夫の姓を名乗るようになって13年の主婦です。
結婚を機に、夫の苗字になりました。
夫の苗字にするもの、と夫が思っていましたし、私も特にこだわりがなかったのでただ慣例に従った形です。
しかし苗字を変えた後に、度々違和感を感じる出来事に見舞われました。
その代表が、夫の苗字を名乗ることの何が不満なんだよ!と怒る男性に「妻の姓を名乗れるか」と聞いたらキレられた一件です。
これらについて記します。
夫の姓になったことで感じた男尊女卑
私の知人に、「苗字を変えたくない」と訴える女性が数人います。
理由は「この名前で生きてきた。名前がアイデンティティそのものだから」です。
彼女たちの一人は事実婚をしています。
彼女の夫は当初、同じ苗字にして家族としての一体感を得たいと言い、婚姻届けを出すことを希望していました。
「彼女が苗字を変えたくないのなら、俺が変える」と言ったのですが、夫の母親が「女性の姓を名乗るのは情けない」と強く反対し断念。事実婚を選択することになりました。
また別の女性も苗字を変えたくないと事実婚をするつもりでいましたが、やはり夫が苗字を一緒にしたいと望み、彼女の姓になりました。
私自身は、苗字を変えることに抵抗がありませんでした。
しかし会社勤めをしながら多数の銀行口座や各種保険、クレジットカードやパスポートなど、ありとあらゆる名義変更をしなければならない面倒臭さに腹が立つようになり、結婚制度における男尊女卑を感じるようになりました。
同じ姓を名乗ることの何が男尊女卑なのだろう、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、婚姻時に実に95%の女性が名字を変える現状があります。
「結婚後は特別な理由がない限り夫の姓を名乗るもの」と思っている男性の多さと、名義変更手続きの柔軟性に欠けるシステムに辟易としたこと、ネット手続きが今ほど充実していなかったこともあり、名義変更に平日の多くの時間を割かれて「面倒なことは女がやるもの」と暗に求められているように感じて、腹が立ったのです。
旧姓を名乗ることを「偽名だ」と言われた違和感
夫の姓を名乗ることが「当たり前」とされる風潮を男尊女卑と感じたのには、以下の出来事も影響しています。
勤めていた会社内で、総務より、私が結婚した旨がメールで全社員に配信された直後のことです。
私は勤めていた会社で旧姓を名乗る予定でしたが、年配の男性社員から「旦那の姓に変えろよ。旧姓は偽名だろう。詐欺と一緒じゃないか」と言われたのです。
一つ断っておきたいのは、この男性社員は決して“おかしい人”ではなく、仕事ができて、人望もある人でした。
だからこそ、ショックでした。
結婚するまで20年以上名乗ってきた名前が、結婚して姓を変えた途端に「偽名」と言われることに、強烈な違和感がありました。まさに、アイデンティティを根底から否定された感覚に陥ります。
その人は自分が姓を変える可能性を、少しも感じたことがないのでしょう。なぜなら男性だから、です。昨日まで生きてきた名前が否定されることで、自分自身の歴史が壊される感覚になるなんて丸で想像できません。想像する必要もありませんでした。男性ですから……。
私は「偽名じゃないです。旧姓も私の正しい名前です」と言い返しました。
すかさず「戸籍が変わってんだから偽名だろう。何言ってんだ」と笑われ、想像力のない年寄り(一歩手前)に何を言っても無駄だと思い、その場を後にしました。
実際、こんな考えの男性が少なくありません。
夫の苗字を名乗ることの何が不満なんだよ!と怒った男性
当時は夫婦別姓を認めるべきか否かについて、度々ニュースで報じられるようになったころでした。
年配の男性に限らず、若い男性社員に聞いても、ほとんどが「自分が苗字を変えること」を想像したことがありませんでした。
苗字にこだわりがない人もいますが、しかし妻の苗字に変えるかといったら抵抗を感じる割合が高いようです。
酒の場で当時30歳前後の男性社員達が「女はさ、旦那の苗字になることの何が嫌なわけ?」と聞いてきたことがありました。
おしぼりを片手に、「いいじゃん、愛する旦那と同じ苗字になれるんだから幸せじゃん。何が不満なんだよ、女は」と半ば怒りながら言うのです。
女性社員がかなり少ない職場でしたので、その場で答えられるのは私しかいませんでした。
私は夫の苗字になることに抵抗はありませんでしたが、「夫の姓を名乗るもの」と社会が暗に求めてくるアンフェアさと、苗字を変えるに伴った煩雑な手続きへの抵抗感を話しました。
それに対し男性達は「手続きくらい嫌がらずにやれよ! 妻になるってそういう事だろう」と笑いながら饒舌に話しました。
「女性にだけ暗に強制されることに抵抗を感じるんです。愛する夫の苗字になるのが幸せだと言うなら、愛する妻の苗字になるのも幸せでは?」と返すと、心底理解不能といった表情で、「なんで俺が妻の苗字名乗らなきゃいけないの。女が変えるものだろう」と言い切りました。
男性である自分に不利益がないからただ慣例に従っているだけで、不利益がある側のことを何も考えていないのだとわかりました。
夫が妻の姓を名乗れない理由
