やっと、やっとです。
やっと妊婦の体重制限の指導目安が変わるそうですよ。
以下は2021年3月4日に読売新聞に掲載された記事です。
妊娠中の女性の適切な体重増加量について、厚生労働省は、目安を引き上げる方針を固めた。若い女性のやせ傾向で低出生体重児の割合が高まるなど、厳格な体重管理の課題が指摘されたためで、妊娠前にやせ形の体格の場合、従来より3キロ多い12~15キロを目安に体重を増やすよう促す。来月にも、妊産婦が食生活の参考とする指針を改定し、新たな目安を示す。
妊娠中の体重の目安は、厚労省が2006年に策定した「妊産婦のための食生活指針」で示され、産婦人科医らによる体重管理の指導に使われてきた。関連学会などから、妊婦の体重が適切に増えない場合、胎児の発育に影響が大きいとする新たな知見が得られたことを踏まえ、策定以来初めて見直しを決めた。
新たな増加量の目安は、妊娠前の体格指数(BMI)が25未満の「やせ形」と「普通」の人で従来の7~12キロから10~15キロに引き上げた。上限を5キロとする体重管理は、BMI30以上の「肥満」の人に限定した。
日本は2500グラム未満の低出生体重児が生まれる割合が約1割と高い水準にある。18年のデータによると、経済協力開発機構(OECD)加盟国でも、ギリシャに次いで2番目に高い。出生体重が低い赤ちゃんは、成長後に糖尿病や高血圧のリスクが高まるとの報告がある。
母子愛育会総合母子保健センター(東京)の中林正雄所長は「妊娠中もバランスよく栄養を取り、体重を増やすことが母子の健康のために大切だ。妊娠を希望する女性は、妊娠前から食生活を見直しておくことが望ましい」としている。
三度の妊娠生活とも、体重管理には苦労しました。
私が初産だった10年前には、既に厳しい体重管理について問題視されていました。
改定が遅すぎます!
今回の指導目安変更は、これから出産する妊婦に朗報であることは間違いないありません。
体重制限の目的
これまで産婦人科医は厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」に基づいて体重管理を求めてきました。
現在指導に使われている「妊産婦のための食生活指針」を厚生労働省が出したのは2006年です。
そこには既に「妊娠中の体重増加量が7kg 未満の場合には、低出生体重児を出産するリスクが有意に高い」と記載されています(参考)が、産婦人科医は画一的に体重増加の上限を定め、それ以下に抑えるよう指導するケースが多くありました。
妊婦はしばしは「体重を増加させると“母親失格”」と受け取るようになり、「体重増加を抑えられるほど理想」と捉えるようになります。
結果的に4~5kg増加で抑えられた妊婦が、その危険性を知らずに満足し、他の妊婦にプレッシャーを与える悪循環を引き起こしました。
妊娠前と同等の食生活では太る
私が第一子を妊娠したのは2010年のことでした。
妊娠前はやせ形に近い普通体型でした。
初回の健診は妊娠4週の終わりだったように記憶しています。
悪阻が酷く、水を飲んでも嘔吐し、トイレで寝ていました。
歩く振動で嘔吐するので、病院に行って点滴を打つこともしませんでした。
入院設備がないクリニックだったからか、ケトン値を測られることもなく、ただただ家で悪阻が明けるのを待ちました。
悪阻が明けるころ、クリニックで体重を測りました。
妊娠前に比べ、4kg強体重が落ちていました。
やっと水が十分に飲めるようになり、食生活も戻りました。
すると次の健診で2kg増えていました。
そこで初めて体重を注意されます。
厳しい言い方で「二週間でこんなに増えていたら、出産が難しくなる」と言われます。
悪阻で落ちたものが戻るのも、体重の増加になるの? と不思議でした。
次の健診は二週間後でした。さらに2kg増えました。これで悪阻前に戻ったことになります。
かなり厳しく注意され、エコーで赤ちゃんの様子が知れる楽しみはあるものの、「健診はいやなもの」という印象になりました。
初めての妊娠で浮かれていましたので、安定期を待たずに周囲に連絡していました。
周囲からは赤ちゃんのためによい栄養を取るよう勧められました。
昔ながらの和食がいいと聞きましたので、和洋折衷だった食事を和食寄りに変えていきました。
普段通りの食事を和に変えましたので、以前より摂取カロリーが減っているはずでしたが、次の健診では1,5kg増えていました。
そこでまた強く指導を受けました。
