知人が障害や持病のある赤ちゃんを出産したら、あなたはどう言葉をかけますか?
障害や病気を歓迎しているように思われないか、心配。
気遣いから声をかけられなくなる方は少なくありません。
私は難病を持つ子の親です。
自身の経験から皆さんにお伝えしたいのは「おめでとう」と祝福して欲しい、この一点につきます。
平均寿命が30歳と言われる我が子の病気の患者会には、毎年赤ちゃんの患者が新たに加わります。
「おめでとう」の言葉が、母親や父親、そして本人の心を救う言葉となります。
障害や病気を持つ赤ちゃんの誕生を祝福する意味について、お知らせします。
障がいや病気を持つ子の出産・3つのケース
「障がい、病気を持った赤ちゃん」の誕生には、3つのケースがあります。
〇 出産時に異常があり発覚する場合
〇 産後少しして発覚する場合
出産前からわかっている場合
妊婦健診のエコー検査などで胎児の異常が発覚することがあります。
中絶するか妊娠を継続するかの判断を迫られ、悩むケースが少なくありません。
どちらの選択もできないまま中絶できない週数に到る場合や、母親と周囲の意見が食い違い、母胎に大きなストレスがかかる場合があります。
また、望んで妊娠の継続を選んでも、母胎の精神状態が一般より不安定になる場合が多いでしょう。
しかし出産した時にはある程度腹を括っています。
その際には是非自信をもって「おめでとう」と祝福してください。
出産時に異常があり発覚する場合
妊娠中に異常が見られなかったにも関わらず、分娩時に異常が見られ、障害や病気が覚することがあります。
母親の体力や精神力が最も落ちているときに子どもの異常を知ることで、ストレスを抱えて産後の肥立ちが遅れたり、悪露が長引いたり、産後鬱に陥るケースがあります。
周囲に出産が知られた時には、まだ動揺が続いているかもしれません。
「産んでよかったのか」と悩んでいる可能性もあります。
それでも、是非「おめでとう」と声をかけてください。
産後少しして発覚する場合
妊娠、分娩時に異常がなかったものの、産後の入院中や一か月健診頃に異常が見られる場合があります。
「おめでとう」の言葉を言われた後に障がいや病気がわかることがあります。
暫く親の動揺が続くでしょうが、障がいや病気を知った後にも是非「おめでとう」と言ってください。
全てのケースに共通するもの
父親と、特に母親はとてつもないストレスを抱えています。
特に母親は自分の命を削って体内で育てることから、自分を責めてしまいがちです。
父親もまた、そんな母親をどう支えるべきか悩むでしょう。
思い描いていたものとは違う未来が待っていることに、絶望を感じることがあります。
それでも是非すべてのケースにおいて「おめでとう」という祝福はとても重要なのです。
障がい・病気発覚後の流れ
産婦人科クリニックや助産院で出産した子どもに異常が認められると、子どもだけ提携している総合病院や大学病院に送られて処置を受けることがあるでしょう。そのまま入院が続いたり、手術になる場合があります。
入院が必要ない場合は、自宅で様子を見て定期的に通院して経過を観察するでしょう。
珍しい病気の場合は専門の医療機関を受診し、今後の治療や生活について指導を仰ぐことになります。
遺伝に関わる病気は、今後の妊娠に備えたり治療に役立てるため、両親が遺伝子検査をして原因を探ることがあります。
親の精神状態
診断直後の親の精神
診断を受けて最初から障がいや病気を受け入れられる親はいません。
暫く動揺することが珍しくないでしょう。
胎児の責任は母親にあるという古い迷信から、母親が親族に責められるケースもみられます。
子どもの障害がわかった時、母親は何よりも子どもの将来を案じます。
「おめでとう」が受け入れられない
親が子どもの障害や病気を受け入れられるまでは、少し時間がかかります。
〇 この子のために親は何ができるか
〇 この子の生きずらさを、どう支えられるか
と周囲が思うのも無理はありません。
