ある夫婦が離婚に至るまで
ある夫婦が離婚しました。
夫は医師の家系で、夫の兄弟は海外で内科や外科の開業医として成功していました。
夫は歯医者の開業医です。歯医者は競争が激しかったものの、歯科医は夫一人、事務は妻が担って経費を削減したため、開業にかかった借金の返済を終えることができました。
夫は結婚当こそ歯科医の開業医として仕事に励んでいましたが、実兄に頼まれて二週間もの間海外に行く生活を繰り返すようになり、徐々に変わっていきました。二、三ヶ月に一回の頻度で始まった海外渡航の習慣は、最終的に毎月の恒例行事になりました。
渡航の理由は、兄の子ども(夫の甥)が夫を好きで、一緒にディズニーランド(海外)などに行きたいと言うので来てほしいというもので、渡航費と滞在費は兄が出していると夫から聞いていました。
渡航の間は歯科医が不在となるため、クリニックを閉めなければなりません。当然いつ休みになるかわからないクリニックに通う患者は少なく、客足はみるみる減っていきました。
夫婦は妻が独身時代に一括で買ったマンションに住んでいました。夫は僅かな生活費しか渡さなくなっていましたが、家賃がないことや妻の資産運用が上手く行っていたこともあり、不妊治療をしていてもなんとか暮らせていました。
夫が不在の間、妻は一人で不妊治療に励みました。夫は子どもが好きだから、誘われたら行きたくなってしまうのだ。私に子どもができたら、夫は日本を空けなくなるはずだと自分に言い聞かせていました。
不妊治療が丸10年を過ぎたころ、妻は40歳を過ぎ、何度目かの妊娠をしました。
それまでは妊娠反応が出ても育たずに辛い思いをしていましたが、順調に育ち出産を迎えることができました。
夫は念願のわが子が生まれたというのに、生活を変えることなく海外に行ってしまいます。
夫の兄が相変わらず夫を呼び出すというのも不自然でした。
ある時、夫は兄弟たちのように海外で開業をすると言いだしました。
行き先は夫の兄弟が起業している国とは違う、所得水準が非常に低い国でした。
経営が成り立つとは思えない計画に、妻は不安を覚えました。しかし夫に何を言っても無駄なことはわかっています。それまでも長期間家を空けないでほしい、頻度を減らしてほしい、クリニックの経営は大丈夫なのかと聞いては喧嘩になることを繰り返していました。夫は生活を改めるどころか、エスカレートするばかりでした。
感極まった妻は、喧嘩中に興奮したまま妻の実母に電話をかけました。普段は非常に落ち着いている妻でしたので、実母は何が娘をそうさせたのかと驚きました。それまで多少の愚痴を母親に言うことがあっても、詳しい話はしたことがなかったのです。
夫は喧嘩の声を妻の母が聞いていると知りながら「(妻の名前)さん、働いてください! 働いてください!」と芝居かかったセリフを連呼しており、妻の母は違和感を覚えました。
夫は、家庭に金銭的余裕がないのは妻が働いていないからだと妻の母に伝えたかったようです。
妻の母は、娘が資産運用でサラリーマン程度の利益を得ていることを知っていましたので、ただただ違和感しかなかったのでした。
夫の実家が地方にあることや義母が非常に高齢なこと。不妊治療で忙しかったこともあり、妻は夫の実家と深い付き合いがありませんでした。
夫の海外行きを実家が後押ししていると聞かされて、ますます義母に相談する心境になれませんでした。
融資元や店の場所、計画の内容、滞在住所など詳しい情報を明かすことなく、夫は日本を出ていきました。
以来、日本には年単位で帰って来なくなりました。
妻は一人で子どもの面倒を見ました。
夫からたまに微々たるお金が送られてきましたが、相変わらず養育費にも足りない額です。
夫と子どもの交流は、たまにテレビ電話をする程度でした。いつ帰国するのかと聞くと、歯科クリニックに加えて飲食店をオープンしたので当分帰れないという返答が続きました。
ある時、夫のLINEのアイコンが現地の知らない女性の顔写真に変わりました。
以前から薄々感じていましたが、現地妻か、現地で女性達を侍らせて遊んでいるのだと確信しました。
それにしても妻と繋がっているLINEのアイコンを女性に変えるなんて、バカにするにもほどがあります。親族の中にも不審がる人が出てきました。
当初こそやるせない思いがありましたが、滅多に連絡が取れなかったこともあり、夫は「どうでもいい人」に変わっていきました。微々たる額でも送ってくるため、害はないとして放っておくことにしました。
それから数年の時が流れました。
いったん帰国した夫が、妻に働きに出るよう求めました。
夫の事業が上手く行かないため、返済の足しにするのだと言います。
妻はどこでどんな事業を起こし、どう失敗したのかも知らされず、到底信じることができませんでした。信じるどころか不信感で一杯でした。
女性関係も怪しいことが多く、連絡も満足に取れない、家にいない夫。
そんな人、要る?