「決して食べ過ぎてはいないのに、何故か増えてしまう。悪阻で体重が落ちたのに、落ちた体重から測るんですか?」と医師に聞くと「気づかないうちに食べてるんです。食べる量を減らしてください。体重は減ったところから測るものです」と言われました。
体重が増えると難産になりやすく、赤ちゃんに悪影響があるとも言われました。
体重を増やさないようにしなければ、子どもに悪いと思うようになります。
体重計を買い、逐一測るようになりました。
一日ごとに体重に一喜一憂する日々が始まります。
妊娠した時既に仕事を辞めていたので、毎日散歩に出ていました。カロリーを消費するために晴れている日は5時間程度歩くようになり、お腹が張ることが増えました。
夫は心配し、歩き過ぎじゃないかと言いましたが、妊娠前と同じ生活をしていると太るので、歩き続けました。そのころは坂道が多い土地に住んでいたので、良い運動になりました。
雨のには家で踏み台昇降をしました。
それでも体重は徐々に増え続けました。
妊娠前よりも痩せにくくなっていると感じました。
痩せにくいと言うか、太りやすい体質に変わっているようでした。
妊娠中、生まれて初めてダイエットをする
次の健診時、前の晩から食事を抜きました。
朝も食べず、水も飲まずに4km程度の道を歩いて向かいました。
それでも体重は1kg程度増えていて、叱られました。
このペースで体重が増えたら子どもに悪影響が及ぶと考え、妊娠前より食事量を大幅に減らすことにしました。
産まれて初めてのダイエットでした。
妊娠中って、食べた方がいいんじゃないの? なんでダイエットなんてするの? と夫は心配しましたが、医師が「食べる量を減らして」と言うと伝えると口を噤みました。
豆腐や温野菜を何もつけずに食べましたが、次の健診ではもっと体重の増加を抑えてと言われました。
妊娠中は妊娠前よりお腹が減ります。
しかし食べる量は妊娠前より抑えなければならず、ストレスでした。キャベツを素のままバリボリと食べました。
体重の増加の速度は抑えられましたが、キャベツばかりでは飽きました。
その話を実母にしたところ「キャベツもカロリーはある」と注意されました。
普通に食べていれば急激に体重が増えるはずはないと注意されましたが、普通に食べたら体重が増えるのは経験済みです。
仕方がないので水だけ飲むことにしました。
しかし何故か水だけ飲んでいてもわずかですが体重が増えていました。
食べなくなり、動く元気がなくなりました。
妊婦の体重制限を疑問視するニュースは2010年には報じられていた
「このままじゃダメな気がする。お腹空いてるし、もう吹っ切って食べちゃおうかな。でも子どもには良くないのか……。」とウダウダと考えていると、「妊婦の体重制限により低体重児や成人病リスクが高い子どもが増えている」というニュースが報じられました。
こちらは2021年現在、moonyのホームページに掲載されている警鐘です。成人病を引き起こす素因の70%は、胎児期や新生児期の栄養不足。成人病は生活習慣病と言われますが、じつは、後天的な影響は30%にすぎないという説があります。『成人病胎児期発症説』です。提唱したのは、イギリスのサウザンプトン大学医学部教授のデイビッド・バーカーさんです。彼の研究グループは、栄養状態の悪いお母さんから生まれた赤ちゃんのその後を追いかけて、健康状態を調べる大々的な調査をしました。すると、小さく生まれた赤ちゃんは、成人後に心筋梗塞を多く発症していたり、心臓病による死亡のリスクが高い、という結果が出てきたのです。
彼は、栄養学のノーベル賞といわれるダノン賞を受賞しています。かつては、だれも見向きもしなかったこの説が、いまは世界的に認められてきています。
今の日本の赤ちゃんの平均出生体重は約3000g。女の子は3000gを切っています。20年前に比べると、男女ともに200gも減っています。
少ない栄養で生きていかれるようにプログラムされて生まれた赤ちゃんが、生後、急にたくさんの栄養を与えられると、当然、肥満になります。最近は、子どもの高血圧症、糖尿病も増加しています。低体重児の増加と、こうした小児成人病の増加は、見事にリンクしています。
「小さく産んで大きく育てる」という考え方は、間違っているのです。
危険性を言われているのに、なぜ体重制限を厳しく言われ続けなければいけないのだろう? と疑問に思いました。
〇 体重は抑えられても、体力が落ちて出産に耐えられない気がする。
〇 母乳は母親の血液から作られるけど、母親の体力が落ちていたら、母乳も出ないだろう(憶測)
普通に。妊娠前より塩分だけ気を付けて、普通に食べる!!