「なぜこんなことになったのか」と親はしばらく悩み続けるでしょう。
答えはどこにもありません。
あるのは、子どもに障害がある、病気があるという事実だけです。
悩んで泣いて、考えついた先に、事実を受け入れる時がきます。
受け入れないと、子どもと親の未来がないからです。
生きていくために、親は受け入れざるを得ません。
未来を進むべく、事実を受け入れます。
おめでとうと言ってほしい理由
親がどんな精神状態であっても、産後の第一声には是非「おめでとう」と伝えてください。
さらに辛くなる言葉は言えないよ。
事実を受け入れられていないときは辛く感じることがあるかもしれません。
それでも「おめでとう」という祝福の言葉を勧めるのには理由があります。
「おめでとう」を言われないと、「残念だったね」と言われているように感じてしまうからなのです。
動揺し神経が過敏になっている両親は「憐れまれている」と受け取ります。
☝こちらの記事にも書きましたが、憐れまれるのが特に辛いのです。
「おめでとう」が母親、父親を救う
葛藤の末に事実を受け入れた時、両親を勇気づけるのは出産を「肯定する言葉」です。
障害や病気を祝福するわけではありません。
お祝いの言葉は、子どもの存在を肯定します。
「おめでとう」は親と子どもを受け入れ、応援する言葉になります。
言われた時は受け入れられなかったとしても、「おめでとう」の言葉は記憶に残ります。
「祝福してくれる人がいる。私たちは一人じゃない」そう思えるようになっていきます。
祝福が力になる
障がい者や難病患者への厳しい声
障がいや病気を抱えた人に、厳しい声がかけられることがあります。
「医療費の無駄」「自然淘汰されるべき」「早く死んだ方が日本のため」という声です。
そんな世間の声とも戦っている場合があります。
味方がいると思えるように
偏見や憐みの目で見られたとき、親や子どもを支えるのは、「私たちを肯定してくれる人がいる」という勇気です。
その源が「おめでとう」の言葉です。
おめでとうの伝え方
励ますつもりでも、追い詰めてしまう言葉の例です。
〇 赤ちゃんのために元気出さなきゃ
〇 私の知り合いはもっと大変な病気だったけど、頑張ってたよ
既に神経を張り詰めているところにこれを言われると、さらにストレスを抱えることになります。
子どもの障がい・病気に悩む母親の実例
我が家の末っ子のケースです。
分娩時に子どもの手の皮が全て剥けた状態で産まれてきました。
総合病院で出産し、産婦人科から連絡を受けた小児科医や皮膚科医が何人も連れ立って末っ子を見に来ました。
非常に珍しい症例なため、文献を当たりたいと言われます。
〇 どうして治らない病気なのか。
〇 遺伝性のため、結婚や出産に影響するのではないかという未来への恐怖。
これでよかったんだ。私は私ができることをやるだけだという勇気になりました。
ある患者会で赤ちゃんの誕生を祝う理由
「おめでとう」と言われないのが辛かった
末っ子の難病患者会では、新たに赤ちゃんの患者が加わると、参加者の前でお祝いの言葉とプレゼントが贈られます。
患者会の代表を務める方は自身も患者で、体に障がいがあります。
病気がいかに大変か、身をもって知っています。たくさんの患者仲間が亡くなっていくのを見送ってきた人でもあります。
代表は迷わず重度の赤ちゃん患者と両親を祝福します。
「病気や障がいがあると、『おめでとう』を言ってもらえません。私は言います。生まれて来てくれてありがとう。お誕生おめでとう!」
祝福と拍手の意味
参加者は一点の曇りもない、祝福の拍手を贈りました。
若い両親は皆の前で涙しました。
「おめでとうと言われないのが辛かった。社会に望まれない子どもなのかと不安だった。嬉しい」と言いました。
祝福の拍手を贈った参加者は、皆その経験をしてきていました。
祝福の拍手は続きました。
おめでとうの言葉が親子を救う
親の精神状態は子どもに伝わります。
祝福の言葉が親の支えになれば、子どもを支えることに繋がります。
是非「おめでとう」と祝福してください。