心霊現象・刺されて逃げ込んだ男女【ビジネスホテルの裏話②】

☟の続きです。

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心霊現象 いわくつきの716号室(仮)

私を雇っている会社があるホテルを買収しました。

買収後に全館をリフォームし、スタッフや設備を大幅に入れ替え、営業がスタートしています。私が働いたのは買収して3年程度経った頃でした。

いわくつきの部屋は、前ホテルの時に死者が出たと言われる部屋でした。

サラリーマンの自殺だったと聞いています。
とにかく死者が出た部屋であることは確かでした。

その部屋は繁忙期以外はできるだけ使用しないようにしていました。
なぜなら、売りに出すと高確率で問題が発生するからです。

経営会社が変わり、私のアルバイト先となるビジネスホテルになったあとも、716号室で不思議な現象が続き、死者が出ることになります。

心霊現象? 常連が訴える

団体客が入り、満室に近い状態だったある日、ある常連客が泊まりに来ました。

常連客は仕事で帰宅が難しくなった際にホテルを利用しているようです。
何十回とチェックインを担当させてもらいましたが、一度もトラブルはありませんでした。

この時は別のフロントメンバーがチェックインを担当し、満室に近かったため、716号室を案内しました。
いつものように感じ良く、にこやかにエレベータに乗り込んで行きました。

部屋に入って10分も経たない頃、フロントにコールがありました。
ナイトマネージャーが対応すると、

この部屋は嫌だ。
この部屋だけはやめてほしい。
部屋を変えてくれ。

と訴えられました。

通常は不備がない部屋をチェンジすることはしません。

ビジネスホテルの清掃員は昼間しかいないので、一度客が入ってしまうと別の客に部屋を売ることができなくなるからです。
清掃は別会社が入っており、一部屋ごとに清掃金額がかかるため、コスト面からも避けるべきことでした。

しかしナイトマネージャーは迷わず、辛うじて空いていた別タイプの部屋の鍵を取り、そこに案内する判断をしました。

その部屋がどういう部屋か知っていたからです。

部屋を移ってからはコールはありませんでした。
それからも利用いただきましたが、その部屋だけは嫌だと指定されるようになりました。

常連客は

「とても嫌な感じがした」

とだけ言いました。

心霊現象?酔っ払い女性客の激変

その日もホテルの稼働率が高く、大半の部屋が売れていました。

繁忙期はその部屋も、他の部屋と同様に使用していました。

ある若い女性が、心地よく酔われた状態でアポなしで来られました。
シングルの部屋を希望され、716号室に案内しました。

上機嫌でフロントで話をし、少しだけおぼつかない足取りでエレベータに乗り込んで行きました。
部屋に入って20分経つ頃、フロントにコールが入ります。

気分が悪い。
死にたい。
救急車を呼んでほしい。

と言います。
相手が女性ということで、ナイトメンバーで唯一女性だった私が部屋に行って様子を見るように言われました。

部屋をノックしますが中々出てきません。

大丈夫ですか?
救急車が来るまで私が対応させていただきます。

とドア越しに声をかけると、女性がドアを開けました。
しかし部屋は真っ暗です。

部屋の電気を点けたくないと言います。
つい先ほどフロントで見せた笑顔はかけらもなく、俯いてドア付近の部屋の中に座り込んでいました。

酔いすぎか?

先ほどは上機嫌だったけど、酒で気分が落ち込むことは珍しいことではありません。それにしてもあまりいい状態とは思えませんでした。

そして716号室がどういう部屋かを知っているからか、とても嫌な空気を感じ、部屋に入りたくありませんでした。

ドアを開けたまま女性に声をかけ、背中を撫でながら救急隊を待ちました。
女性は俯いたまま無言でした。

程なくして救急隊が到着しました。
その場を任せ、フロントに戻りました。

どうだった? と聞くナイトメンバーに、

何が原因かはわからないけど部屋も真っ暗だし、精神的に落ち込んでいるみたいです。としか伝えられませんでした。

救急隊が女性をタンカーに乗せて搬送していきました。

救急隊は、

身体に変調があるわけではないので、本来であれば搬送対象ではありません。しかし泣いて死にたいと喚きだし、精神的に非常に不安定なため、このままでは自殺をしかねないと判断して特別に搬送することにした。

と報告されました。

女性がもともと不安定な方だった可能性はありますが、こういった不可解な事件は決まって716号室で起こりました。

心霊現象の影響・変死体

ある日の夜、数日ぶりにフロントに入ると、716号室が売り止め処理されていました。
どうしたのか聞くと、716号室で変死体が出たと言います。

亡くなったのは若い女性で、全裸でした。身元を表す所持品は一切なかったそうです。

チェックインしたのは若い男性一人でした。
しかし男性は部屋におらず、死んでいたのは女性でした。

チェックイン時に書かれた氏名や住所などは全て架空のものでした。
つまり、全く手掛かりがない状況でした。

死因が不明の場合、警察が司法解剖に回します。
死因は薬物による中毒死でした。

身元が分からない場合は変死体として処理されるそうです。
チェックイン時の映像など警察に協力しましたが、アルバイトを続けていたその後数年の間、問題の人物が見つかったという報告はありませんでした。

死亡事故が起こると、警察に協力するために暫く現場を保全しなければなりません。

それが終わったあとも半年程度売り止めをして、もう大丈夫かな? という何とも曖昧な感覚を基準に売りを再開します。

お祓いをしたのかどうかも、ナイトメンバーである私の耳に入ることはありませんでした。

心霊雑誌の表紙に載る

ある晩、休憩時間にコンビニに行ったナイトマネージャーがある雑誌を買ってきました。

見てください!
これ、うちのホテルですよね!?

