でも、夫はわからないことがあるとすぐに私に聞こうとしてしまう。学校からのプリントを読むことや、子どもから聞き出して推測することを促し、ママ友にお願いして夫とLINEをつなぎ、ママパパ友間で解決するよう伝えました。つい手と口を出したくなることばかりで、それを我慢する私も大変。初めて夫は仕事のスケジュールを動かして、子どもの予定に対応していたんじゃないかな。どうしてもやりくりできなくて、密かに友人に頼んだこともあったみたいです。1週間が終わるころ「あと1週延長して、もっとわかりたい」。夫からの申し出でした。夫の理解が進めば、不思議と私も歩み寄れるもので、改めて夫婦で話し合い。「どっちが稼いでいるかは関係ない。夫婦2人分合わせて世帯収入。子どもたちには色々なことをさせたいからチームで稼ぐ。だから、2人とも都合がつかなければ、シッター代も必要経費なのではないか」。夫からそんな言葉を引き出せたのも大きな収穫でした。一方、夫の言う「やってと言われたことは100%やるけど、やったことがないことは想像できないから」も理解。私もどこか家事、育児は女性がするものという意識があり、「なんで〝手伝って〟くれないの」と不満を募らせていた。夫の知る機会、やる機会を奪っていたのかも。子ども3人。日々慌ただしいのはしばらく変わらなさそう。でも、きちんと自分の思っていることを言語化し夫とチームで立ち向かえる気がしています。

こちらの記事で名前が挙げられている上野千鶴子先生とは東京大学名誉教授であり、2019年4月に東京大学の入学式で祝辞を述べられた方です。この祝辞は大きな話題となりました。

牧野紗弥さんのモヤモヤを晴らしたVERY2019年夏ごろの上野千鶴子さんの記事が見つけられなかったのですが、夏ごろに「女らしさ」「男らしさ」の伝え方といった特集が組まれていたようです。

恐らくはそこでジェンダー論や女性学の先駆けである上野千鶴子さんがインタビューに答えていたのでしょう。読みたかった……。

とにもかくにも、牧野紗弥さんの2020年の記事は、私の友人が離婚後によい夫婦関係(?)を築いていることと重なりました。

牧野さんも婚姻関係の甘えを取り払い、真に自立した夫婦関係を目指すための事実婚なのだろうと感じたのです。

“互いの性に戻る”の意味

世の男性の中には、「結婚は男の墓場」と評する方がいます。

妻や子どもを養うために、稼ぎを使われて男が損だと言いたいようです。

確かにそういった側面はあります。
女性が女性らしさを求められるように、男性は一生働き続けるもの、妻と子を養う大黒柱であるべきと求める声が根強いのは確かです。女性ばかりが大変な思いをしているわけではありません。

大黒柱として一家を支えることが沽券になる男性もいれば、それが嫌だと思う男性もいて、妻と経済的にも家事育児面でも助け合うことで家庭を担っていく男性もいます。

同様に、夫を支えることが自信に繋がっている女性もいれば、夫を養い夫に専業主夫として家のことを任せて働いている女性も少なからずいます。また、夫と同等に稼いでいるのに家事育児は当然のように女の仕事として任されてしまい、負担の多さに家族の意義が見いだせない女性もいるのです。

夫婦の考え方により、正解が変わります。
正解は世間や親族が決めることではなく、夫婦が決めることです。

しかし右に倣えと教育され、ディベート文化がなく察する文化の日本では、夫婦で話し合うこと自体が難しい場合が少なくありません。

家庭に籠り不満を抱えたまま生きるしかなかった女性が、インターネットが普及し、働くよう求められるようになった今やっと、声を発するようになったのです。

結婚で名前が変わるということ

結婚して「夫、妻はこうあるべき」と世間に求められるストレスに加え、当たり前のように結婚で苗字を変えなければならない女性が失うものは、アイデンティティ。つまり自分でした。

私は結婚して夫の苗字になりました。

夫と同じ苗字なるのは嬉しいことでした。
決して嫌ではありませんでした。

しかし苗字が変わったことで、妙な違和感を感じることがありました。

それは慣れだとかそういうものではありません。

具体的に最初に感じたのは、婚姻届けを出したばかりの時、新婚旅行に出る前のことでした。
パスポートの苗字の表記を変えるか、変えずに使用するかを判断する時です。

パスポートの苗字は変更しなくても使用することができました。しかし夫は「もうその名前ではないのだから、作り直してくれ」と言いました。
夫が嫌がるのならとお金を払って作り直しました。

