厳しい親の言いつけを守る「いい子」の心に生まれる軋轢

私は三姉妹を育てる母です。

「親」というものは難しいものだと、日々感じています。

子どもがのびのび育つように。
子どもが間違った道に進まないように。

尊重とある程度の束縛を繰り返しながら、子どもに経験をさせて、心を育てていかねばなりません。

時に子どもの評価が親の評価に繋がることから、親は「とにかく子どもに言うことを聞かせなくては」という方向に走ることがあります。

子どもにどこまで厳しく接するべきなのか。

見えないラインを迷うことで、子どもに矛盾を感じさせてしまうことがあります。
迷うくらいならと、全て「ダメ」と決めてしまう親もいます。

私は何をするにも「ダメ」と否定されて育ちました。

そして中学校の時、友人関係を築くのが難しくなりました。
自由が認められないことで心に軋轢が生まれ、鬱憤が仲の良かった友人へ向かってしまったのです。

今、知り合いの子どもに親の言いつけを忠実に守る「いい子」がいます。

その子は年下の学年の特定の子をターゲットに、怒りを集中的にぶつけるようになってしまいました。

親が子どもに与える影響について考えます。

厳しい親の影響力

私は大概のことを「ダメ」と言われて育ちました。

小学校低学年の頃は休日に家にいることが「ダメ」と言われ、当時幼稚園児の弟を連れて外で遊ばなければなりませんでした。

親の理想と子どもの気持ち

毎日風呂に入りたい。
毎日服を洗ってほしいというのも「ダメ」でした。

買い物に行ってお菓子が欲しいと思っても、一切「ダメ」
自宅で出されるおやつは煎餅かトライデントガム、或いはおやつ自体「ダメ」と言われました。

友達が誕生日会に招待してくれても、プレゼント持参が前提の場合は「ダメ」
クリスマスパーティーも同様の理由で「ダメ」

子どもが金を使うものではないという母親の理想から、お小遣いはなし。祖父母からもらったお年玉を使うのも一切「ダメ」でした。

私は友人宅で出されるスナック菓子を食べまくりました。
お菓子がなくなると、もっと出すように求めました。

小学校高学年になるころ引っ越しをすることになり、引っ越し前のお別れ会と称して、友人達が地域にあった温水プールに誘ってくれました(一名保護者監督アリ)。

それまでも何度も誘われていたのですが、母親に全て「ダメ」と言われていて参加できていませんでした。
最後だけは親が許すだろうと、友人達は思ったようでした。

しかし私が母親に話すといつものように「ダメ」と言われました。最後だからとお願いすると酷く怒り出して、その日のおやつも「ダメ」と言われました。

友人達に行けないと話すと「なんで」とせっつかれました。惨めでした。

私を送り出すために計画された温水プールは、私が不在のまま開催されました。

引っ越した先でも「ダメ」は相変わらず続いていて、お小遣いを使えず友達に混ざれないことが増えていきました。
そこで家の貯金箱から100円や500円を盗むようになりました。

見つかって殴られました。

それでも盗んでいないと否定をし続けました。
認めたら、益々縛り付けが厳しくなることがわかっていたからです。

犯人が私でないなら警察を呼んで調べてもらうと言われ、怖くなって盗みをやめました。

友達に混ざれなくなり、当時付き合っていた友達と疎遠になっていきました。

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成長と束縛

中学校に上がると、少ないものの小遣いをもらえるようになりました。
しかし休日に出かけることを「ダメ」と言われるようになります。

休日は家族で過ごすもの。
外出するなんておかしいと言うのです。

しかし弟は外出を認められていて、毎月決まった小遣いをもらった上に、何かあると追加で渡されていました。

理不尽を感じながら、私は母親の言いつけを守りました。

一方的に押し付けられた約束を破ると、母は狂ったように泣いて叫びます。
何時間も私を拘束して、怒号を浴びせ続けるのです。

家では母が求めたタイミングで、母のこだわりに合わせたやり方で家事をしなければなりませんでした。
それ以外は部屋に籠るしかありません。

子どもの逃げ場

私は家に帰りたくなくて、学校帰りに友人の家にお邪魔することが増えていきました。
親同士に面識があり、その子の家であれば怒られずに済みました。

毎日お邪魔するようになると、暗に「今日はちょっと」と断られることが出てきました。

断る友人に、私は怒った態度を見せました。
そうすると「仕方ない」といったように家に入れてくれることがあるからです。

お菓子や飲み物を出してくれ、話し相手がいる友人宅が唯一落ち着ける場所でした。

そうして私は、友人に負担を感じさせていきました。

進学する高校が決まるころ、友人は私を避けるようになりました。
私が気づかないうちに嫌なことを言ってしまったのかもしれないし、進学先が分かれることが決まって、もう私に合わせる必要がないと思ったのかもしれません。

