園に手作り菓子を求める親・子どもの食育のこだわり、本当に子どものためですか

私は幼い頃、「市販の菓子は体に良くない」という理由から、与えられずに育ちました。
ジュースやファストフード、外食も同様に、親から与えられることはほぼありませんでした。

友達の家でスナック菓子を出されると貪るように食べ、もっと欲しいとねだりました。

実家を出て一人暮らしを始めると、菓子やコンビニ弁当やファストフードを食べまくり、10kg以上体重が増えました。
体が重くなっても食べることをやめられませんでした。それほど美味しくて仕方なかったのです。食欲が治まるまで三年近くの月日が必要でした。

幼稚園関係者の話を聞く機会がありました。

見学に訪れる未就園児を抱える母親の中には、一年に一人~二人程度、「これまで市販の菓子や食べ物を与えたことがない。今後も与えたくないので園の行事で出す菓子を手作りの物に変えてほしい」と必死に願い出る方がいるのだそうです。他の園にも断られ、頼みの綱だと訴えるのだとか。

市販の菓子であっても親しみ学ぶことがあると考え、手作り品には衛生面の配慮やコストも生じることから応じられないと返事をすると、他の園を当たるといって去るのだそうです。

母親の行動は、子どもの体を思ってのことなのでしょう。
しかし制約を受けて育った私の経験に照らし合わせると、「子どものためになるのだろうか」と疑問です。

なぜ極端に市販品を避けようとするのかについて考察しました。

子どもの食生活ー母親の環境

手作り品にこだわる母親は、自身も市販品を食べずに育ったのでしょうか。

全て手作りの食事で育つ方も、世の中にはいるのでしょう。
しかし現代においてその割合は、非常に低いのではないでしょうか。

正式な統計はありませんのであくまで想像ですが、よほど自然豊かな土地で育つかアレルギーなどがない限り、何かしらの市販品を口にしていると想像します。

ではなぜ子どもに市販品を与えることを極端に避けるのでしょうか。
母親をとりまく環境から考えます。

妊娠

妊娠をすると母親は、多くの制約の中で生活をすることになります。

お酒やたばこはもちろん、カフェインや生魚、生卵、生肉、ナチュラルチーズ、うなぎや焼き魚でも避けるべきとされる種類があり、「子どもを思うなら守るべき事項」として突きつけられることになります。

社会から「母親なのだから我慢して当たり前。母親らしい行動をして当たり前。それがいい母親」という見えない圧力を与えられるようになり、多くの母親が、それに則ります。
子どもを守りたいという本能があるからです。

産後授乳期

産後は母乳に影響するとして、妊娠中に避けるべき食材に加え、甘いものや揚げ物、スパイスの入った食事などを避けるよう求められることがあります。
授乳中の禁止食材は科学的根拠がないものが多くあるにも関わらず、「子どもを愛しているなら避けるべき」という性善説に圧され、我慢を続ける母親が少なくありません。

離乳食

生後5か月頃から始まる離乳食前に、役所の健診で指導教室が開かれることがあります。
私は三人の子どもを育てる母で、三度指導を受けています。
栄養をバランスよくとり、出汁は天然の昆布やかつお節を使って取るよう説明されました。おやつについてもスナック菓子はできるだけ避けるよう指導されます。おにぎりや果物、手作り菓子を与えるのが理想と言われるのです。
それが子どもの体によく、濃い味に慣らさないことで成人病予防になるということでした。
役所で指導されたとおりに10倍粥から始め、野菜のすりつぶしを一品ずつ与えていきましたが、吐き出されることも多く、苦戦しました。出産で傷ついた体が回復しきっていないのに、夜泣きで寝不足が続く生活を送っている中、離乳食作りに励みました。
言葉で連ねる以上に、実際は過酷です。精神的に追い詰められます。
指導されたとおりに作って与えているのに、理想通りに進まない離乳食。
私も悩みましたが、母親教室で知り合ったママさん達の多くも、悩みながら進めていました。
(私は最終的に開き直り、理想の離乳食とはかけ離れたやり方で育てています)

いい母親は市販の菓子を与えないという呪縛

制約だらけの妊娠、授乳期を送り、母親はストレスを抱えています。
母親の心の支えは「子どものためになる」という希望だけです。

子どもが一歳から二歳になるころ、市販のお菓子を与えだす親が増えてきます。

赤ちゃんせんべいから始まり、

ボーロなどに移行します。

カルシウム入りなど体のためになる成分が入った菓子が人気です。

段々と野菜入りのスナック菓子を与えだすパターンが多かったです。

チョコレートや飴はいつからあげる?

