小学校、中学校、高校と、生徒は多くの時間を学校で過ごします。
先生との相性は時に子どもの将来や性格に影響を与えます。
生徒には考える力があります。
虚栄や嘘を見抜きます。
子どもが知る第一の社会は家庭です。そして学校という社会を知っていきます。
家庭や学校で大人の不誠実を知ると、そういった行動へのハードルが下がり、大人になってから真似をする傾向があります。
そのあとに、どう子どもや生徒と向き合うかが重要だと考えます。
教師の建前と本音
私が高校三年生になったばかりの春のことでした。
以前から校長が先生たちと揉めていることを知っていました。
「校長は生徒のことを考えていない」と複数の教師が生徒の前で発言していたからです。
ある国語の女性教師は、マスカラが落ち、黒い涙を流した状態で遅れて教室にやって来ました。
「校長と喧嘩していたから遅れてしまった」と言います。
「先生たちはみんなのことを考えているからね。心配しないで」と意味深な発言をしました。
結局何が問題だったのかはわかりません。公立の高校の校長の権限でできることがどこまでなのかも分かりませんでした。
揉めた原因がわからないまま、翌年、多くの教師が他校に移動となりました。
離任式の壇上挨拶で、移動になったある男性教師が「学校を去るべきなのは校長だ」とはっきりと発言しました。
体育館の後方を振り返ると、全教師が起立して壇上を見つめてました。
私の担任教師も腕を組み、小気味良い表情を浮かべていました。
批判された校長が引率し、移動となった教師たちが退場していきました。
校長はどんな気持ちで先頭を歩いているのだろうと想像しました。
教室に戻ると担任教師は、「公衆の面前で、反論ができない人(校長)を一方的に批判する行為は、到底許容できない」と発言しました。
担任は壇上の発言を聞いて「よく言った!」という表情をしていたのに、生徒には建前の話しをしたのです。
大人として子どもに教えたいことと本心に、乖離があるのだと感じました。
校長が多くの教師に反発されたことを考えると、「生徒の心を守るために言えない」ほどの何かがあったのかもしれません。
しかし学校の主役であるずの生徒に何も知らされないまま物事が進み、飾られた風船になった気分でした。
問題教師とその他の教師
私は三姉妹を育てる母です。
長女が小学校に入学した年に事件が起こりました。
担任教師がかなり癖のある人で、好みでない生徒をあからさまに差別しました。
長女は教師が好む生徒像に当てはまらず、当たられるようになりました。
長女はストレスを溜め、心因性の腹痛と発熱をして、早退と欠席を繰り返しました。
また、在校生徒にはすこぶる不評でした。
教師間の人間関係
教師のストレス
問題の担任教師が、相手によって態度を大きく変えているのを感じていました。
怒らせたら面倒そうな保護者には愛想がよく、その子どもにもよく接しているようでした。
他の教師、特に目上の教師にはいい態度しか見せていないように感じました。
担任は50代とみられ、ベテラン中のベテランと言える年代でしたから、自分より立場が上になる教師は少なかったでしょう。
下だと思っている人間には強く出る人なのではないかと想像しました。
長女の学校は一学年に二クラスあります。
担任教師はベテランだったため、学年主任を任されていました。
もう一人は若くしっかりした女性教師でした。
夏休み明けから女性教師は体調不良で登校できなくなる日が出てきて、じきに全く登校できなくなりました。
表向きは原因不明とされていましたが、「問題の教師のせいによるストレスだろう」と私は思っていました。
そのまま若い教師は不登校となり、担任が別の教師に交代となりました。
翌年度、学年主任を任されていた問題の担任教師は、他校に移動となりました。
教師間の見て見ぬフリ
問題教師がいなくなり、若い女性教師は学校に復帰しました。
復帰直後の一年は担任を持たず、翌年度に担任を持ちました。
それがわが家の次女のクラスでした。
次女の面談の際に、こっそり「体調不良の原因は問題教師からのストレスでしたか?」と聞きました。
すると「保護者の方にこんなことを言うのは憚られますが、そうです」と教えてくれました。
長女が塞ぎ込んでいたことを知っていたと言って、謝られました。
