私が一時期シェアハウスで同居していた男性、佐々野(仮名)の話です。
人生でナンバー3に入るドン引き話しの一つをお知らせします。
鳩をビービー弾で撃つ男
シェアハウスの換気扇に鳩が巣を作る
都内の3LDKのマンションを借り、3人で住んでいました。
ある日の昼間のことです。
私がキッチンで料理をしようとしたところ、換気扇がうまく回りませんでした。
古いマンションでしたので、換気扇は昔ながらのプロペラが回る構造でした。
回りかけたプロペラの向こうで、何かが動く気配がありました。
鳥……?
どうやら大きめの鳥が換気扇の屋根の下に巣を作りかけているようです。
なぜここに……。
換気扇が回せないと、キッチンが油でべとべとになってしまいます。
同居人のもう一人の女性は私の友人でした。
二人で料理をして、毎日酒を飲むのが日課でした。
ベランダや他の窓なら温かく見守れるけど、換気扇だけは困る!
他の場所を探してもらいたい。
巣が作りかけの今なら、ぎりぎり立ち退き頂けるはず!
卵を産んでからでは遅いので、すぐに巣を落とすことにしました。
鳥さん、ごめんよ。
でも他を当たってほしい!!
鳩の巣を落とす
シェアハウスとして使っているフロアは、10階建てマンションの5階でした。
外から回ることができない構造のため、近くの窓から手を伸ばし棒を使って巣を落とすしかありませんでした。
私の部屋と友人女性の部屋の窓はキッチンから遠いため、もう一人の同居人である男性、佐々野(仮名)の部屋を使う必要がありました。
佐々野の部屋はベランダがついており、そこから棒を使えば届く距離だったからです。
何に使うのか不明ですが、佐々野がちょうどいい長さの棒を持っていることも知っています。
私が鳩の巣を落としたいと伝えると、「俺がやっとくよ」と快く引き受けてくれました。
鳩の巣の落とし方
「嫌な役をやらせてごめんね。ありがとう」と礼を言いました。
正直なところ鳥の巣を落とすことに気が引けていましたので、自ら引き受けてくれてとてもありがたかったです。
食事の下ごしらえの続きや、洗い物をしながら、事が終わるのを待つことにしました。
すると、
バサッ。
バサバサッ。
喉をクルクル言わせながら、バサバサと羽を鳴らす音がしました。
鳥が鳩であることがわかりました。
心が痛み、「ごめんね」と呟きながら待ちました。
クルクル。バサバサッ。
バサバサバサバサ。
カツッカツカツ。
鳩の脚が換気扇のフードに当たる音なのか、小さな金属音のようなものが度々聞こえました。
クルクルクル。バサバサバサバサバサ。
カツッカツッ。
バサバサバサバサ。クルクルクル。バサバサバサ。カツッ。
鳥が抵抗しているのかな。
巣を落とすのは時間がかかるんだなと胸が痛み続けました。
バサバサバサ。
クルクル。
カツッカツッカツッ。
バサバサバサ。
……長い。
かれこれ10分以上は続いていました。
こんなに長い戦いになるものだろうか。
ふと不安が過りました。
佐々野の部屋を覗いて声をかけますが、ベランダに出ていましたし、集中しているのか聞こえないようです。
「入るよ」
聞こえていませんが一応声をかけて部屋に入り、ベランダを覗きました。
その瞬間、衝撃を受けました。
楽しそうに笑いながら、ビービー弾銃で鳩を撃っている佐々野の姿があったからです。
ビービー弾で鳩を撃つ男
「何しているの!?」
自分の血の気が引いていくのがわかりました。
つい大きい声が出てしまいます。
佐々野は心底楽しそうな笑顔で振り返り、「わざわざ巣を落とさなくても、嫌がらせをすれば去っていくよ」と言いました。
「明らかに楽しんでるよね!? 嫌がらせしてくれなんて言ってない。棒で巣を落としてほしいと頼んだんだよ!?」
「結果は同じなんだから、方法は棒でもビービー弾でも一緒でしょ」
「遊びでやらないでよ。鳩が真剣に作っている巣なんだから、こちらも真剣に巣を落とすの!」
「ちょっと、言ってる意味が分からない」
確かに、私は妙な事を言ったのかもしれません。
鳩が赤ちゃんを育てるために作ろうとしている巣を落とすのは、どんな方法を取ったとしても非道に変わりがないのかもしれません。
それでも、やるならスパッと落とすのが鳩へのせめてもの礼儀に思えました。
鳩をビービー弾で撃つなんて、怖いと思いました。
理由をこじつけて鳩を遊びに使うようで、どうしても理解できませんでした。
「とにかく、撃つのはやめて。それなら私が巣を落とす。棒と場所を貸してほしい」
「いいよ。わかったよ。しょうがないから撃つのは止める。俺が棒で落としておくから」
彼の方が体が大きいため、巣に届きやすいのは確かでした。
「もう撃つのはやめてよ」
「わかった、わかった。任せとけって」
佐々野は笑いながら言いました。
すぐに鳩の声も羽の音もしなくなりました。
それから鳩が戻ってくることはありませんでした。
ドン引きの黒歴史
佐々野は大学の先輩で、大学在学中に一時期付き合っていたことがありました。
何度も告白をしてくれましたが、私は彼の魅力がわからず、むしろ嫌悪感を持っていたので何度も断っていました。
あまりにしつこいので「彼氏がいるし、そもそも佐々野を男性として見られない。見られるようになることはない」とまで言っていました。
連絡を無視していましたが、毎日メールを送ってきました。
私が彼氏と別れ、傷心だったときもそれは続きました。
そしてついうっかり、佐々野の何度目かの告白を受け入れてしまいました。
あー!! なぜ私はあの時、「うん」と答えてしまったのか!!
