毒親は子どもを支配し、「思い通りに動かす労力」を愛だと思っています。
辛い記憶から抜け出すには、吐き出すこと、整理することが必要です。
私は親との関係に悩みながら育ちました。
毒になる親・セルフカウンセリングができる本
毒になる親/スーザンホワード
毒親の本として有名な本です。
様々な親のタイプを挙げ、子どもの気持ちを代弁し、肯定してくれます。
無理に親を許さなくてもいい、許すことは解決ではないと教えてくれます。
自分がおかしいのかもしれないと思っていた毒親育ちにとって、辛くなるけれど、優しい本です。
一言で言えば、セルフカウンセリングを受けられる本と言えます。
しかし性的被害など、心の傷が深ければ深いほど読むことが辛くなります。
心を守るために閉じた記憶の蓋を開け、振り返り、親の理不尽と共に気持ちの整理をすることになるからです。
この本が辛くて読めない方は、一人で頑張ってはいけません。
すでに頑張りすぎています。そしてどこかに不調を来しているはずです。
ガタガタと揺れる蓋の隙間からたくさんの理不尽な「辛い」が溢れる生活となります。
家庭を持った時、子どもを持った時、親と自分が重なる度に未消化の気持ちが溢れ「辛い」が続きます。
辛さから抜け出すには整理が必要です。
気持ちの整理は家の整理と似ています。
まずは荷物を全てだし、状況を把握することから始まります。
しかし全て出した時には、過去の辛い記憶、苦しい気持ちも全て出てきます。
非常に不安定な精神状態になるでしょう。
その時に支えてくれる人、或いは対人のカウンセリング等で一時的に不安定に陥る自分を支えてくれる環境を作っておく必要があります。
カウンセラーとの相性の問題や、費用の問題、一時的に不安定になるなど準備するべきことがありますが、人生を守るために、心の整理を検討してみてください。
不幸にする親
不幸にする親 人生を奪われる子ども / D. ニューハース
「毒になる親」の解決版と言われている本です。
解決版ですが、「不幸にする親」のみでも読めます。
毒になる親が辛くて読めない、気持ちの整理ができていない、まだ振り返れない時は、こちらを先に読んでもいいかも知れません。
毒になる親の解決版というよりは蛇足版でしょうか。
毒になる親とセットで読むことをお勧めします。
「毒親」の正体
「毒親」の正体 精神科医の診察室から/水島 広子
評価が分かれる本です。
発達障害が原因で、子どもと健全なコミュニケーションが取れなかった毒親について述べられています。
根本的な解決ではないものの、発達障害によるコミュニケーションの取り辛さを理解する上では意味があるでしょう。
私の父は母を頭がおかしいと表現し、母は父が発達障害ではないかと言っています。
私は両親共に発達障害があるのではないかと疑っています。
或いは父の特徴が自閉症に似ていますので、母はカサンドラ症候群かもしれません。
私は美術系の学校に進みましたので、特徴のある子が集まりやすい環境だからか、発達障害を持つ友人が多いです。
発達障害に否定的な見方をする方もいますが、決して悪いことばかりではありません。円満な家庭を築いている子もいます。
発達障害だから毒親になるわけではありませんので誤解のないようお願いします。
また一部分に、それを子どもに求めるのは酷では? と感じる記述があります。
参考程度に読むことをお勧めします。
子ども虐待という第四の発達障害
子ども虐待という第四の発達障害/杉山登志郎
あいち小児保健医療総合センター心療科に勤めた、杉山登志郎医師著書の本です。
杉山医師は主に発達障害に関わる多数の本を出版しており、2010年より浜松医科大学特任教授に就任されています。
「子ども虐待という第四の発達障害」は問題行動が手に負えなくなり、心療科を受診した子どもについて書かれた本です。
発達障害と非常に似ているものの、違う反応を見せるケースがあり、「虐待によって発達障害と似た症状が引き起こされている」ことがわかります。
虐待は発達障害に似た症状と共に、愛着障害を起こします。
発達障害に似た症状は、低年齢のうちに愛情のある環境で暮らすことによって改善されることがありますが、愛着障害は改善が見られないという辛い結果が書かれています。
対人関係や情緒面で問題を発症しやすいと言われています。
幼少期に特定の養育者が愛情をもって養育することが、どれだけ大事なことなのかがわかります。
児童養護施設では職員が入れ替わり立ち代わり世話をするため、特定の人物に甘えられず、愛着障害を起こしやすいということが知られています。
そのため、できるだけ幼いうちに特別養子縁組や養子縁組をして、温かい家庭で養育することが求められているのです。
本には、第四の発達障害と愛着障害を発症した子どもの治療がいかに困難であることかや、医師や看護師の献身的な取り組みを知ることができます。
そして子どもの兄弟や親も精神的な問題を抱えていることが多いため、周囲の人間も同時に治療する大切さを訴えています。
医学的な見地がわかりやすく書かれた本です。
誕生日を知らない女の子
誕生日を知らない女の子 虐待その後の子どもたち/黒川祥子
あいち小児保健医療総合センターの紹介を得て、里親に預けられた子どもを追ったノンフィクション小説です。