夫の支配欲、或いは自分の家庭を持った自負の表れなのだと感じました。
それは私が、或いは夫と私の二人で作る家庭ではなく、夫だけの物のように感じられました。

夫の独占欲や自負が決して嫌だったわけではないのですが、つい先日まで私の名前だったものを否定されたような感覚がありました。

パスポート、銀行、クレジットカード、年金手帳、保険、その他会員登録やもろもろの名義変更は非常に手間がかかりました。
今は変わっているのかもしれませんが、当時は平日の昼間に窓口に出向いて名義変更しなければならないことが多く、結婚後専業主婦になるのを見越した制度だと腹立たしく思いました。

私が当時勤めていた会社では、旧姓で仕事を続けていました。
年配の男性社員が悪びれもなく、「お前は結婚したのになぜ苗字を変えないんだ。旧姓を使うなんて偽名と一緒だろう。詐称じゃないか」と言いました。

は?

因みにこの男性社員は、ニヒルですがダンディでもあり、いい先輩でした。
恐らく、本心でこう思っているから言ったのであり、悪気はありません。

「偽名じゃありません。結婚しても旧姓が私の名前であることに変わりありません。何言ってんですか!」

冗談ぽく返してその場を去りました。彼は私の背後で「偽名だよな?」と他の男性社員に同意を求めていました。

別に旧姓に特別思い入れがあるわけではありませんし、夫の性が嫌なわけでもありません。
しかし自分がそれまで名乗ってきた名前を否定されることは、それまでの人生を「変えろ」と強制されているようで不快でした。

「苗字を変えることの何が不満なの? そういうものでしょ」と数人の男性から聞くことがありました。
夫婦別姓を認めるべきだと訴訟になっているニュースが発端でした。

実際私の知人には、苗字を変えるのが嫌で入籍をせず事実婚を選択している夫婦がいました。
妻にとって名前は自分のアイデンティティそのものでした。

夫は妻の性に変えてもいい。だから婚姻届けを出そうと言ったのですが、夫の親がそれを許しませんでした。
結果事実婚とし、子どもにも影響が出かねないということで子どもも持たない選択をしていました。

今から20年近く前の話しです。今は事実婚で子どもを持つ方も増えていますね。

そんな妻を、周囲は「頑固だ」と非難しました。

しかし「奥さんの性になるのは嫌だ」と実に8割以上の男性が答えました。(男性ばかりの会社でしたので聞き放題でした)

どうしてかと訊ねると、「女が苗字を変えるものだから」「婿養子みたいで格好悪い」「女は嫁に来るものだ」「男を立てるために女は苗字を変えるんだ」と実に素直な返答がありました。

結局結婚して性を継ぐということは、支配欲に繋がっているように思いました。
人生を支配し、型にはめるための道具です。

その上結婚後に妻はこうあるべきと求められるくらいなら、事実婚で自立した関係でありたいと思うことは、決して不自然でも頑固でもなく、自然なことです。

だから私は、離婚して事実婚の選択は大いに「アリ」と感じるに至りました。

結婚の意味とは

突っ込みどころ満載ですが、私は既婚で夫の性に入り、今は専業主婦です。
出産後社会復帰しようとしましたが、非常に不規則な仕事をしている夫に反対され今に至ります。

夫は家族を養っていることが自信となる古風なタイプなようです。

最近は子どもにお金がかかるようになり、夫は社会復帰を反対しないと姿勢を変えてきました。
ただ私が復帰したら家事をしなければならないのが不安と漏らしています。

妻が社会復帰をしたら当然家事を夫もやるものと思っていることがありがたいです。

ありがたいと思っている時点で平等とは言い難いのでしょうが、妻と一緒に生活を助け合っていこうと思っている証拠ですから、はやり嬉しいことです。

実際に共働きになったら新たな火種が出てきそうですがね。

事実婚はアリ。

しかし事実婚で得られることが結婚で得られたなら、結婚はやはりいいものだと感じます。

 

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