映画こどもしょくどう感想・虐待の対応・大人の理想と現実

映画「こどもしょくどう」を観ました。

前評判やあらすじを全く知らずに観た私は、「子ども食堂に現れる子どもの境遇」などをお涙頂戴的に描いている映画かと思っていました。

予想は良い方向に裏切られました。

余計な説明はなく、不遇な境遇の子どもに戸惑う大人のリアルな姿が、子どもの目線で描かれていました。
とても胸に迫る、良い映画でしたので、お知らせします。

映画こどもしょくどう詳細

「こどもしょくどう」は、2019年3月23日に公開された映画です。

こどもしょくどう監督、脚本

監督は日向寺太郎さん
脚本は足立紳さん(原作者でもあります)、山口智之さんです。

こどもしょくどうキャスト

主演は高野ユウト役の藤本哉汰さん、木下ミチル役の鈴木梨央さんです。

主な出演者は以下の通りです。

ユウトの父親、高野作郎役:吉岡秀隆さん
ユウトの母親、高野佳子役:常盤貴子さん

ユウトの幼馴染、大山タカシ役:浅川蓮さん
ユウトの妹、高野ミサ役:田中千空さん

ミチルの妹、木下ヒカル役:古川凛さん
ミチルの父親、木下次郎役:降谷建志さん(Dragon Ash)
ミチルの母親、木下朋美役:石田ひかりさん

その他、子どもたち(小学生)の人間模様を描く友人達が登場しています。

映画こどもしょくどうあらすじ

小学生のユウト(藤本哉汰)の両親は、食堂を営んでいます。

ユウトの幼馴染の同級生タカシ(浅川蓮)は、母子家庭でネグレクト(育児放棄)を受けていました。

自己表現がなくはっきりしない態度が原因で、タカシは同級生からいじめられていました。
ユウトはいじめを知りながら助けることはせず、タカシに「いじめられないように注意しろ」と注意をしました。

タカシは毎日ユウトの家に寄り、夕食を食べてから帰宅しています。

ある日二人は、河原に停まる軽自動車と、幼い姉妹ミチル(鈴木梨央)とヒカル(古川凛)の存在に気が付きました。

ミチルは以前、ユウトが目撃した万引きの犯人でした。
父親と一緒に車で生活をしているようですが、姉妹はいつもお腹を空かせていました。

ユウトは自宅から食事を持ち出して、タカシと共に、姉妹に届けるようになります。

車が学生にいたずらされるのを見た父親は、子どもたちを残して消えてしまいました。
取り残された姉妹は車で父親の帰りを待ち続けます。

ユウトは姉妹を自宅に連れて帰り、食事を出してほしいと親に頼みました。

ユウトの母佳子(常盤貴子)はミチルに親の話を聞こうとしますが、ミチルは語りません。
ユウトの妹ミサ(田中千空)伝てに断片的な話を聞くことしかできず、詳細が掴めずにいました。

佳子は然るべき場所に知らせるべきか悩みますが、ユウトの父作郎(吉岡秀隆)は「様子を見ろ」と止めました。

姉妹の親が帰ってきていないことを知った佳子は、ミチルにいつから帰っていないのか、どこに行ったのか、親戚はいないのか、学校の先生には言ったかと矢継ぎ早に聞きました。

ユウトは両親に「ずっと(親がいないと)言っていたのに、何もしてくれなかった」と怒りをぶつけました。

その晩、姉妹はユウトの家に泊まりました。
翌日、ミチルの妹ヒカル(古川凛)が、家族の思い出が詰まった場所に、両親を探しに行きたいと言いました。

ユウトとタカシと姉妹は両親探しに付き合いますが、会えませんでした。

ユウトたちが河原の車に戻ると、警察が様子を見に来ていました。
姉妹は警察に保護され、生活ができる場に連れていかれることになりました。

タカシは学校でいつものようにいじめっ子に絡まれますが、やり返しました。
やりすぎそうなところを、ユウトが止めました。

その後ユウトの両親が営む食堂は、小学生以下無料の看板が掲げられ、多数の子どもたちが集う「こどもしょくどう」となりました。

映画こどもしょくどう感想

ミチルとヒカルの両親がどうしてこうなったのか、詳細が描かれていませんでした。

ただ、母親がいた時は家族の楽しい思い出があった、というワンシーンだけが流れました。

映画を観終わった後、ミチルとヒカルがなぜ過酷な環境に置かれることになったのか、両親はどうしているのかを知りたいと思い調べました。

例えば実話なのかや、隠されたエピソードがあったのかもしれないと思ったのです。

調べてわかったことは、監督が最後まで悩み、あえて「両親について説明しない」ことを選んだ事でした。

(脚本を書いた足立さんが)母親が出ていくシーンなど、いろいろ回想を書き足したりしてくれました。しかしミチルの家族が特別な家族に見えては困ると思いました。(出典:cinemanagoya

確かに、離婚、借金、事業の失敗、病気、不遇な事故など特別なことが描かれたとして、視聴者の実体験にないことだとしたら、「私とは関係のない世界の話」と思いかねません。