私は高校の美術科に進みました。

絵を描くことが精神的な発散となりました。
友人達も個人主義が多く、人付き合いが楽になりました。

複雑な家庭環境の子もいて、その話を聞くことで「私だけが辛いのではない」と知ることができました。

以降はこの記事に書いています。

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言いつけを守るいい子の心に生まれる軋轢

私は現在、親を反面教師に、子育てに励む毎日を送っています。

どこまで子どもの意思を尊重し、どの程度親として子どもの言動を諫めるべきなのか、悩むことが多いです。

私の答えと、他の家庭の答えは違います。

しかしある家庭の躾が、少々厳しく見えることが気になっていました。

完璧な子育てとは

その家庭のご両親は社交的で、決して変わった人たちではありません。

少しだけ、母親の「こうあるべき」という理想や物言いが強いかなといった程度です。
母親の判断が、家庭内の「絶対」になっているようでした。

小学生高学年になるその家庭の子どもAは、未就学児の頃から母親のいう事をよく聞く子でした。

公園遊びで盛り上がっていても、母親が「帰るよ」と一度言えば、すぐに帰り支度をして母親の元に駆け付けました。
Aは下の兄弟の世話をよくしていました。同時に、叱り方も母親と似ていました。

母親の言い方に似るのは、よくあることです。

わが家の長女は私が公園から帰ろうと声をかけると、「えー」とか「嫌!」「もうちょっと遊びたい」と駄々をこねることが珍しくなかったので、心底「すごいな」と思っていました。

私の躾や物の言い方がなっていないから子どもにゴネられるのだろうと、その親子に感心していたのです。

母親の物言いが一貫していてブレないことが、躾の上で大きいように感じられました。

いい子はどうやって生まれるのか

私の母も判断基準が一貫していて、それが「ダメ」のオンパレードを生み出していました。
私は親に逆らうことが殆どありませんでした。何を言っても無駄ですし、罰を与えられるだけなので、親の前ではずっと「いい子」をしていました。

いい子を演じようとしていたわけではないのですが、結果的にそうなっていたのです。

Aは、母親の前でも友人達の前でも、言いつけを守る「いい子」でした。

今のところ、無理をしている様子はありません。
私のケースとは違い、母親が食べ物や欲しいものなどの面で、子どもの欲求を満たしているからだと思います。

飴と鞭の上手な使い分けなのでしょう。
ブレがちな私からしたら、理想の子育てに見えました。

成長と約束事のバランス

小学校に入学して子どもが親から離れて活動するようになると、どの家庭でも、親子の約束事が増えました。

放課後遊びに行くときは、誰とどこで遊ぶか報告してから出かける。
わが家の場合は17時までに帰宅するように。
17時に帰宅するために、16時50分には公園を出よう。

などです。

家庭によっては、このような約束をしている家庭もありますね。

〇〇の交差点より向こう側に行かない。
友達とお菓子交換をしない。
友達の家には入らない。

約束事として、決して厳しいものではありません。
子どもの安全を願うからこその、提示なのですよね。

ある日、長女が友達数人を連れて「家で遊びたいと」帰ってきました。
その中にAもいたのですが、一向に家に上がろうとしません。

開いた玄関扉から家を覗き、二階に上がっていった子どもたちに「公園で遊ぼうよ」と声をかけていました。

「家に上がらないの?」と聞くと、Aは「友達の家に入っちゃダメってお母さんに言われてる」と答えました。(2019年の話です)

長女がAに、「お母さんに、うちに入ってもいいか電話して聞いてみたら?」と聞きました。
「聞いてもダメだから。外に行こうよ! なんで外じゃダメなの?」とAが言いました。

