服のセンスがない彼氏に嫌悪感・別れて正解だと思った話

洋服のセンスがない彼氏を愛せますか?

「洋服のセンスがない彼氏でも関係ない! 私がコーディネートできればいいんだもん。見た目より中身だよね」と思われる方もいるでしょう。

もしその彼氏が、なぜだか頑なに用意した服を着てくれなかったら?
母親が用意した服以外を受け付けなかったら、どうでしょう。

これは私の実体験です。

洋服のセンスがない彼氏を愛せますか

私が大学生だった頃の話です。

大学に通いながら、アルバイトで生活費や教材費を稼ぎつつ、一人暮らしをしていました。

大学に入りすぐに彼氏ができましたが、うまくいかなくなり別れます。
日々忙しく過ごしていたものの、精神的にはぽっかりと穴が開いた状態でした。

そんな時、アルバイト先で出会った同じ大学の先輩に気に入られて、猛アタックを受けることになりました。

アルバイト先のユニフォームはスーツでした。スーツで出勤し、そのまま帰宅するので、互いに私服姿を見たことがありません。
彼はしゅっとした体形とはっきりとした目鼻立ちで、周囲に「王子」と呼ばれていました。(以降、彼の仮の名前を王子とします)

私は王子に全く興味がありませんでした。
彼は統括補佐的なポジションにいて、目立つ人でした。

私は王子と事務的な話をすることがありましたが、私的な話をしたいとは思いませんでした。

なぜなら彼の笑い方に、嫌悪感を抱いたことがあったからです。
彼は「ぐふふ」と笑う癖がありました。

私が事務的な対応しかしないにも関わらず、王子はなぜか私を気に入りました。アルバイト仲間でアドレスを交換したのをきっかけに、毎日のようにメール(ガラケー時代)を送って来るようになります。

初めは挨拶や業務報告のような内容でしたので、常識的なお付き合いとして、当たり障りのない返信をしていました。そのうち、大学での話題を振られるようになります。

返信する必要があるのだろうかと疑問に思いました。

私は苦学生でしたので、王子と同じアルバイトの他に深夜のビジネスホテルのフロントバイトもしていました。寝不足で講義を受けることが多く、課題が多い専攻だったこともあって実際忙しかったので、返信しない日が増えて行きました。

王子と私は大学の側で一人暮らしをしていたので、それぞれの部屋は自転車で5分もかからない距離にありました。
そのため、アルバイトが終わる時間が被ると、同じ電車に乗って帰ることになりました。

王子と私を含めた数人が同じ方向の電車に乗るのが常でしたが、王子は私にやたらと近づいてきます。

「ロックオンされている」と気づいた私は、彼氏と別れたばかりで誰とも付き合う気がないことや、毎日忙しいこと、他に気になる人はいないことを会話に織り交ぜました。

王子はたまに「ぐふふ」と笑いながら私の話しを聞き、相変わらず毎日メールを送ってきました。そして対面ではっきりと「好きです。付き合ってください」と言われてしまいました。

あれだけ興味がないことを匂わせたのに、告白してくるなんて厄介な人だと思い、「王子さんを好きではないので付き合えない」とその場で断りました。

私は好意のない相手に好かれることが好きではありません。そのため、しっかりと断りました。
……が、王子はそれからも毎日メールを送ってきました。

内容は友達として仲良くしたいとか、どこの店の何が美味しいとか、何気ない内容でした。

バイト先の先輩でもありますし、完全に無視するのはよくないと思い、返信をしたりしなかったリを続けていたところ、大学構内で会う機会がありました。

初めて王子の私服を見ました。
その時はジーンズにスニーカー、チェックのシャツという、センスはないけれど特別おかしくはない服装でした。

会ったのが偶然なのか、待ち伏せされていたのかわかりませんが、それから構内でちょくちょく会う機会が増えて行きました。

すると徐々に彼の私服センスが明らかになっていきます。

まるで小学生か? と思う服やシャツのチョイス。酷いときは可愛らしい熊のキャラクターが描かれたトップスでした。
なぜそのトップスを、その組み合わせで着ようと思ったのかと、疑問に思うケースばかりです。

スニーカーもやはり小学生かのようなカラーや柄。それを逆手にとった個性派ファッションをするわけでもありません。
同じ値段を出すならもっと選びようがあるのでは? と、ドン引きしました。

極めつけは、ナップサックです。

彼は大学の講義に必要な教材を、ナップサックに入れて背負ってきていました。
小学生の家庭科の授業で、ミシンで作るようなナップサックです。

「小学生を思い出すね」と、思ったことが口をついて出てしまいました。すると、「そうそう。小学校で作ったやつ」と言います。

え。何年持ってるの? とこれ以上引きようがないほどドン引きしていると、「小学校で作ったやつをずっと使ってたんだけど、ボロボロになっちゃったから、買い直したんだ」と聞いて、引きすぎて地中に足が埋まるかと思いました。

