迷子防止ハーネス否定派に知ってほしい「綺麗ごとだけでは子どもを守れない」現実

近年、子ども用のハーネスを利用する方が増えてきました。

私が第一子を産んで間もない10年前は、販売はされていましたが、利用している方を見ることは滅多にありませんでした。

ハーネスを着けた子どもを見て、私の実母が「犬じゃないんだから」と否定しました。

私の第一子はとても活発な子でした。
人の目を気にして、ハーネスを使わなかったことで、子どもを危険な目に遭わせてしまいました。

その後私は家に引きこもる生活となり、精神的に苦しい時間を過ごすことになります。

ハーネスの見た目から未だに「子どもをペット感覚で扱っているのではないか」と捉えられることがあるようです。
賛否両論あることが悪いわけではありません。

しかし手がかかる子を育てた経験のない方が、実情を知らずに否定することで、やむを得ず利用している親を傷つけることがあります。

・子どもの安全を守るために利用していること。
・躾でどうにもならない性質があること。
・子育てをしている親の状況。

これらについて私の例をお伝えします。

「こんなケースがあるんだな」と思ってもらえると幸いです。

迷子防止ハーネスとは

迷子防止ハーネスとは、子どもと親を繋ぐ紐を指します。

これらの商品の販売が始まった当初、否定的な意見が多く聞かれました。

・子どもの人権を侵害している。
・子どもをペット扱いする親が異常。
・子どもの躾ができていないから、こんなものに頼ることになる。

「綺麗ごとだけでは子どもを守れない」現実

私の実体験です。

子どもをペット扱いする親

私が子ども用ハーネスを見た一番古い記憶は、今から18年ほど前の学生時代に遡ります。

あるステージイベントの運営アルバイトをしていた私は、場内で観客の誘導をしていました。
全身ハードパンクの衣装に身を包んだ夫婦が、やっと腰が据わったくらいの幼児を抱えて来場しました。

ステージが始まり会場が暗くなると、通路に小さい影が見えました。

通路は消防法で空けておかねばならないと決まっています。
非常時にスムーズに非難ができるようにするためです。

また、演出上演者が通路に出てくることもあるので、子どもに気付かずぶつかって怪我をする危険がありました。

影が何かを確認に行くと、それはパンク夫婦が抱えていた幼児でした。
首輪をつけており、綱が繋がっています。

綱は観客席の端に座っていた母親が握っていました。

その子はまだ歩くことができない月齢でしたので、逃走防止用とは考えられませんでした。

恐らくは子どもから目を離しても問題がないように、そばに留まらせておくための目的で使われていました。
まさしく「犬」の扱いであることにショックを受けました。

子ども用の座席を購入していない方でしたので、子どもを抱えて観劇するよう求めると一旦席に戻るのですが、またすぐに通路に降ろして親だけが観劇に夢中になっていました。

そんな一件があったので、「綱を繋げるのは、親の勝手」だと思っていました。

逃走防止用ハーネスの抵抗感

私が子育てを始めた約10年前は、逃走防止用ハーネスが販売され始めた頃でした。

第一子は大きく生まれ、産まれた時から「半分首が据わってる」と助産師に言われるほどしっかりした体つきの子どもでした。

授乳で口を塞いでないと起きている間は泣き続け、泣きつかれて寝たことが一度もありません。
体力があるのは良いのですが、とても手がかかる子どもでした。

一歳で歩きだすとすぐに走るようになりました。
どこかにぶつからないと止まらないほど活発で、しょっちゅう家の建具に激突していました。

買い出しはネットスーパーを主に使っていましたが、ネットで買えないものは実店舗に行かなければなりません。
子どもを連れて歩いてバス停に行き、時間をかけて駅に行って買い物をしました。

当時第一子は手を繋ぐことを嫌がり、歩くことも嫌、抱っこも嫌、おんぶも嫌、ベビーカーも拒否する頑固さで、無理やり抱っこすると抱っこ紐を使っていても頭から落ちそうになるなどして危険でした。

バスでは奇声をあげて途中下車することになり、30分で行ける距離を1時間以上かけて行かなければならないことが当たり前にありました。

行った先では店の床に寝転んで泣きわめき、20分から30分程度かけてなだめてレジに連れて行っても、支払いで財布を触ろうと手を離した瞬間に逃げ去ってしまうので、両足で子どもを挟んで行動を制限しました。

それでも振り払われて逃げられ、店員さんを巻き込んで子どもを探すこともありました。

店を出て、向かいの店舗前に置かれたガチャガチャを覗き込んでいるところを見つけたこともありました。

ハーネスを着けたいと思いましたが、使っている人を見ることはほぼなく、かつて子どもが首輪で繋がれているのを見てドン引きした経験がありましたし、実母が「犬じゃないんだから」と非難したことも思い出されて躊躇しました。

誰に何を言われるかわからない。
今ほど一般的ではなかったこともあり、非難を受けるのが怖くて使えませんでした。

子どもの逃走を恐れて引きこもる親

外出すると周囲に迷惑をかけます。
子どもにも危険が及ぶのが怖いですし、私の心労も酷くて外出をしなくなりました。

家に籠る間、私の話し相手は夜帰宅する夫しかいませんでした。

夫は夜勤があり非常に不規則な仕事をしていましたので、孤独を感じました。

ネットで子育て中の母親たちの愚痴を読み、話が通じない子どもを相手に、落ち込む日々が続きました。
子どもは家の中でエネルギーを発散しきらず、建具や襖、家具を壊し続けて気が狂いそうでした。