チョコレートや飴などは与える年齢に幅がありました。
一歳で与えている家庭もあれば、三歳や四歳まで与えない家庭もありました。
わが家の場合は、私が目を離した隙に義母がチョコレートを与えてしまいました。
当時娘は0歳で離乳食も完了しておらず、びっくり仰天しました。
義母は「甘くて子どもが好むものだし、柔らかいから問題ない」といいました。
チョコレートは与えないでくれと話しても義母は忘れてしまうようで、三人とも0歳で義母からチョコレートを与えられるという経験をしました。飴は二歳くらいに座った状態で棒付きの物を与えたのが最初だったと思います。
そんなこんなで早々に理想から離れた私は、適度に手を抜いて子どもを育てました。

手作りにこだわる親の努力

市販の菓子を与えだす家庭と、手作りにこだわる家庭の二極化が進んで行きました。
手作りに励む親からは、子どもを一緒に遊ばせるときはお菓子を与えないでほしいと前置きをされました。
お菓子が出る子ども向け施設を利用する場合は、その時間を避けて帰宅するという徹底ぶりでした。
お菓子の存在を知らなければ欲しがることはないという理由でした。
子どもに良かれと思って食生活に気を使ってきたのに、今市販品をあげてしまってはこれまでの努力が無駄になる。子どものために努力すべきだという強迫観念さえ感じられました。

入園と市販菓子

手作りにこだわる親も、保育園や幼稚園入園を機に市販品を受け入れるケースが多くありました。
仕事をするにあたって手作りが間に合わなくなることもあれば、適度に市販品に慣れるのも社会勉強になるという理由でした。

しかし園でも手作りにこだわってほしいと願う親がいます。それが冒頭に紹介した「これまで市販の菓子や食べ物を与えたことがない。今後も与えたくないので園の行事で出す菓子を手作りの物に変えてほしい」と求めるケースです。

園関係者は、「すべて理想通りの子育てをしたいなら、園に預けることはせず親の手で育てる他なくなるのではないか」と話していました。
あまりに理想を求めすぎると、子どもが自分の理想と離れた言動をしたときに認められなくなるのではないかとも。

それを聞いて、私は母を思い出しました。
理想の食生活をさせ、子どもは親の言うとおりにするべきだという母からの抑圧を思い起こさせました。

何事も適度に

未だ役所の指導では厳しいことが言われますが、メディアでは何事も適度に手を抜き、親がストレスを溜めずに笑顔でいることが子どもの成長に大事であると言われるようになりました。

ベビーフードやおやつについても同様に、適度に市販品に頼ることが勧められています。

私は強いこだわりを持った母に育てられ、希望が通らない生活を送ってきました。
母は私のためを思っていたのでしょうが、私は愛情を感じられませんでした。

極端に市販品を排除すると、私のように親元を離れた時に欲求が爆発してしまう場合があります。何事も適度が一番だと考えます。

ある男性からは、「食育にこだわった母親がずっと台所に籠り、自分は一人で過ごさざるを得なかった。こだわるより一緒にいて欲しかった」という意見も聞きました。

子どもの好奇心や「知る」機会を奪ってはなりませんし、理想ばかりに囚われて子どもの心を見失ってもいけません。かといって、子どもの言いなりになるのも問題なのですが。難しいですね。

手作りと市販品のどちらも適度に経験させるのが、子どもの刺激にもなりいいのではないでしょうか。

この記事は、こちらの漫画をきっかけに書きました☟
私はこの子でした。

こだわることは決して悪いことではないのだけど、子どもの気持ちも大事にしてほしいと思います。
将来の子どもと親の関係にも影響します。
お願いします。
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