雑誌の表紙を見ると、確かに今まさにいるホテルの外観写真が、モザイクとカラー処理をされて載っています。

知らない人が見たらわからないだろうけど、働いている人間や常連が見たらこのホテルだとわかるような処理でした。

ナイトメンバーは社員ではありませんでしたので、心霊ホテルだと言われても気楽です。

凄い!!
本当だ! 載ってる!!

と盛り上がりました。

雑誌にはこのホテルの6階にいわくつきの部屋があると記載されていました。
具体的なエピソードは当たらずとも遠からずな微妙で無難なラインだったように思います。

どこでこんな情報を仕入れて来るのでしょう。
部屋名はわざと外しているのでしょうか。

ホテルには雑貨チェーン店を展開する会社の社長と会長が住んでいました。
ホテルのある地方都市で店を展開するために、一時的に滞在していたのだと記憶しています。数年住んでいましたが、その間部屋のタイプを何度か変えられていました。

当時は今ほどカード決済をする人は少なく、毎日フロントに来て現金で部屋代を支払っていました。

このホテル、“出る”部屋があるんでしょ?
俺たちの部屋を6階にするのだけはやめてよー。

その雑誌を知ってか知らずか、彼らは度々そう口にして笑いました。

……6階じゃないのですよ。

と心で呟き、笑顔で流しました。

心霊現象ホテルの今

716号室は仮の号室です。

この話を書くにあたり、ホテルが今どうなっているかを調べました。
私がアルバイトを辞めてから5年も経たず、会社が倒産し、ホテルを手放したことは知っていました。

ホテルでなくなっているのであればそのままの号室を記そうかと思いましたが、今は別の会社が全面改装を経てシティホテルを経営していることがわかりました。

そのホテルで旧716号室がどうなっているかはわかりませんが、何かしらの影響が残っていた場合を考え、伏せることにしました。

改めてホテルの件を調べていて驚きました。

ホテルの立地は、かつて大きな事故があり、100名以上が亡くなった場所の目と鼻の先に建っていました。事故があった建物はその後更地にされ、別の建物が建てられていますが、周辺は心霊現象が多く発生することで有名だそうです。

深夜の休憩時間に外に出るにも、治安が良くなかったので女性が一人で歩くには怖い場所でした。

信号が青になったのを見計らってダッシュで駆け抜けて目的地まで到着するようにしていたのですが、大きな事故があった場所は自然と避けて通っていました。

私は霊感がありませんが、なんとなく感じるものがあったのでしょうか。

私がホテルで自ら体験した心霊現象は、次の一つだけです。

目の端に現れる男性

深夜フロントに一人でいる時間が2〜3時間ありました。(マネージャーがすぐ裏で仮眠を取りながら待機しています。)

一人でフロントにいると、決まって目の端にフロントの制服を着た若い男性が見えました。
ホテル入り口脇にある植栽の横に、ただ立ち続けていました。

その制服に替わってから2〜3年程度しか経っていないと聞いていましたので、フロントメンバーで亡くなっている人はいないはずでした。

嫌な感じはなく、怖いとは思いませんでした。
半年ほど続いて、気が付いたら現れなくなっていました。

不思議な体験でした。

刺された男と女の逃げ込んだ先は旧スイートルーム

ある朝、深夜のフロントバイトを終えたナイトメンバーで、従業員エレベータを待っていました。

そこで異変に気が付きます。

従業員エレベータが最上階である13階(仮)に停まっているのです。

13階はかつてスイートルームとして使われていましたが、利用者が少ないため閉鎖している階でした。客用エレベータは13階に行けないよう設定されています。

物置代わりになっていたため、従業員用エレベータは13階に停まるようになっていますが、電気は止めており、フロアは真っ暗なはずです。

誰しもが一人で行くのを嫌がる、怖いフロアでした。

ナイトメンバーは黙って、13階から降りてくるエレベータを待ちました。

朝食担当の調理師のおばちゃんは厨房にいますし、清掃会社が来るまでにはまだ時間がありました。
昼のフロントメンバーはフロントに入っています。

一体誰がエレベータを13階に停めたのだろう?

