悪い奴が大人になっても悪かった話・惨めな人生に誰がした?

十代から二十代前半にかけて、やんちゃな振る舞いをする人が一定数います。

思春期特有の不安定さから「いけないこと」をすることもあれば、家庭や家庭外の環境に影響されて非行に走ることもあります。

年齢を重ねて情緒が安定したり痛い思いをすることでやってはいけないことを学び、落ち着いていくことが大半なのですが、中には荒らくれたまま大人になって周囲に迷惑をかける人がいます。

この記事は、荒らくれたまま大人になったある知人男性と、私の夫の実話です。

悪い奴が大人になっても悪かった話

ある休日のことです。

私と夫は家で昼間から酒を飲んで、談笑していました。

酒が回り盛り上がった丁度そのころ、夫のスマートフォンの着信音が鳴りました。
夫が「知らない番号だ」と言った後、通話ボタンをタップしました。

夫が「あ、はい。お久しぶりです」と敬語で話し出したのとほぼ同時に、私のスマートフォンも鳴りました。

私のスマートフォンには、夫の実家の電話番号が表示されていました。
義母から私に電話がかかってくるのは、よくあることです。

「はい」と出ると、義母が焦ったように「〇〇君(夫の名前。以降、夫君と表記)に電話が繋がらない」と言いました。

息子に金を貸したと、その母親に嘘をついて連絡先を聞き出す男

いつも義母から電話がかかってくるときは、挨拶から始まり世間話をしてから本題に進むのですが、明らかに様子が違います。

続けて義母は、

「夫君の友達という人から電話がかかってきたの。20年前に貸した金のことを思い出して、返してもらいたくて電話したと言ってた。
数十万貸したというんだけど、20年前の話を突然言ってくるのはおかしいし、変な話だと思ったの。夫君の連絡先も知らないというし。
でも夫君の連絡先を教えてくれと凄くしつこくて、教えてしまった。電話がかかってくると思うから夫君に伝えようと思ったんだけど、繋がらないからあなたに電話したの」

と一気に説明しました。

夫の様子を見ると、眉間にしわを寄せながら、スマホの向こうの男性が話すことを聞いています。

夫が話している相手が、義母が番号を教えてしまったその人なのだとすぐにわかりました。

私:「今、夫君はその方と電話してます」
義母:「夫君がお金を借りてるって言うのよ」

義母は興奮気味に、繰り返して言いました。

私:「夫君は人に金を貸すことはあっても、借りることはしないと思いますよ」

夫は若い頃、悪い先輩に騙されて、大きな借金を負ったことがありました。
情にほだされて、親や知人に相談もせず、消費者金融で借りた400万という大金を渡してしまったのです。

先輩に逃げられてショックを受けた夫は、一気に白髪が増えてしまいました。そして後悔をしながら、十年以上の間、付き合った女性達にも友人にも親にも、誰にも言わずに返済を続けることになります。

私と出会い付き合うようになると、数ヶ月でとんとん拍子に結婚の話が進みます。結婚に乗り気だった夫ですが、隠して籍を入れるわけにはいかないと、青白い顔で打ち明けてきました。当時200万の借金が残っていました。私は閉口。

少々悩みましたが、当時私も少なくない額を稼いでいましたし、家計の管理を私に託してくれたので、予定通り入籍。その後二か月で完済しました。

夫はお人好しのアホです。
人に迷惑をかけられることはあっても、迷惑をかけることはまずありません。(私は迷惑を被りましたが、自分で選択したことなので仕方ありません)

戸惑う母親と、金を借りたい男

義母:「もう電話をかけて来ているのね。お金のことだからあなたにも伝えた方がいいと思って」
私:「ありがとうございます。夫君は電話が長引きそうなので、詳細がわかったら連絡しますね」

そう言って電話を切りました。

夫の側に行くと、相手の男性の声が漏れて聴こえました。

全て聴こえたわけではありませんが、男性の声の印象は快活。
とても「金を返してほしくて電話をした」人の声ではありませんでした。

夫は度々「いや」とか「あの、無理だから」と声を挟みましたが、それを遮るように相手男性が話し続けているようです。

私が「大丈夫?」と合図を送ると、夫は青い顔をしながら、「大丈夫」と頷きました。
そして夫が「いやもう貸せないんで。無理です」と言うと、相手男性は突然電話を切りました。

夫は深いため息をつきました。

利用される男の怒り

義母から聞いたことを夫に伝えると、「いや、俺金なんて借りてねーし」と少々苛つき始めました。

「俺は金は一回も借りていない。むしろ数十万をAとBに貸してたんだ。何でそんな嘘を実家に言うんだ」

夫は怒りを募らせました。

「俺は金を借りてないから、Aは当然、電話でも金を返せなんて言わなかった。Bが死んだから金を貸してくれの一点張り。それも一万とか二万とか少額。Bが死んだっていうのも嘘だと思うし、本当に死んでたとしても、なんで金を貸すことになるのかわからない。そこを突っ込んだら、Bが入院してた病院代を払うとかなんとか。何で血縁でもないAが払うのか意味が分からない。全部嘘だと思う」