「入学の時にあった長女ちゃんの笑顔が、みるみるなくなっていくのを見ていました。どうにかしたかったけど、どうにもできず、自分がつぶれてしまった」と涙ながらに何度も謝るのです。
私は驚きました。
ずっと見てくれていた人がいたのだと初めて知りました。
かなり癖のある担任でしたので、若い女性教師が一人で立ち向かってどうにかなる相手ではないことは、私がよくわかっていました。
しかし他の教師はどうだったのだろう、全く問題教師の行動を見ていなかったのか? と疑問に思いました。
決して生徒数が多くない学校で、初年度から何度も問題を起こしている教師の動向を、全く見ていないなんてことがあるのでしょうか。
相談員は「教師が見習うべき教師なんです」と言いましたが、建前で言ったのだろうと思ってます。
もし本当にそう思っているのなら、何も見えていないことになります。そちらのほうが怖いと感じました。
縦社会を重んじてきた閉ざされた教師の世界で、モンスター化する教師が少なからず居るのでしょう。
公立学校の教師は失職する可能性がほぼなく、逆に言えば立場が下の教師は、常に問題教師の影響を受けやすくなるのかもしれません。
一度嫌がらせの対象になると抜け出すことが難しいので、見て見ぬフリをする教師がいるように感じました。
「あの問題教師はおかしかった。あなたのせいではない」と女性教師と二人で涙と笑顔を交えながら話しました。
次女は楽しく学校に通えていましたので、今後ともよろしくお願いしますと挨拶をして終えましたが、それから少ししてまた女性教師は体調不良で登校できなくなりました。
精神的な回復は難しい
女性教師の二度目の不登校も、保護者には体調不良と説明されました。
精神的なバランスは一度崩すと中々元に戻りにくいので、以前の問題教師によって崩されたメンタルが回復しきっていないのだろうと想像しました。
担任が変わり、新任の女性教師になりました。
新任教師と面談があった際に、またこっそりと「前任の女性教師の不登校の原因は精神的なものの再発ですか?」と聞きました。
「学校の方針で、詳しいことはお伝え出来ないんです。すみません」と謝られました。
教師間では真実を共有しているのだけど、保護者には伏せているようでした。
不登校になった女性教師と度々連絡を取っていて、個人的にも親しいと新任教師が言いましたので、伝言を頼みました。
「精神的なものは回復までに時間がかかる。保護者である私にかつての不登校の理由を知られているから、どう思われているかを心配するかもしれない。私も精神的バランスを崩したことがあるからわかる。私は口外していないし、人生のうちじっくり休む時間が必要になることがあるから、気にせず休んでほしい」と伝えました。
すると新任教師は「詳しく知っているんですね」と自身の経験を話してくれました。
教師間のパワハラ
新任教師は前年度に別の学校にいました。
その学校に、立場を利用して若い教師にパワーハラスメントをし続けるベテラン男性教師がいました。
年度ごとに圧力をかける教師をかえているそのベテラン教師は、その年、新任教師に目を付けました。
周囲の教師は「大変だね」と同情するものの、ベテラン教師に何も言えず、校長も問題が大きくなるのを恐れて黙認する形だったのだそうです。
溜まらず新任教師は一年で移動願いを出し、移動しました。
「病みかけました。教師間は人間関係が難しいです。一年は逃げられない。本当に辛い状況に追いやられる時があります」と新任教師は言いました。
教師はただの人
教師はかつて敬われる存在でした。
今も、教育の面ではそうあるべきだと思います。
しかし敬われる立場を勘違いした教師が、「毒」になってしまうこともあるのだと感じました。
教師だから、現場が学校だから、敬われるべき立場の人間が綻びを見せてはいけないから、という虚栄が、問題の隠ぺいに走らせたり、不必要な教師間の庇いあいを作るように感じました。
立場を守るために黙認する教師が、子どもの虐めを止められるでしょうか。
子どもたちは教師たちを見ています。
教師は専門の知識があるけどただの人。
親もただの人。
子どもに恥じない大人でいるために、縦社会など取っ払って人として付き合いができたらと願います。
理想論でしょうか。