付き合っている最中も、おかしな行動が気になっていました。
男の不可解な行動
佐々野は自分の自転車を持っているにも関わらず、私の自転車を貸してくれと言ったことがありました。
その日は使う用事がなかったので、自転車の鍵を貸しました。
数時間後鍵を返されました。
翌日、アルバイトに向かうために自転車に乗ろうとすると、私の鍵はかかっていませんでした。
代わりに、佐々野が自宅から持ってきたベルトチェーンの鍵がかかっています。
当然ベルトチェーンの鍵は渡されていません。
なぜ彼はわざわざ私の自転車で自分の鍵を取りに帰り、それをかけたのか意味が分かりませんでした。
バイトに遅れるかもしれないという焦りの中、近所に住む彼の部屋に走りました。
「なんで人の自転車に自分の鍵をかけるの? せめてそうしたなら事前に伝えておくべきだし、鍵も渡しておかなきゃいけないんじゃない?」
怒りでそう言いましたが、そもそも自転車には鍵がついているのに、それを使わない意味が分かりません。
とにかくこいつの思考は理解できない!!
「なんで自分の鍵を着けたの?」
「なんとなく。俺の鍵を着けたよって言おうと思ってたけど、忘れてた」と笑いました。
き・も・ち・わ・る・い!!
とにかくバイトに向かわなければとベルトチェーンの鍵を踏んだくり、自転車まで走りました。
電車に乗り遅れ、遅刻ギリギリでアルバイト先に到着しました。
このような意味の分からないトラブルを度々起こす人でした。
最後まで好きになれず別れました。
付き合うべきでなかったと、今でも黒歴史として残っています。
シェアリングが同棲扱い
そんな佐々野とどうしてシェアリングをしたのかといえば、他にも同居人がいるという安心感と、経済的余裕がなかったからに他なりませんでした。
私に彼氏がいることを知っていて、シェアリングを持ち掛けてきたのは佐々野です。
しかしシェアリングを始めてから、佐々野はまた私を好きだと言い出していました。
私にはまったくその気がないこと、彼氏がいること、そんな事を言うなら同居は難しいと話すと、佐々野は携帯電話のメール画面を見せてきました。
職場の同僚には、昔の彼女と同棲していると話しているようで、一度別れても同棲するなら、次は結婚だろうともてはやされていました。
「意味が分からない……。シェアリング前に、私をそういう目で見るならシェアリングは無理だって言ったよね? その時は否定したから踏み切ったのに、住み始めてから好きだって言い出すし、同僚に同棲って言ってたなんて、意味が分からない」
「いいじゃん」
佐々野は笑いました。
何が「いいじゃん」なのか、さっぱりわかりませんでした。
男の変わり身
シェアリングしていたもう一人の友人女性は、当時、精神的に不安定でした。
性依存があり、複数人の彼氏と揉めていました。
ある晩、私がいないリビングで酔っぱらっていた彼女は、勢いで佐々野を誘ってしまいます。
佐々野は私を好きだと言っていながら、あっさり誘いに乗りました。
友人女性が事に及ぶ前に正気に返ったため、結果的には何もなかったのですが、翌日彼女から詳細を聞いた私は佐々野に心底呆れました。
佐々野が誰と付き合おうが興味はないしむしろ彼女を作ってくれた方が嬉しいのですが、私の大事な友人女性の精神的病を知っていながら自制が効かないことに、心底幻滅しました。
少ししてシェアリングは解消しています。
なぜこの人と一時期とはいえ付き合ってしまったのか……。
私の黒歴史と、ドン引きエピソードでした。
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