一度吹っ切ったら強いものです。
総合病院でも散々注意されましたが、悪阻で減った体重を差し引くと12kg未満の増加です。
16kg体重増加妊婦の出産
出産予定日より2週間遅れて高位破水から始まり、同時に陣痛が開始して出産しました。
予定日の遅れは体重は関係ありませんでした。
陣痛促進剤で急がず、できるだけ待ちたいという希望からでした。
体重が増えると産道に肉が付き難産になると言いますが、陣痛が始まってからはスムーズに進み、入院から7時間で出産に到りました。
二人目は13kg増加。
三人目は13kg増加しました。
三人目が一番長くて11時間ほどでした。
私や子どもたちの体質である可能性もありますが、大きく産んだメリットもあると感じました。
病院により体重指導に差がある
私は三人の子どもを出産しました。
出産した病院は全て同じですが、健診時に通ったクリニックはそれぞれ違います。
つまり健診で3つのクリニックに通ったということです。
2010年に第一子で通ったクリニックが一番厳しく、体重の指導をされました。
二年後に第二子を妊娠し、別のクリニックにかかりました。
そこは高齢の産婦人科医と看護士二名でやっている小さなクリニックで、体重を注意されたことはありませんでした。
高齢の意思曰く、「もともとリスクがある妊婦なら別だが、健康な妊婦の体重は増えても構わない。最近は細かく言い過ぎだ」と断言していました。
心強かったのですが、第二子出産後に一度流産を経験した際、流産後の処理は必要ないと突っぱねられたことに疑問を抱き、通わなくなりました。
その高齢医師は、新しい医療の常識を取り入れない方針だったのだと思います。良い面もあれば、そうでない面もあると感じました。
三年後に第三子を妊娠して別のクリニックにかかりました。
そこは体重の注意をするものの、やんわりとした言い方に留めていました。
クリニックや医師により、指導の仕方は変わるのだと感じました。
妊娠中の体重の増え方は個人差がある
16kg増えた私の例
私は妊娠前、よく食べました。
よく食べ、よく飲む割には太らないね、と言われていました。(決して痩せているわけではないです。食べる割には、です。)
しかし妊娠したら栄養の吸収の仕方が変わるのか、とにかく体重が増加して、恐ろしかったです。
体質が変わったように感じました。
出産して赤ちゃんが3500g、胎盤が1,5~2kgあると言われていますが、産後の体重は3kg程度しか減っていないという悲しいミラクルが起きました。
産後は母乳育児をして4か月後くらいから体重が落ち始め、暫くして体質が妊娠前に戻ったように感じられました。
体重が増えにくい妊婦の例
夫の姉は妊娠前から非常に痩せていて妊娠が継続しにくく、不妊治療を長くしていました。
妊娠するために努力して体重を増やしましたが、それでも非常に痩せていました。
出産に至ったケースでは、やはり妊娠中に努力しても体重が増えにくく、出産直前は4kg増加でした。
産まれた赤ちゃんは3kgを超える健康児でした。
産後すぐに母胎の体重が5kg減り、妊娠前より体重が減ってしまったと言いました。
体重の増え方は体質によってかなり違うように感じられました。
妊婦のストレス軽減へ
今回の改訂のきっかけとなった「妊産婦のための食生活指針の改定案作成および啓発に関する調査研究」(体重についてはP39)を興味深く読みました。
今回の改定で、肥満者が多いと言われるアメリカや中国、韓国の指針に近い指導体重となったことがわかります。
欧米人とアジア人では骨格が違うので骨盤の形状も違いますし、リスクとされる病気なども違うので一概に海外を見習うべきではないのですが、決まりを守ろうとし過ぎる文化が日本にあるように思います。
日本の妊婦のストレスが、少しでも軽くなるよう願っています。