【アイザックス症候群・香取久之さん】難病の夫と娘をもつ私が思うこと

2020年8月16日のフジテレビ「ザ・ノンフィクション」で香取久之さんが取り上げられました。

彼はアイザックス症候群という難病を抱えています。

彼とは違う難病ですが、彼と同様、治ることのない難病を抱える夫と娘を持つ私が、ザ・ノンフィクションを見て感じたことを、ただつづる記事です。

アイザックス症候群・香取久之さん


香取久之さんはアイザックス症候群という難病を抱えています。

アイザックス症候群とは

1961年に報告された原因不明の筋肉の病気。
手足や体幹の筋痙攣(筋肉のつり)、波打つ様な筋の動きを特徴とし、発汗、手足の焼け付く様な痛みや異常感覚を伴うことがあります。
筋肉の動きによる線維筋痛症によく似た激しい痛みがあります。

参考 joy-mix


番組では久之さんが激しい痛みと戦う姿が映されました。

発症は高校時代でした。

一卵性の双子の弟には症状がなく、久之さんだけに症状が出たことから、当初は家族にも理解されなかったといいます。


アイザックス症候群と診断された時は34歳でした。
診断が下されるまで実に17年の歳月がかかっています。


難病指定を受けている病気は、治療法がありません。
あるのは対処療法に過ぎません。
病名がわかっても、痛みから解放されるわけではありませんでした。


久之さんは難病に苦しむ人の力になりたいと、大手「大塚製薬株式会社」MR職を退職し、NPO法人「つむぐクリニック」を立ち上げます。

大塚製薬でMRとして勤務していた時の営業成績は高いものでしたが、経営能力が高いわけではありませんでした。

自費で1500万もの借金をし、さらに借金を抱える状況に陥っています。
ステージ4の癌に侵されながらも、活動に傾倒しています。


久之さんには妻と子どもがいます。

妻は番組に対し、自費を費やし、生活を脅かしてまで活動に傾倒する姿勢への疑問と、久之さんの体への心配をコメントとして寄せていました。

難病と共に生きるということ


私の夫と娘も難病を抱えています。

先天性で、治ることはありません。
やはり珍しい病気で、病名を出すと身バレする可能性があるため、伏せています。


平均寿命が短い病気です。
重度であれば新生児から成人までに亡くなることが多くあります。


夫は軽度だったために、感染症に気をつければ生涯を全うできると言われています。

ほぼ同じ程度で遺伝すると言われており、娘も感染症を避けられれば、生涯を全うできるはずです。



しかし痛みを伴う一生となります。


一部、身体的特徴も現れます。



軽度なため日常生活に混ざれますが、健常者に混ざれるからこそ変形への偏見に悩まされます。

そして痛みの頻発を“理解されない”経験を重ねていきます。


難病のコンプレックス


夫は私と出会った時、コンプレックスの塊でした。

親を悲しませたくなくて、体へのコンプレックスを心の中にひた隠しに育ったと言います。
思い切って体への不満を言ったことで、母親を傷つけてしまったことがあるからです。


それまで付き合い、同棲した彼女たちにも言えなかったと言います。


「何を言っても仕方ない。」と諦め、ため込む性格となり、その他の人間関係にも影響を及ぼしました。



この番組を観ていて一番気になったのは、久之さんと奥さんの関係でした。

久之さんは痛みに耐え続けなければいけないこと、非常に珍しい病気故に周囲の理解を得られなかったことから、死を考えたと話しています。

奥さんに腹を割って、弱い部分を出せていないように感じました。


自分の体を知らないストレス


夫は自分の体が普通でないことを自覚していました。

幼い頃、母親と都内の大学病院を回ったこともあります。
病名はわからず終いでした。

私と出会い、結婚し、子どもが産まれたことで(長女と次女には遺伝しませんでした。優性遺伝のためキャリアでもありません)夫は徐々にコンプレックスから解放されて行きました。



夫が自分の病気を知ったのは40歳の時、三女の誕生がきっかけでした。


三女が異常を持って産まれたため、総合病院の小児科医や皮膚科医が連れ立って三女の元を訪れました。
非常に珍しい病気のため、専門の病院にかかるように言われます。



初めて自分の体を知った夫は、初めこそ大きいショックを受けたものの、病気の正体、同じ病気を抱える人が他にもいること、軽度であることの幸運を知り、謎が解け開放感さえ感じることができました。

三女を思う気持ちは強くなりましたが、夫と私が共に知ったことで、ショックを共有し分かち合うことができたと思います。

前向きになるための依存


私は夫の一部奇形をあまり気にしていませんでした。
しかし三女が難病であることには大きなショックを受けました。


夫の方が辛いだろうと支えることに従事し、私自身のショックを言葉にすることはありませんでした。


どうにかして自分にできることはないかと探し、体の変形に関係する爪の補正技術を学ぶようになります。


これが病気を抱える人の役に立つかもしれないと思うだけで、心が躍り、大きな力となりました。



香取久之さんのNPO活動が私と重なりました。



激しい痛みと戦う心の拠り所、生きる糧が「同じ難病の人たちの希望となること」なのだと感じました。

その結果が多額の借金と、家庭を顧みない姿勢を生み出しました。

難病に悩む「誰か」を救うことで「自分」を重ね、「自分」を救っているのです。



久之さんの気持ちがわかるとともに、奥さんの気持ちも分かりました。

弱音はどこで言う


番組を観る限りですが、久之さんはあまり感情の表現が得意でないように感じました。


かつての夫と同じように、「口に出しても仕方ない」「どうにもならないこと」「言うと誰かを傷つける」「格好悪い」と思っているように感じました。


これは難病関係なく、私と夫がかつて離婚の危機に陥った時に夫の口から出てきたことでした。



「格好いい」なんて求めていない。
完璧な人はいない。私も完璧じゃない。できること、できないことの凸凹が合わさって一人前になれたらいい。だから弱い気持ちも言え!


その後も長く話し合い、気持ちのすり合わせをして分かり合うことができました。

三女が産まれたのはその後の話しです。

このすり合わせができていなかったら、私と夫は今、友好な関係を築けていなかったかもしれません。



久之さんはもっと誰かを頼っていい。


本当に弱い部分を受け止められるという経験は、ストレスを軽くします。
余裕や広い目を持つことに繋がります。






一見普通に見えるからこそ、抱え込んで耐えようとしてしまう病気があります。


大切な人には甘えてほしい。そう思います。


「一人で頑張ることで、人への負担を減らしているつもりかもしれないけど、あなたを大切に思う人は孤独感を感じているよ。」

そう伝わるといいなと思います。




久之さんの今後がいいものとなりますように。

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