なぜそこでナップサックを買い直すのか。
リュックを買ったらいいのでは? そもそもナップサックは重い物を入れるに適しておらず、肩に食い込むだろうに……、と理解不能に陥りました。

「リュックを買えば?」と言うと、「ナップサックあるから。ぐふふ」と笑いました。

こいつはダメだ。
どうしても受け入れがたい。好きになれる要素が丸でない。なぜ私は昔から変な奴に好かれるのだ、と自分にもドン引きしました。

人生の汚点・センスがない男と付き合う

これだけドン引きしまくっていたというのに、私は王子と付き合うことになります。

それは彼が相変わらず毎日メールを送ってきたことにありました。

私は不仲な両親の元に育ち、母親は私を精神的なサンドバックにしていました。
家に居続けたらおかしくなってしまうと思い、遠方の大学を選んで進学していました。

一人暮らしを始めてからは母親と距離ができて、自由を感じられました。しかし、実家で溜め込んできたストレスや親への疑問が、一気に吹き出てきました。

前述したように、入学して間もなく同じ専攻の男性に好かれて付き合いますが、互いに精神的に不安定でしたし、私は愛情を示すことができず、フラれてしまいます。

彼氏のことは好きでしたので、身近に元カレがいる環境はあまりいいものではありませんでした。

そんな中、王子は毎日私にメールを送ってきました。
好きではなかったし、今後も好きになれそうになかったので、告白をされるたびにはっきりと断りました。
3回か4回目に告白をされた時はうんざりしていて、「あなたを男として見られない」とまで言いました。

こっ酷く振ったにも関わらず、毎日のメールは欠かさず送られてきました。

しかしある日、メールが来ない日がありました。

ついに諦めたかと思っていたら、翌日再開します。
そして暫くするとまた来なくなり、翌日再開することがありました。

その時私は、元カレに誘われるがままの、都合のいい状態から脱却したころでした。

関連記事

遊郭に辿り着く前の長い経緯確か7月かそこらの、ある日の昼間。その日は前日から打って変わって、ぐっと暑くなった。ある女性が体調を崩した。外出ができず食事の用意ができないと聞いて、自宅で作った何食分かの食事を持って彼女の[…]

寂しさに負けて、王子に返信をすることが増えていた頃です。メールが来なくなると、益々寂しく感じました。

「暇な時に限って、毎日来ていたメールが来なくなる。王子がしたいことがわからない」と友人に話したら、「そんなに気になるの? 好きなんじゃない?」と茶化すように言われました。

え!?
……そうか。そうなのかも。

私はまんまと、「私も王子が好きなのかもしれない」と思ってしまいました。
ああ、過去の私に言いたい。

それは勘違いだ!! と。

母親が買った服が一番

王子と付き合いだすと、とても尽くしてくれました。
私の帰りの時間に合わせて菓子や料理を作ってくれたり、送ってくれたり迎えに来てくれるなどです。

菓子や料理はいつも何かが足りていませんでしたが、作ってくれるだけでありがたいと思いました。
驕られるのが好きではないので基本割り勘にしていましたが、支払いをしようとしてくれることもよくありました。

私が誰かと飲みに行ったり友人宅に外泊しても、文句を言いません。同じ専攻の元カレには度々苦言を呈されていたので、楽でした。

グループ課題で場所が必要になった時には、広めだった王子の部屋を貸してくれました。仲間(男性含む)と共に課題に取り組む間、食事を用意して、当たり前のように片づけをしてくれるなどしていました。

ほんとうは嫌ではないかと気になり、何度も聞くなどしましたが、むしろ嬉しいと言って「ぐふふ」と笑いました。求めてもいないのに、私を生活の中心とすることに喜んでいたのです。

とても安心感をくれる人でした。
付き合ってよかったのかもしれない、きっといずれ好きになれると思いました。

しかし、どうしても服装が好きになれませんでした。
見た目など関係ないと頭ではわかっていても、服の組み合わせと着方、ナップサックがどう頑張っても受け入れられません。

「ナップサックはやめたら?」と言ってみました。すると「軽くていいよ。使えるのに新しいのを買うのはもったいない」と言います。

「私の好みじゃないの。プレゼントするからリュックにしてほしい」とお願いしたところ、リュックを持っていると告白されます。リュックサックを持っているのに、ナップサックをわざわざ購入して使っていたのです。

王子の部屋に行き、持っている服や鞄、靴を見せてもらいました。

確かにリュックがありました。
ごく普通の、グレーに青が入ったカラーのリュックです。ナップサックよりはずっと使いやすく、20歳の男性が持つのにまともなデザインだと感じました。