子どもがいかに親の愛情を求めるか、胸が苦しくなる実話が書かれています。
里親の苦悩や愛情、児童養護施設の評判を知ることができます。
私は三人の子育てをしています。怒りすぎた時には落ち込むこともあります。
子どもはどんな親だとしても、必死に愛情を求めるのだと、この本を読んで改めて感じ、反省しました。
私が関係の良くない母親と距離を取りながらも、未だに「もう大丈夫だろうか、やっと無条件に愛してくれるだろうか」と期待してしまう意味も分かりました。もういい大人なので恥ずかしい話ですが。
子どもたちが全身全霊で私の愛情を欲してくれているなら、それほど幸せなことはありません。大事に守っていこうと再確認させてくれた本です。
是非、親になる方、子育てをする方に読んでいただきたい本です。
ローラ、叫んでごらん。フライパンで焼かれた少女の物語
ローラ、叫んでごらん フライパンで焼かれた少女の物語/リチャード ダンブロジオ
泣き声がうるさいという理由から、ローラは一歳の時に親の手によってフライパンで焼かれました。
保護され辛うじて命が助かったものの、彼女は心を閉ざし、14年間言葉を発することができませんでした。
火傷の痕が酷く、姿勢、視線も曲がり、コミュニケーションが難しい状態だった彼女について、精神科医の目線で描かれます。
修道女たちの交流から彼女の心が変わり始めます。火傷の治療をし、背骨の治療をし、看護師としての道を歩み始める話です。
高校生でこの本を読んだ時、ローラや周囲の人たちを素晴らしいと思ったのと同時に、自分は彼女よりずっと恵まれているのだと思いました。
自分の環境を人に話そうと思えない時でしたし、今のようにインターネットが身近ではありませんでした。「誰か」の実体験は私に大きな影響を与え、自分を客観視することに役立ちました。
「子ども虐待による第四の発達障害」にあるように、ローラは愛着障害を発症していただろうと想像します。
愛のある環境で生育したとしても、愛着障害は改善が見られないと言われています。
そうであれば、ローラは一見立ち直ったように見えても、心と戦いながら生きているということです。
彼女のその後の人生はどうだったのでしょうか。一緒に支えあえる誰かと出会っていてほしいと願います。
それとも、海外は様々な背景に寛容と聞きますので、他人の目線におびえる必要がない分、愛着障害が改善しやすいなどの違いがあるのでしょうか。
日本の児童養護施設で育った方が、偏見を恐れて育った環境を隠すと聞きました。そんなストレスを抱えさせる日本の社会、人の目が早く変わってほしいと願います。
シーラという子・虐待されたある少女の物語
シ-ラという子 虐待されたある少女の物語/トリイヘイデン/訳 入江真佐子
1980年に出版された本です。
トリイヘイデンはアメリカの特別学級の教師をしていました。
その時に出会った子どもについて何冊ものノンフィクション本と、フィクションの小説を数冊出版しています。
「シーラという子」はトリイヘイデンの処女作となります。シーラのその後については「タイガーと呼ばれた子」という本を出版しています。
シーラは話さず、泣かず、でも何かをさせようとすると大暴れする、扱いにくい6歳の子どもでした。知的障害があると思われたシーラでしたが、実は高い知能を持っていることがわかります。そして酷い虐待に遭っていることも発覚します。
虐待により心を閉ざしており、知的障害に似た症状が現れていたことがわかります。
暴力と性的虐待にさらされ、心も体も深い傷を負った子どもと、正面から向き合った教師の話しです。
当時高校生だった私は、この本をきっかけにトリイヘイデンの本を読み漁りました。
殆どの著書を読みましたが、「シーラという子」が一番印象に残っています。それは「タイガーと呼ばれた子」というその後の話しで考えさせられることが多くあったからだと思います。
同時に、虐待をする親の気持ちを親の立場に立って考えるようになりました。
誤解のないように書きますが、虐待をする親に同情をするわけではありません。
どれだけ過酷な環境であっても、子どもを傷つけることを許してはいけないと考えるからです。
しかし、どういう経緯で、どういう思考で虐待が発生するのかを考えることは、自分や親を客観視することに役立ちました。客観視は気持ちの整理に役立ちます。
タイガーと呼ばれた子・愛に飢えたある少女の物語
タイガーと呼ばれた子 / トリイ・ヘイデン/訳 入江真佐子
1995年に出版された本です。
「シーラという子」のその後の話しです。
トリイヘイデンの人間らしさが垣間見えます。
どれだけ気に掛ける子がいても、一人の子に全力投球を続けるのは難しいものです。
精神科医や医師、セラピスト、教師であっても同じです。
自分の子どもであっても難しいのですから。
しかし愛情に飢えている子にとって、それは裏切りと同じ場合があります。
少し大人になったシーラはトリイに裏切られたと感じ、トリイを言葉で攻撃し、拒絶します。
トリイは教師を辞め、セラピストになっていました。シーラに仕事の手伝いを頼み、関係を作り直していく内容です。
セルフカウンセリングができる本、医学的見地から子どもへの影響を見た本、自分を客観視し、心の整理を助ける本を紹介しました。
どれも考えさせられる本です。お勧めです。