夫も私も酔いがさめてしまいました。
夫の顔色は悪くなったままです。

「断ろうとすると、昔話を始めたり世間話をし出して、電話を切られないように引き延ばしてくる。意味が分からない。少額でも一度貸したら何度もせびられるのはわかってる。うんざりしながら話を聞いて、最後に改めて断ったら、電話を切られた」

夫の表情には、憎しみにも悲しみにも感じられるものが見えました。

嘘をついて電話番号を聞き出した男の窮地

夫が電話を出た時、その声ですぐに誰かわかったと言います。
相手の男性は、25年ほど前に夫がパチンコ店員をしていた時の先輩、Aでした。

Aと、Aに似たタイプの男性Bは、夫が勤めていたパチンコ店を仕切る業務をしていました。
オープニングスタッフとして多くの未経験者が集められた店舗だったため、運営の質はあまりよくなかったとか。

AとBはやんちゃなタイプでした。夫はどちらかと言うといじられキャラです。
可愛がられたと言えば聞こえがいいのですが、AとBに利用されることが多々ありました。

夫はAとBに誘われるがまま、プライベートでも行動を共にするようになります。
しかしパチンコを打ちに行けば金を出すのは夫。飲みに行っても夫が奢ることが多々ありました。夫は当時10代後半。AとBは20代前半でした。

いつも彼らは「返すから貸して」と言うのですが、一度も返ってきたことはありませんでした。

またAとBが夫を連れて、横浜から都内まで車を走らせることがありました。
AとBの指示通り、ある場所で車のウインドウを開けて金を差し出すと、見知らぬ男が金と交換で紙袋を渡してきます。

受け取り役を夫がさせられることが、何度かありました。

AとBがシンナーを吸っていたのは知っていました。紙袋の中身はシンナーだと聞いていましたが、シンナーであれば横浜でも容易に手に入ります。ではその袋の中身は何なのか。

その他、AとBの他者に対する破滅的な言動にも「おかしい。関わってはいけない」と嫌気がさしていた夫は、早々にその店舗を辞めて関係を断っていました。

短い付き合いだったにも関わらず、その後も数年ごとにAから実家に電話がかかってきました。

AとBと付き合いがあった当時は、まだ携帯電話が普及する前でした。PHSという通話をするための電話は持っていましたが、携帯電話に乗り換える際に番号が変わるのが普通でした。

夫のPHSに電話が繋がらなくなったため、Aは電話帳を使って実家の番号を調べて電話をしてきたのでしょう。
(当時はNTTが配布している電話帳に、個人宅の番号を載せるのが一般的でした)

夫は実家を出ていましたので、義母は電話をもらうたびに「Aさんから電話がかかってきたわよ」と夫に伝えました。
義母はAやBの素行の悪さを知らなかったのです。

当時Aは「友達だから連絡が取りたい」「知らせたいことがある」「懐かしい話がしたい」等の理由を、義母に伝えていたようです。夫は十中八九良い話ではないと分かっていましたので、かけなおすことはありませんでした。

夫が取り合わなかったために、夫が30歳を過ぎるころには電話がかかってくる頻度がかなり減っていました。
その後、夫は私と出会って結婚します。結婚して12年以上が経ちますが、その間に一度は電話がかかって来ていたようですが、夫はやはりかけなおしませんでした。

AとBと関わりを断ってから25年が経った今。

Aは義母に「夫君に金を貸している」と嘘をついて無理矢理電話番号を聞き出し、即、夫に電話をかけて「Bが亡くなったから、金を貸してくれ」と告げてきたことになります。

Aは何らかの理由で、誰かから金を借りる必要がありました。それでまた夫の存在を思い出したのでしょう。

恐らくは消費者金融でも借りられない状況なのだと思われます。

夫からAとの関係を聞き終えたところで、夫のスマホに義母から着信がありました。

金を借りた事実はなく、貸したことしかないこと。
今回の電話も、金を借りたいという話しだったこと。
質が悪い人なので今後取り合わないようにと、夫が義母に伝えました。