中学生だか高校生の時に通学に使っていたそうです。
これを持っていたのに、なぜわざわざナップサックを買い直したのかわかりません。理由を聞くと、中学や高校でも通学時以外はナップサックを使っており、使い慣れているからという事でした。

通学で使っていたのなら、リュックも使い慣れているでしょうに……。

食い違う会話

酷いと思われるかもしれませんが、「ナップサックを背負うなら一緒に歩きたくない」とまで言い、王子はしぶしぶリュックを背負うようになりました。

ナップサックのインパクトが強くて霞んでいましたが、次は服装が気になりました。

せめて服の組み合わせを変えたらマシになるかもしれないと、「この組み合わせで着たら?」と提案をしても、頑なに受け入れてくれません。どうして嫌なのかを聞くと、「これまで着たことがない組み合わせだから」でした。奇抜な組み合わせでもないのに、なぜ嫌なのかがわかりませんでした。

ナップサックからリュックサックに替えた時のように、提案を受け入れられないのなら別れると言えばよかったのでしょうが、「別れ」を引き合いに出す付き合いは続かないと思いましたし、王子に失礼だとも思いましたので、以降そのような言い方はしませんでした。

持っている服はどれも小学生や中学生が着るようなデザインに見えました。どこで服を買ってるのかと聞くと、「お母さんが買ってくれるんだよね」と言います。

長期休みに帰省する度に、母親が買っておいた服を渡してくれるのだそうです。数年一人暮らしをしているのだから自分で買ったらどうかといいましたが、「昔からお母さんが買ってくれるから、それで事足りている。ぐふふ」と笑われて終わりました。

こだわりがないのに変わりたくない背景に母親

ある長期休み中。
王子の実家に招かれました。

王子は裕福な家庭で育ちました。
父親は誰もが知る大手企業の役職者でした。

実家は広く、ところどころに生花が飾られていました。
リビングにはグランドピアノがあります。

父親は柔らかい雰囲気で、チノパンにポロシャツといった普通の服装。
母親は美人で人当たりの良い印象でしたが、服装の組み合わせは上下が合わないように感じられました。

しかし服装の好みというのは人それぞれです。
私だってセンスがいいわけではありません。

彼氏の実家で緊張していた事もあり、それほど服装を気にすることなく談笑に加わりました。

途中、王子が私の手を引いて、「家の中を案内する」と言いました。
実家で手を繋ぐのはどうなのだろう? と思った瞬間、母親がすかさず手刀で私と王子の繋いだ手を切りました。

母親の動きの速さと、手刀で繋いだ手を切られるという初めての経験に、私はとても驚きました。

咄嗟に母親は、「あ、ごめんなさい。つい反射的に」と笑って言い訳を言いました。
「もう、お母さんたら。ぐふふ」と王子が笑い、また私の手を取ってリビングを出ました。

王子に「目の前で手を繋がれるのが嫌なんだと思うよ。大好きな息子が彼女と手を繋ぐと、取られたようで悲しいのかもしれない」と言うと、「大丈夫だよ。ぐふふ」と笑い、手を繋がれたままで家を案内されました。

王子とは“会話が成り立たない”と感じることがよくありました。
私の言葉の意味を理解していないように感じられたのです。しかし王子は理解したつもりでいるのが厄介でした。

この時も、母親がなぜ手刀を繰り出したのかを考えて配慮したい私の言葉を「大丈夫」の一言で退けて、自分がやりたいように行動しているのが気になりました。

リビングに戻ると、外出していた王子の姉が帰宅したところでした。

スタイルの良い美人の姉は、女子アナが好みそうな、シルクのようなしなやかな白のシャツをトップスに着て、原色使いの花が全面に描かれた、モンペのような、ゆとりがあり足首だけが窄められたボトムスを履いていました。

私には理解できない組み合わせでした。

挨拶を済ませると、姉は母親に「これ楽だね」とボトムスを褒めました。母親は満足そうに「そうでしょ。せっかく買って来たんだから、たくさん履いてね。くふふ」と笑いました。

別れて正解だと思った話

どうしても受け入れられないことはあるのだと感じました。

王子は服装に興味がないと言いながら、私がプレゼントした服を中々着ようとしなかった(非常にシンプルなTシャツ等です)り、私が何かを求めても、なぜか受け入れられないという事が続きました。

例えば食事後の皿を水に浸けておいて欲しいとか、食事で使用した箸をテーブルに置きっぱなしにして次の食事でまた使うことはしないでほしいとか、基本的な細かいことです。

私の自転車を貸した時には、なぜか私のロープチェーンを使わず、王子は自宅から持ち出した自分のロープチェーンで鍵をかけました。私には報告をせず、鍵も王子が持ったままでした。そして私が使っているロープチェーンの鍵だけを返却されました。

