新薬が承認されるまでの厳しすぎる現実

日本で新薬が認められるには、諸外国に比べ厳しい道のりがあることが知られています。

「厳しいのは検証がしっかりされているからだ。」と安心感を持つ方もいるかもしれません。
実はそうとは言えない現実があります。

物理的に無理な条件を課せられる場合や、何年、十何年と認可が下りない間に失われる命があります。

新薬承認の流れと、稀少疾患治療薬の開発の現状、世論が承認に与えた影響についてお知らせします。

治療法、薬の開発の流れ

薬や治療法の開発には長い時間と莫大な研究費がかかります。

研究には10年~18年、研究費は200億円から300億円かかると言われ、一年に40~50の新医薬品が誕生しています。
患者数が多い病気は利益が見込めるため、製薬会社が研究を進め、治験を経て安全性を確認後、承認をを得て流通にいたります。

反対に患者数が少ない稀少疾患はコストの回収が見込めないため、研究の対象にされません。

稀少疾患は大学病院等の専門医が国の研究助成金や寄付金を得て研究をします。
治験を経て結果が出ると学会で発表し、国内外の製薬会社が買い取り、製品化されます。

日本の大学病院の研究結果を海外の製薬会社が買い取り、海外で製品化され、日本で認可されず使用できない状況が起こることもあります。

新薬が認められるまでにかかる時間

臨床試験を終え安全性が確認できてから承認を得るまでの経緯はこちらです。

医薬品候補の有効性、安全性、品質が証明されたあと、医薬品としての製造、販売の許可を得るために、厚生労働省に申請します。
提出した書類が、薬事・食品衛生審議会などの審査を通過すると、晴れて医薬品として市場に出すことができます。

https://yakuzaishiharowa.com/maker/maker_reserch.html

厚生労働省に申請し審査を通過するまで1年から2年かかると言われています。

因みに海外の薬が日本で認可される期間はアメリカで1~2年となっているのに対し、日本は4~7年と先進国では最低の基準です。
承認を得るまでの時間が長いのは、承認、審査を行う機関の体制に大きな差があるためです。

2010年現在、アメリカのFDA(食品医薬品局=日本の厚生労働省に該当する公的機関)の約2000人に対し、日本の医薬品医療機器総合機構は約400人しかいない体制の違いにあると言われています。

審査が通過するまでに1年から2年と言われていますが、効果が認められているにも関わらず、見送られることがあります。後述します。

難病患者の声

私の夫と末っ子が稀少難病を抱えています。

夫が幼い頃は病気の認知さえされていなかったのですが、夫の病気が遺伝した末っ子が誕生した時には文献での認知が進んでいて、産院で専門医にかかるよう言われるまでになっていました。

患者数は日本に1000人ほどと言われていて少なく、製薬会社の研究対象にならないため、日本の数少ない大学病院の専門医が研究を進めていました。
医師たちが競うように研究を進め、結果が出ていて、承認を得るまでに進みました。

患者会では、3年から遅くても5年以内には患者が使用できるだろうと期待されていました。

しかし承認されず見送られました。
理由は、この難病は「自力で治せるから」というものでした。

夫と末っ子は皮膚の難病です。
皮膚が傷つき体が治そうとしますが、それを上回る速さで傷つき続け、全身裂傷状態に陥り、皮膚の癒着や癌を発症します。

夫や末っ子は軽度のため感染症に気をつければ生涯を全うできますが、重度であれば新生児のうちに亡くなり、軽度中度含め10代から20代で感染症、皮膚がん、心筋症で多くの患者が亡くなります。生活の不便が大きく、一生をベッドの上で送る患者もいます。

患者の環境は過酷で、平均年齢が30歳と言われています。

この病気を知らない人は、自分の皮膚を基準に考えますので、治るはずだと勘違いをするのでしょう。
例え自力で治ったとしても、効果のある治療法が認められない理由にはならないはずです。

承認を見送る理由が全く理解できない。と言うのが正直な気持ちです。

難病に効果的と言われる海外の被覆材の国内認可を求めた際にも、「日本人に合うかどうかのエビデンスが必要。」と却下されました。

確かに海外と日本人の体の違いがあるのは事実です。
しかし日本にいては手に入らない被覆材を手に入れ、エビデンスを作成するまでにどれだけの年月と費用がかかるでしょうか。

会員が世論に訴え、全国で40万人以上の署名を集め、必要数を保険適用とする承認を得ることができました。
エビデンスより世論が認可に効果的であることがわかります。

病気の認知

別記事でも述べてきましたが、病気の認知が生活や治療全てにおいて大きく影響します。

指定難病に関わらず、大変な病気がたくさんあります。
命の危機に面している、または薬の承認を待つ間に進行し、危険な状態に陥る患者がたくさんいます。

薬の承認をいたずらに進められないことも理解できます。
しかし世論に動くのであれば、患者や専門医の要望を聞き入れるべきと切に願います。

患者の覚悟

早期承認を望むなら、患者にも覚悟が必要です。

承認後にも臨床研究(追跡調査)は進められています。

発売されてから新たな副作用など問題が発生するケースは多く、死亡症例も報告されています。

https://yakuzaishiharowa.com/maker/maker_reserch.html

これは薬を使う全ての人が理解しなければならないことです。

薬の承認は治療の選択肢となり、患者の生き方に繋がります。

日本の承認体制が拡大することを願います。

 

 

 

最新情報をチェックしよう!