実際に「もしかしたら問題のある家庭かも」と思っても、実情を知る機会はそう多くなく、わからない故に見逃されやすい状況が往々にして起こります。

ユウトが両親に訴えた「ずっと(親がいないと)言っていたのに、何もしてくれなかった」という叫びは、とても心に響きました。

親目線からしたら、ユウトの言葉は説明が足りていませんでした。
でも、子どもたちは状況を知らせているつもりだったのです。

自分ではどうにもできないもどかしさ、怖さ、辛さ、心細さをミチル役の鈴木梨央さんが見事に演じていました。
凄いの一言です。

感動させるため、泣かせるために作った映画ではないことがよくわかります。
最後はずっと泣いてしまいました。泣いても何も解決しないのですけどね。

ユウトの母親、佳子役の常盤貴子さんは、最後まで安っぽい同情をすることはありませんでした。
そして今問題を抱える子どもたちを助けるべく、「こどもしょくどう」を作りました。

自分にできることはなんだろうと、考えさせられる映画でした。

虐待の対応・大人の理想と現実

私は気性が激しく、不安定な両親の元に育ちました。

両親の怒号や泣いて喚く声を毎日聞いていました。
母の精神的なサンドバックになり、体が常に緊張して家に居場所がありませんでした。

風呂や洗濯をダメだと言われていた頃もあります。

家に居たらおかしくなると思い、大学進学をきっかけに家を出ました。反対されるかと思いきや、両親の不仲がいいように影響して予想に反して出ることが許されました。

両親から解放されると、耳が聞こえにくかったり痛みが感じにくかったりする症状がなくなりました。よく笑えるようになり、自由を感じることができました。しかし過食嘔吐や自〇願望が芽生えるなどして、克服までに長い時間がかかりました。

大人になってから両親が親戚間で問題を起こした際に、私が親戚に謝罪の電話を入れました。

その電話で、親戚が私の両親のおかしさに気づいていたことを知りました。

私はずっと、親戚は気がついていないのだと思っていましたが、私が幼いころには知っていたのだそうです。
親戚付き合いに波風を立てたくなくて、黙っていたのです。

私は幼い頃に、親戚に見捨てられていたのだと思いました。

親戚といえど、よその家庭に簡単に口を出せないことは、大人になった今ではよくわかります。

「こどもしょくどう」で描かれた姉妹は家がなく、学校に通えておらず親も失踪しているという極限状態ですから、私とは全然違います。それほどの環境でも、人は迷うものなのですよね。

私が見過ごされてきたことは、仕方のないことでしょう。
でも悲しいです。

人は他人の人生を背負う事などできません。
自分の生活が脅かされるかもと思ったら、線を引きます。

仕方ないと言えばそうだし、賢いと言えばそうですが、色々考えてしまいますね。

家庭の問題にどこまで踏み込むかという現実

私は近所に住んでいたある若い夫婦を心配しながら、結局何もしないまま終わってしまったことがありました。

母親が幼い子どもに「おい、てめぇ。ふざけんな、〇ね」と叫んでいる姿がよく目撃されていて、近所で心配されていました。

母親は、子連れの私が話しかけると、よく話をしてくれました。

手をあげる、蹴るなどを度々しているような発言を、母親から聞くことができました。虐待を疑われて腹が立って、近所の人を嫌って避けていることも聞きました。少しでも、子どもに向かうフラストレーションを減らしたかったのです。

母親の激しい言動を父親が止めているとご近所から聞いていたので、私は母親が頼れる実家があるのかや、子育ての鬱憤を聞いて共感するなどしていました。

もっと詳しく話を聞くために、家飲みをしようと自宅に誘いました。母親と同じギャルの友人に事情を話して同席してもらい、受け入れやすい言葉で窘めつつ、一緒に子育てをしていけたらと思っていました。

しかしある時突然、引っ越し先が決まったと言って、一家はいなくなってしまいました。
行き先はわかりませんでした。

あの子たちは大丈夫だろうか。通報するべきだったのか。下手だけれど子どもへの愛情を感じさせる母親と、母親を求めている子どもを離すことがいいことなのか。

しかし子どもはどんな親でも求めてしまう。
それに痣などがないため保護に到らないのではなどと、逡巡しました。

そんな心配をすると同時に、少しだけホッとする思いもありました。

結局私も、親戚と同じでした。

ビジネスホテルに現れた、児童相談所に追われた親子

私がビジネスホテルのフロントバイトをしていた時に、ある親子の客と出会いました。

非情に大きな体格をした母親と、母親を「鬼」という口が達者な幼い男の子。そしていつもお腹を空かせているよちよち歩きの女の子です。

親子は他県の児童相談所に追われていました。
「とても心配な親子だから」と何度も電話をもらいました。

ホテルは母親が不在の時にお腹を空かせてフロントにやってくる兄弟に、こっそり食べ物を与えるくらいしかできませんでした。

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誰しもが「問題だ」とわかっていても、どう踏み込んでいいのかわからない、そんな状況でした。

虐待の対応と子どもの現実を描いた、ひばりの朝

作者が「怒りを込めた」と言った作品、「ひばりの朝」があります。

父親から性的被害に遭っている14歳のひばり。

学校も親戚も、その他大人たちも気づきながら「動くのか」「動かないのか」を選択し、様々な反応を見せて行きます。

作者のヤマシタトモコさんが感じた「怒り」がよくわかる作品です。

自分に何ができるか、考えさせられます。

理想と現実

子どもの悲しい事件を聞くと、しばらく心に残り、辛くなることがあります。
理想では、すぐにでもできることをしたい。

しかし現実は、問題を目の当たりにすると対応に戸惑うことが多いです。

常に心構えをして、できることをしていきたいですね。

映画「こどもしょくどう」は、考えさせられる、いい作品でした。

 

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