そのため次に自転車を使う際に、初めて王子のロープチェーンがかけられていることを知りました。自転車が使えず困り、同時になぜこんなことをするのかと理解に苦しみました。

あらゆる場面で「理解できない」事態に陥りました。

なぜこんなことをしたのかを聞いても、判然としません。聞き込むと「もういいじゃない」とか「まあまあ、大丈夫。ぐふふ」と答えにならない答えと笑顔が返って来るだけでした。

次第に王子と居ると、イライラばかりが募るようになりました。王子と一緒にいる時の私は大半が怒りで満ちるようになってしまいました。そんな自分が嫌いでした。

私は王子を好きになることがないまま、別れました。イライラすることがなくなって楽になりました。
付き合いを続けていても心が交わることはなかったでしょうし、王子の母親に気に入られる未来もなかったでしょう。

人には相性があり、時にそれが生理的な嫌悪になって現れるのだと思いました。

王子は私と別れても、相変わらず定期的にメールを送ってきました。

「復縁は諦めた。友達として宜しく」と言われていた時期に、友人を含めて同居(シェアリング)したことがありましたが、やはり嫌悪感を抱く結果になりました。

関連記事

私が一時期シェアハウスで同居していた男性、佐々野(仮名)の話です。人生でナンバー3に入るドン引き話しの一つをお知らせします。鳩をビービー弾で撃つ男シェアハウスの換気扇に鳩が巣を作る都内の3LDKのマンションを借り、3人で[…]

同居を解消して、私が結婚をしてもメールを送ってきました。
着信拒否にしても別のアドレスに違うアカウントから送って来るので、受信だけして無視するようになります。

私が夫と離婚をするべきか悩んだ時に、男性としての意見が欲しくて連絡を返してしまったことがありました。
離婚を強く勧められて、俺と一緒になろうと言われました。

よくよく聞くと、王子も結婚をしていました。しかし別居中だと言います。
さらに詳しく聞くと、実は出産のために妻が里帰りしていることを“別居”と言っていたことがわかりました。

妻の立場で想像すると、王子に猛烈に腹が立ちました。
別れて正解だと思いました。

どういうつもりかと詰め寄ると、王子は妻とずっと上手くいっていないと話しました。具体的な話を聞くと、私が王子と付き合っていた時に感じた「受け入れられない」不満が、妻に溜まっている様子がありありと浮かんできました。

別れて正解だと、再確認をしました。

あくまで私の想像ではありましたが、妻が抱いているだろう不満を責めるように説明して、連絡を終えました。(私から相談しておきながら酷いですね。しかし我慢なりませんでした)

センスは生き方に通じる

私の夫の服のセンスは、よくも悪くもない、普通の印象でした。

夫は王子同様に、服へのこだわりがありませんでした。そのため、ブランドやメーカーの服ばかりを選んでいたと言います。高い服を着ておけば、お洒落になれると思っていたのだとか。

私は人の服に口を出せるほど、センスがいい人間ではありません。大学時代までは金銭的な余裕がなくて、服は量り売りの古着屋で安く調達し、化粧もほとんどしていませんでした。芋っぽさ全開です。

夫の服装に口を出したことはなかったのですが、夫はいつからか、流行に左右されず好きな服を着ている私のセンスが好きだと言い、服を選んでほしいと頼んでくるようになりました。ブランド物でなくても、組み合わせ次第で“いい”と思える服装ができるからと。

私と夫が上手くいっているのは、夫が私の趣向を受け入れる柔軟性があるからだと思います。尊重してくれるので、夫の趣向も尊重したいと思えます。

受け入れる姿勢があるかどうかが、深い関係を築いていけるかどうかに影響するのではないでしょうか。

服装の好みの違いで別れることは酷いように見えますが、人としての関わり方が服装に出てくることもある、と感じた一件でした。

関連記事

夫に否定ばかりされて、うんざりする妻の話をよく聞きます。現在は良好な関係を築いている私の夫も、かつて否定的な発言ばかりを繰り返したことがありました。なぜ否定的な発言を繰り返すのかについて、検証します。妻の言動を否定し続け[…]

関連記事

結婚相談所で出会い、結婚。出産して、離婚したある女性がいます。不満を夫にぶつけることができず、一人溜め込んだ結婚生活は破綻しました。本音をぶつける生活は、夫婦のパワーバランスが偏る原因となります。しかし本音を言わない生活[…]

関連記事

夫の不倫が発覚し、苦しんでいる友人がいます。発覚したとわかると、夫はあっさり不倫相手との関係を解消しました。再構築するために、どんなことでも耐えると夫は言いますが、妻は苦しみ続けています。どんなことでも耐えられるなら、ど[…]

最新情報をチェックしよう!