ナイトマネージャーがマネージャーと支配人に報告に行きました。
私と他のナイトメンバーは帰宅するよう指示されました。

スイートルームの客たち 余談

スイートルームと言っても、年季が入ったビジネスホテルなので、部屋が広く鏡が多い、くらいしか特徴がありません。

13階にはスイートルームが二部屋のみで、雑貨チェーン会社の社長と会長が数年住んでいましたが、チェックアウトしてからは殆ど利用者がいませんでした。

部屋が広くベッド数も多かったので、たまに家族連れが利用されるのと、アダルトビデオの撮影で利用されるだけで稼働率が低かったのです。

アダルトビデオの撮影は、一般と同様に予約をされ、チェックインを済ませて大量の荷物を持って入室されました。

随分と大所帯だなと思いながら鍵を渡し送り出すと、フロントメンバーが「あれ、AV男優だったな。多分AVの撮影だよ。」と言います。

私はアダルトビデオに疎かったので、誰が男優だったのかわかりませんでした。
女性はチェックインの場にいなかったので、女優は後から入られたのでしょうか。

マネージャーが、何度か撮影に利用されているようだと言います。

他の客に迷惑行為をするわけではないし、さっさとチェックアウトするから悪い客ではないのだけど、アダルトビデオの撮影に利用されるのは困る。
視聴者が「あのホテルだ。」と気づいたら、嫌悪感を示す客もいるはずだと頭を悩ませていました。

そんなこんなで稼働率が低く、コストがかさんでいたこともあり、閉鎖されることとなります。

13階に停まるエレベーターの事件は、その後一年ほど経って起こりました。

旧スイートルーム階を調査

私はバイトを終えて帰宅しました。
以降はナイトマネージャから聞いた話です。

ナイトマネージャがマネージャーと支配人に報告しました。
不自然だということで、皆で13階を調査することにしました。

実はかつて、浮浪者が13階に無断で住み着いていたことがありました。

真っ暗で怖い場所ですが、雨風は凌げるし、人は滅多に来ません。都合がよかったのだと思います。

一体どうやってその場所を知ったのかは不明ですが、清掃会社と同じくホテルの裏口から入り、施錠なく入り込めてしまうルートを使って従業員エレベータに乗り、最上階に辿り着いてしまったようです。

裏口はホテルの下のコンビニも共有で使用するため、施錠が難しいのです。

また浮浪者だろうかと予想を立てながら、マネージャーら三人は、懐中電灯を手に13階に入りました。

真っ暗で怖い! と談笑しながら三人で団子になり、歩いたと言います。

至る所にある鏡に懐中電灯の光が反射したり自分の顔が映ったりして、お化け屋敷の様だったそうです。

すると廊下の奥に、髪の長い若い女性が現れました。

刺された男と介抱する女

三人とも悲鳴を上げました。

ギャー!!

「……本物の人だった。」

と後にナイトマネージャーが私に言いました。

逆上して刺されたらどうしようと思ったそうです。
幽霊に刺されることはありませんので、本物の人間である方がある意味怖いです。

「警察に連絡しないで。」

と女性が言いました。

女性の近くのベッドに、男性が横たわっています。
男性も若いようです。

い、生きてる?

死んでいるのかと思いましたが、男性は動きました。

腹部を押さえて服に血が染みています。
腹部を刺されたと話しました。

追われている。この場所のことは前から知っていた。怪我をしていて、殺されると思って逃げ込んだ。
警察に連絡されるのは困る。と女性が説明しました。

まるでドラマのような話ですが、ホテル周辺は夜は非常に治安が悪かったため、それほど驚きませんでした。

そんなこと言われても、ホテルとしてもここに居られたら困るんですけど、と三人は戸惑います。

なぜ追われているのかも、なぜ殺されそうになったのかも、なぜ警察に連絡されたら困るのかもわかりません。

マネージャー達三人は、

「居られたら困ります。今すぐに出て行かないなら警察に通報します。
またここに来たら、即通報します。どうされますか?」

と判断を委ねました。

女性が男性を介抱しながら裏口から出て行きました。

昼と夜で人の層が一転し、夜は暴力団が仕切る危険な街でもありました。
時間は朝。場所は観光地であり繁華街でもある街のど真ん中でした。

二人が無事に生きているのかはわかりません。
二度と現れることはありませんでした。

追われて逃げ込む女性

実はこの“追われている”人が駆け込んでくるのは、そんなに珍しいことではありませんでした。

ホテル下に入っているコンビニからは年に一度くらいの頻度で深夜、フロントに電話があります。

コンビニに女性が駆け込んできた。
追われているから助けてほしいと言っている。
コンビニからホテルの裏口に通し、裏ルートで逃がしてほしい。

とコンビニの店長が言います。

追われている割に、決まって警察に連絡することを拒みます。
ナイトマネージャーが裏口を案内し、逃がします。

一体誰に追われているのでしょうかね。
暴力団関係の悪い人たちに追われていることが多いのでしょうが、女性が悪いことをしていない確証もありません。

コンビニやホテル側は確かめようがありませんので、危険を訴えられたら協力していました。

中々スリリングな生活をしている人たちがいるものです。

 

 

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