頑なな親と、言いつけを守る子ども

私はAの母親と家族ぐるみの付き合いがあり、何度か家に来たこともありましたので、私から電話をして家に上がって遊んでもいいか聞いてみることにしました。

しかし答えは、Aが言っていたように頑なに「NO」でした。
理由は、「そういう決めごとにしているから」ということでした。

家庭には家庭の考えがありますし、一度許可を出すと何度も聞かれることになるので、避けたいという思いがあるのかもしれません。

「ママはどのおうちでも絶対にダメって言うから」とAが言いました。
Aだけを帰すわけにいきませんでしたので、子どもたちには公園で遊ぶように言って送り出しました。

いい子のはけ口

時が経ち、子どもたちが高学年の仲間入りをしたころ、ママ友にAについて相談されました。

ママ友の子どもBは小学校低学年です。
わが家と学区が同じで、次女とBは仲が良く、よく一緒に遊んでいます。

そのBが、公園でAと会うたびに怒鳴られていると言うのです。
ママ友は「BはAに目をつけられているようだ」とも話しました。

Aには「いい子」のイメージしかなかったので、驚きました。

Aと仲がいい長女に、AがBを怒鳴る様子を見たことがあるか聞くと、「何度もある」と答えました。

長女が止めに入ったことがあるのだけど、「あっち(B)が悪い!」と頑なで、酷く怒り続けるのだと言います。
これはママ友(Bの母)の話と一致しました。

長女の話によると、Aが怒る理由はBの言動にありました。

Bが遊びの中でズルをしたり、間違いを指摘されてもすぐに謝らないことがありました。
それに腹を立てているのです。

Bの言動は、小学校低学年ではよくあることでした。
Bとわが家の次女は仲が良く、確かにBの言動で小さな喧嘩になることがありました。しかしその日のうちに仲直りして遊ぶのが、普通でした。

そうして子ども同士でやり合って、学んで変わっていくものだと思います。

AがBに怒るのは、正義感が始まりだったようです。
しかし何度言ってもBが繰り返すため、AはBを「嫌い」と言うようになりました。

自分にも他人にも厳しい「いい子」

長女は「Aが怒りすぎだと思う」と私に言いました。

Aは放課後の公園でBを見かけると、行動を観察して何かにつけ厳しく怒るようになりました。

Aは母親に一度言われるだけで、言いつけを守ることができる子です。
そうできないBに苛立ちを感じているように感じられました。

一度言っても聞かないクラスメイトの男子達にも、かなり厳しい言い方をしているというのは以前から聞いていました。そのため煙たがられるようになっているのだとか。(小学生女子が小学生男子を厳しく怒るのは昔からよくあることなので、聞き流していました)

同性の友達とも同様の理由で度々喧嘩をしていましたが、数日後に仲直りするのが普通だったので、これも聞き流していました。

長女は「AはBが嫌いだから、ダメなところを探して怒っているように見える」と私に言いました。
特定の下級生のBを「嫌い」と決めて毎回厳しい言い方をするのは、少し問題がありました。

BはAと会いたくないと言いました。

Bがわが家の次女と遊んでいると、姉妹である長女と一緒に遊ぶ機会が増えます。
すると長女と仲がいいAと会う機会が増え、終始怒鳴られることになるので、次女と遊ぶ回数を減らした方がいいのではないかと言い出すほどでした。

「いい子」は自分にも人にも厳しい傾向があると聞きます。

その典型的なパターンなのか、単に子どもならではの一時的なものなのかはわかりません。

子どもの喧嘩に親が口を出すのはおかしいですが、学年の違いがあり一方的でした。

私からAの母親に話をするべきかと悩みました。
言ったところで以前のように頑なに聞き入れられない可能性や、Aが酷く叱られるのではないかという心配がありました。

長女と次女には、AもBもどちらも特別に悪いわけではない。
ただ、上級生が下級生に毎度強く言うこと、「嫌いだから」という理由で一方的に怒るのはよくないので、そういう場面があったらAを止めるか、引き離すようにしてほしいと話しました。

長女には、AがBに伝えたいことがあるなら、優しい言い方で仲介して欲しいともお願いしました。

子どもたちに負担を与えてしまうのはよくないかもしれませんが、そうして少し様子を見ることにしました。

いい子の未来

今回の一件は誰が悪いとか、そういう問題ではありません。

こういったことの積み重ねが、人付き合いの「相性」に繋がるのでしょうかね。

私は選択の連続である子育てに、常に迷っています。
怒り過ぎてしまうこともあるし、一貫性も足りないです。えらそうなことは全く言えません。

ただ、私の迷いを子どもたちに伝えて度々一緒に考えるようにしているので、「正解は一つではない」ことを子どもたちが学んでいます。

そういった意味では、一貫性が足りない親も悪いことばかりではないのかもしれません。都合よく考えすぎでしょうかね。

子どもたちの未来が明るいものであるよう、願います。

 

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