私からは「夫君の現住所を知ったら必ず来るだろうから、住所を聞かれることがあっても絶対に言わないでください」とお願いしました。

Aがどれだけ追い詰められているかわかりませんが、わが家にはまだ幼い子どもたちがいます。
おかしなことに巻き込まれたら、たまったものではありません。

夫はAとBに都合よく使われていた当時の記憶が蘇ったようで、怒りとモヤモヤを引きずり、落ち込みました。

着信拒否と親への迷惑

着信拒否設定をした方が良いのではないかと言いましたが、「俺が着信拒否をしたら、また実家にかけるかもしれない。親に心配かけさせたくない」と夫に拒まれました。

夫はふつふつと怒りを膨らませて、ついに「(Aは)俺をバカにしすぎだろ!」と怒りだしました。

夫がAとBと付き合いがあったのは、高校を卒業して専門学校に入り直す前の、二十歳前くらいの頃です。

AもBも40代後半になっているはずです。
こんな年になって何をしているのかと呆れました。

「まだこんなことしてるのか、あいつ。いい加減にしてくれよ。俺は関係ないのに。幸せに暮らしてるのに、巻き込むな」

夫はブツブツと呟きました。

たかられた男の「負」の吸引力

それから一時間ほど経って、またAから電話がかかってきました。
夫はスマホを前に固まっています。

「そういう奴は、こう言えば金を出すかもしれないと浅知恵を働かせて、何度も電話をかけてくるよ」と私が言いました。

「電話に出るの?」と聞くと、固まったままの夫は何も言いません。
「出る必要ないよ」そう言って私は夫のスマホを受け取り、着信を切りました。

「やっぱり着信拒否した方がいいんじゃない? 出ないなら着信拒否するのと同じようなものだし、着信がある度に夫君が落ち込むでしょ」

夫は「うーん」と悩んでいます。

夫の父親は社会的な地位がある人です。
実家は一般的な戸建て住宅ですがAもBも夫の実家を知っているので、絶好の金蔓だと思われていたのかもしれません。

その実、夫は父親の地位や自分の身体(結婚後に発覚しますが、先天性の難病を患っています)にコンプレックスを抱いていたので、自分で稼ぐ金が自分の価値だと感じていました。学費や特別な機会以外に、実家から援助を受けたことはありませんでした。

若い頃の夫の話しを聞く限り、周囲にはあまり良い人がいなかったようです。

夫は悩んだり落ち込んだりすると、殻に閉じこもってそれを膨らませてしまう癖があります。
それには、夫の持病が影響していると、私は考えています。

夫は非常に珍しい難病で、夫が幼い頃には医師にもほとんど知られていませんでした。生活に支障がでていたため、都内の大学病院を回りましたが、診断に行きつきませんでした。

目に見える症状が多々あることから、周囲にからかわれることが多々ありました。

夫は小学校高学年の時にコンプレックスに苛まれて、義母(夫の母)に「なんで俺の体はこんななんだ」と言ったことがありました。義母は「そんなことを言わないで」と泣きました。以来夫は、思ったことを言うと人を傷つけると思い、溜め込むようになります。

それは十代二十代と続き、私と出会う三十代前半まで続いていました。

溜まった鬱憤が「負」を呼んで、悪い友達を引き付けてしまったのではないかと想像しています。

AとBから早々に離れた夫ですが、その後、昔からよくしてくれた近所の先輩に騙されて、前述した400万円の借金を負い、一人で返済を続けることになりました。

……バカですね。

でも頼ってくれたのが嬉しかったのだとか。

過去との決別と成長しない人間の虚しさ・惨めな人生に誰がした?

夫はAから電話があったその日、落ち込んだまま就寝しました。

翌朝9時前に、なんとまたAから電話がかかってきました。

夫が「うわっ」と幽霊でも見たように驚いたので、私がスマホを奪って着信を切りました。

「Aはいい歳をして嘘をついて人から金をもらう事しか考えない。あなたとは違う人間だ。あなたには私や子どもたちがいる。こんな奴に振り回される必要はない。私が何度でも切ってやる」と言いました。

夫は一呼吸置いて、「着信がある度に過去を思い出して嫌だ。もう振り回されたくない。着信拒否をする」と言いました。

その場で着信拒否をしてからは、例えば違う番号を使うなどして電話がかかってきたことはありません。
夫の実家からも、連絡はありません。

二度と関わってほしくありません。

金をせびる男が育った環境

私はしょうもない人生を送っているだろうAの、生い立ちが知りたくなりました。

夫にAの生い立ちを聞いたことがあるかと聞くと、Aは父親と二人暮らしで、父親はAに関心がなく関係が希薄だったことしかわからないと言いました。Bは母子家庭で、貧乏な生活だったらしい話しを聞いたことがあるとか。

片親でも貧乏でも、真っ直ぐに育つ子は大勢います。
本人の性質と、親の関わり方にもよるでしょう。

この情報だけでは、Aがどうして40代後半になってもこんなことをしているのか、わかりませんでした。

育った環境と人生

Aがまた連絡をしてくることがあったら私が生い立ちを聞き出したいと思いましたが、下手に関わると危険でもあるので、少々悩むところです。

生い立ちは人生に大きな影響を及ぼします。

私が関わった方達の話を記事にしています。

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……いえ、それでも肩入れはできません。

同情とは、自分に迷惑が掛からないと分かっている時のみ、感じられる情です。

私はAに同情できません。
今後一切、夫に関わってほしくありません。

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