やはり海外には性的な発散を目的に行き始め、はまってしまったのだとわかります。
妻が離婚を申し出ると、夫は拒否をしました。
妻は断固として離婚を求め、妻名義の家から夫を追い出そうとしました。
妻は夫と争う姿を子どもが見たら傷つくと思い、昼間は多くの感情を押し殺して過ごしました。そして子どもが寝たタイミングを見計らって、離婚以外選択肢がないことを夫に伝え続けました。
夫の所業
夫は妻の決意が固いことがわかり、夫の母に離婚することになったと連絡をしました。
夫の母は怒って、妻の母に電話をかけました。内容は「これまで散々金をせびってきたのに、離婚とはどういうことか」というものでした。
妻の母はこの時既に、一部始終を娘から聞いていました。
夫の母の反応を見て、母親は何も知らなかったのだと冷静に受け止めました。
「お宅の息子さんは、海外で現地の女性と遊ぶためにひと月の半分を海外に行く生活を数年続けました。娘が止めてと訴えても、子どもが産まれても変わらなかった。それどころか子どもが産まれた後に現地に住むと言いだし、日本を離れて数年になる。夫として、父親としての努めは果たしていない」妻の母は、娘から聞いた話を伝えました。
夫の母親は、息子から聞いていた話とまるで違う事実を聞かされて驚きました。
本人が白状したことや、夫の母が夫から聞かされていたこと、夫の兄弟から聞いた事実の辻褄を追っていくと、事実は以下の通りでした。
〇 頻繁に二週間ほど海外に行っていた目的は、性的豪遊。(恐らく)
〇 経営する歯科クリニックの利益が少ないため、夫は妻に隠れて「妻が金を求めてきて困る」と言って実家から金銭的サポートを受けていた。
〇 実家からのサポート金はほぼ全て夫の豪遊費に消えていた。
〇 夫の母は嫁が強欲だと思い込み、付き合いをしなかった。妻名義のマンションに住み、生活費を切り詰めながら妻の資金による資産運用で得た金で暮らしていることを知らなかった。
〇 夫が海外で生活していた数年間は仕事を全くしておらず、事業を起こした話も嘘だった。
〇 夫の親族は、夫が海外生活をしていたことを知らなかった。
〇 現地に家庭を作ったかの確実な証拠はないが、付き合いのあった女性は複数人いた。
〇 金の無心があまりに多くなり、夫の母は「強欲な妻をどうにかしろ」と一時的に送金を停止した。夫は遊ぶ金がなくなり帰国し、妻に働いて稼ぐよう求めた。
経営していたクリニックは海外に移住する前に畳んでいるので、職もありません。就職活動をして、雇われの歯科医として働く道を探しましたが、年齢の割に経験が足りず、歯科医は飽和状態と言うこともあり雇い口がなく、現在は別の派遣職についています。
子どもから見た父親
夫が不審な動きをしていることは知っていましたが、妻の返答からして触れてほしくないというのがわかっていましたので、何も言わずに見守っていました。
「離婚は正解。むしろここまで我慢したのがすごい」と離婚を祝ってしまったほどです。
「いい父親だった」の言葉の裏にあるもの
男女逆転パターンもあります。
離婚理由を子どもに伝えるか否か
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真実を知る権利が、子どもにはあります。
何歳であっても。
もちろん、子どもの精神状態等により、どう伝えるか、いつ伝えるかは難しい部分があります。
しかし、「子どもって、大人が思うほど子どもじゃありません」(こどものおもちゃ/小花美穂より引用)
あなたがいるから離婚できなかった。と言われて育った私が結婚し、親になり、親の気持ちと子どもの気持ち、離婚に悩む親を見守る立場も経験しました。「離婚するべき」「我慢して家庭を続けるべき」の結論を求めるのではなく、子どものためと言われた子ど[…]
「こどものおもちゃ」という漫画をご存じでしょうか。集英社発行の月刊少女漫画雑誌「りぼん」にて連載されていました。単行本は第一巻が1995年4月に発売され、1999年に発売された10巻で完結しています。1996年~1998[…]