その場の8割以上の男性が「奥さんの性になるのは嫌だ」と答えました。(十数名の男性社員の答え)
理由は、以下です。
・女の苗字にすると婿養子みたいで格好悪い。周囲にバカにされる
・自分が苗字を変えるなんて考えたことがない
よくよく話を聞いてみると、大かた「婿養子みたいで格好悪い」という印象が強いようです。
妻の姓を名乗ることと婿養子は別物なのですけどね。(そもそも婿養子の何が格好悪いのかも疑問ですが)
イメージを混同しているのです。
苗字と支配欲
「女は男の姓を名乗るもの」という主張には、結婚して妻を自分の姓にすることに、家族としての一体感とともに“支配欲”が存分に含まれているように感じられました。
かつて「嫁」が夫の家の物として扱われたように、妻の人生を「夫の物」と位置づけ、型にはめるための枠になっているのです。
結婚という制度自体が「枠」をつけるためのものでもあるのですが、夫婦対等ではなく、事実上妻が夫の傘下に入る制度にみえるのです。
それは男性社員たちの話だけでなく、私の夫からも感じられたことがありました。
結婚当初、新婚旅行に出る際、期限が残っている私のパスポートの名義を変えるか悩んだことがありました。婚姻届けは提出済みですが、パスポートの名義が旧姓のままでも問題なく使用できる期間でした。
名義変更に手間もお金もかかるので、旧姓のまま使用しようと決めた際に、夫に「もうその苗字ではないのだから、作り直して」と求められました。
夫は特別独占欲が強いタイプではないはずですが、「俺の苗字になったはずの妻が、違う苗字を名乗るのが嫌」と思う裏に支配欲を感じました。
こういった意識は、結婚後の夫婦の形にも影響を及ぼします。
その後夫は、徐々に私を軽んじるようになっていきました。
5年後、夫の身勝手な行動が止まらず、たまりかねた私が離婚を求めたことがあったのですが、その後の話し合いで夫は「結婚すれば妻は簡単に離れて行かないものと思っていた」と話しました。
このような話はわが家だけにとどまらず、多々聞くことがあります。
結婚が「夫の家に入る」ことを意味していた時代があるからか、婚姻で戸籍が新たに作られるようになった今も、夫の姓を名乗るのが当たり前とされていることで、「夫の姓になる」=「妻は自分のもの」と夫に錯覚させるケースがあるのかもしれません。
世界で唯一夫婦別姓が認められていない国、日本
2014年以降、日本は世界で唯一、夫婦別姓が認められていない国となりました。
国連はこれが女性差別に当たるとして、夫婦別姓を認めるよう3度の勧告をしています。(2023年現在)
それにも関わらず、ネット上では「日本には日本の文化があるのだから、外国がとやかく言うことではない」という男性の声が溢れています。
高齢男性が牛耳る日本の政治も、一向に変わる気配がありません。
決して夫の姓になる選択肢がなくなるわけではないのに反対派が多い背景には、子どもの姓をどうするかという問題があると言われています。
しかし苗字が違っても親子の繋がりが切れることはなく、学校などの団体生活においても兄弟児を把握する必要はそれほどありません。そもそも同じ苗字だからといって、家族だとも限らないのですから。
別姓が認められている海外において子どもの姓が問題にならないことからも、根拠の薄い反対論であることがわかります。
ではなぜ、これほど夫婦別姓が認められずにいるのかといえば、型にはめようとしがちな文化と固定概念、一定年齢以上の男性については、男尊女卑思考と男性特有の特権を手放すことへの抵抗があるからではないでしょうか。
この記事で挙げた男性達の生の声は、もう10年以上前に聞いたものです。
彼らは現在、40歳~50歳になっています。
男性の意識も徐々に変化しているように感じられます。
以下は2023年3月28日に放送された番組です。
別姓を望む女性と、姓を共にしたいと願う男性カップルの対話があります。
男性は「女性が姓を変えるものと思っていた。苗字は同じにしたいが、男性である自分が姓を変える想像はしていなかった」と話し、結婚をするかどうかという結論には至りませんでした。
※取材中には結論が出なかったものの、男性は話し合う姿勢があり歩み寄りをしていると、出演した女性がTwitterで発信しています。
冒頭に挙げた私の知人の夫(事実婚含む)たちは、柔軟な姿勢を見せて苗字を変える選択をしました。
95%の女性が婚姻時に苗字を変える中、このような選択ができる男性がいることに希望を感じます。
実は私の弟は結婚して5年以上が経ちますが、数年後に妻の苗字に変わる予定です。
両親が何というかわかりませんが、反対しても強行すればよい、と応援しています。
「妻は夫の苗字を名乗るもの」と決めつけて疑わない男性がいる反面、「どちらの姓を名乗っても良い」と思っている男性も目立たないけれどいるのですよね。
夫婦別姓を認めるか否かが問題となって30年。
日本における女性の立ち位置が、男性の3歩後ろから隣に変わるのはいつなのでしょうか。
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