子どもを追いかけることの限界

第一子が2歳になったころ、順番で回ってきた自治会の役員を担当することになりました。

同時に第二子の妊娠がわかります。

会議は夫に出てもらい、昼間の活動は私が子連れでこなすしかありませんでした。
自治会の仕事は数種類ありました。

同じ自治会の方達が子どもの相手をしながら進めてくれることもあり、助けてもらいました。

しかし完全に個別で進めなければならない仕事がありました。

日付と時間を指定され、駅前である配布物を配る仕事がありました。

私は大きなお腹で一子を連れてバスと電車を乗り継ぎ、指定の駅に向かいました。

その日は雨が降っていて、傘を差しながら子どもの手を繋ぎ、道行く方達に配布物を配らなけらばなりませんでした。
子ども用の荷物を背負い、たくさんの配布物が入った袋から、都度配布物を取り出すことさえ難儀しました。

一子は最初こそ手を繋いでくれましたが、次第に飽き始め、手を振りほどきたがりました。

雨がやみ、傘を畳むことができましたが、それでも荷物一杯の中配布物を配りながら嫌がる子どもの手を握り続けるのは、限界がありました。

ある瞬間手を振り払われ、一子が車道に向かって走り出しました。

駅前ですのでバスもタクシーも一般車も多数走っています。

恐ろしくなり、大きなお腹を抱えて走って追いかけました。

同じように自治会の方達が近くにいましたが、誰も咄嗟に動けませんでした。
それだけ子どもの突発的な行動は素早いのです。

塗れた地面に滑り、私は転びました。
その時、何かが股から出て濡れました。

マズイと思いましたが、それよりも一子を止める方が重要だと思い、痛むお腹を抱えてすぐに起きて追いかけました。

たまたま子どもが途中で足を止めたので、腕を掴んで捕まえることができました。

ボロボロになったまま、私は残りの配布物を周囲にいた人に配り、自治会メンバーの元に戻りました。

冬だったので上着で隠れて周囲には気づかれませんでしたが、服の中は股から出た液体で塗れていました。

配布が終わったので帰らせてほしいと頼み、タクシーを拾って自宅に帰りました。
電車やバスを使って帰宅することなど到底できないほど、心身ともにダメージを受けていました。

帰宅後、病院に連絡して診察を受けました。

結果的に破水ではなく、転んだ衝撃による尿漏れだったので(お腹が大きくなると起こりやすくなります)事なきを得ました。

迷子防止ハーネス否定派に知ってほしい事実

あんなに怖い体験を、他の誰にも味わってほしくないです。

周囲に何て言われるかなんて保身を考えず、ハーネスを使うべきでした。

子どもが手を振り払う速さを
走り去る速さを

経験したことがない人はわからないでしょう。

「躾ができていないからだ」と簡単に片づけてしまう人は多いです。

私自身、一子の活発さが制御できないのは、躾ができていないせいかもしれないと思っていました。

実母には厳しく叱るべきだと言われました。
しかし厳しく叱ると、厳しすぎだと注意されました。

優しく言っても厳しく言っても通じず、悩みました。

一子は私の言葉を理解していました。
分かっていて、あえて無視しているのだと肌で感じていました。

子どもの行動は親の責任。
親は言葉で言い聞かせるものと理想論ばかり並べられ、どうしたらいいのかわかりませんでした。

子どもの性質の違い

子どもには生まれもった性質があります。

第一子は女の子です。
男の子は大変だけど、女の子は楽でいいわよねと知らない高齢女性や周囲に度々言われました。

男の子が活発なのは仕方ないけれど、女の子は言ったらわかるはずだと世間に責められているような気持になりました。

その後第二子、三子を産んでわかったのは、

子どもの性質は生まれながらに決まっている。

という事でした。

産まれた時から、泣き方や癇癪の起こし方。
活発具合が丸で違いました。

同じ遺伝子から産まれて来て、顔がどれだけ似ていても、これだけ性格の違いがあるのかと感心しました。

第二子と三子は時々駄々をこねて手を振り払うことはありますが、親から逃げるように知らない場所に走り去ることはしません。

私は第一子のような活発で激しい子を育てていなければ、ハーネスの必要性がわからなかったでしょう。

第一子はその後も酷い癇癪が続いてご近所に心配されたり、5歳まで後追いが酷かったとか、小学校に上がっても夜驚症や兄弟に対する突発的な暴力がありましたので、発達障がいを疑って、通っていた幼稚園や医師に相談したことがありました。

しかし状況から「性格だろう」と言われました。

第一子が「活発な性格」というだけでこれだけ苦労したのだから、多動がある子どもを育てる親はどれだけ気を揉んでいるでしょうか。

子どもの命を守り、周囲に迷惑をかけないためにハーネスを使うのです。

迷子防止ハーネスの必要性

一子が産まれたばかりで歩きだす前はハーネスを「犬みたい」と言っていた母ですが、母と父に当時二歳だった一子を一時間ほど見てもらった時に「この子は大変な子だ」とわかったようです。

母は「一子はハーネスを着けた方がいい子どもだったね。その方が安全だから」と話しました。

私は使わずに終わってしまいましたが、ハーネスの意義を理解してくれたことが嬉しかったです。

同じ立場に立ったことがない方は、どうしても想像ができないのかもしれません。
かつての私の母のように、子育て経験者であっても、必要を感じなかった方はわからないと思います。

ですが必要な子ども、必要な環境があるのです。

「そういうケースもあるのだな」と、ご理解いただけると嬉しいです。

 

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