妻が癌を罹患し、不倫に走る夫がいます。
終わりが見えない闘いの中、ストレスを抱えきれずに選んだ逃げ場が不倫です。
“病気を理由に不倫に走る”心理について、家族の病気が発覚し心の摩擦を感じた経験を元に、不倫に走る思考についてお知らせします。
病気の発覚と本心の摩擦
夫と子どもの難病が発覚し、心の摩擦を感じたことがあります。
私の夫と子どもは珍しい難病を抱えています。治ることはありません。
病気が発覚がしたのは子どもの出産がきっかけでした。
夫が悩んできた原因不明の体質が難病指定されている病気だということ、それが子どもに遺伝したとわかります。
非常に珍しい難病で、詳しくは専門の病院でなければ診られないと説明を受けました。
「珍しい病気ですから、熱心に診てもらえると思います」 医師がこう言った真意は、研究対象になる”ということです。
非常に強いショックを受けました。
血の気が引き、目の前が白みました。
しかし夫はもっと大きなショックを受けているだろうと思いました。
小さい頃から体質に悩み、体の一部変形があり、からかわれ、大きなコンプレックスとなっていたことを聞いていたからです。
自分の病気を知り、それが非常に珍しく過酷なものと知り、悩んできた過去があり、子どもにも遺伝したとわかった夫のショックは計り知れませんでした。
私がショックを受けたら夫はもっと辛くなるだろうと、告知の場でもその後も明るく振る舞いました。
ふと夫や子どもから離れた時には一気に涙がこぼれました。
私が夫や子どもを支えなければ。
私がショックを受けては夫が傷つく。強くならなきゃと言い聞かせました。
専門の病院にかかる前に病気について調べました。
平均寿命が30歳と言われ、常に痛みと痒み、体の変形、癌と闘う病気でした。恐ろしい内容で、ストレスを感じ続けました。
同時に夫がよくここまで闘ってこれたと尊敬するようにもなります。
夫は心に繊細な部分があります。
辛いのは当事者の夫なのだから、私が支えるんだ!当時はそればかりを考えていました。
夫の前で明るく振る舞い、前向きな言葉を並べる自分と、辛い、怖い、理不尽だというやるせない思いと子どもの将来への不安で、心の摩擦が増えて行きました。
皮膚をやすりで削ると血が滲み出るように、カサカサと心がすり減って少しずつ血を流すようでした。
誰かに頼りたい気持ちからの不倫
人生のパートナーである夫は、何かあれば一番に頼る相手でした。
その夫に弱音を言えないことが、こんなに辛いことだとは、その時まで知りませんでした。
誰かに頼りたい……。 辛い思いを我慢せずに吐き出せる相手が欲しいと思いました。
ただ、「大丈夫、頑張ってるのを見ているからね」と見守ってくれる相手が欲しいと思いました。
中学生時代の妻子ある男性教師の妻が、癌で入退院を繰り返していたことを思い出しました。
教師は同じ学校に勤める若い女性教師と不倫しました。
妻が亡くなってほんの数ヶ月で女性教師と再婚しました。
当時中学生だった私は、「汚い人」と男性教師を軽蔑しました。
男性教諭は再婚した女性教諭が病気になり、辛くなれば、また不倫をするのでしょう。
軽蔑しましたが、私は彼らにとって、ただ横を通り過ぎた一人の生徒でしかありませんでした。
今になって、逃げたくなる気持ちがわかりました。
病気の家族を支える辛さ
病気は当事者が一番厳しい立場に立っています。
しかしそれを支える家族もまた、自分の無力さを感じ、辛いのです。
心の摩擦が増えると、誰かのぬくもりを感じたくなるものだと感じました。
そんな時、音楽プロデューサーの小室哲哉さんの不倫が週刊文春で報じられました。
小室さんは会見で妻のKEIKOさんがくも膜下出血を起こし、後遺症で幼児化したことを挙げ、甘えがあったと謝罪しました。
会見後の世論は小室さんに同情的でした。
支えなければいけない重圧を一人で抱えるのは無理だというものでした。
私はまさに「誰かに頼りたくなる気持ち」を抱えていましたが、
真っ先に思ったことは、
何言ってんの!?
という猛烈な怒りでした。
病気から不倫に逃げる背景
誰かに頼りたくなる気持ちはわかります。
パートナーの病気が重いほど、先が見えないほど、辛く逃げたくなるでしょう。
しかし私は小室さんに一切同情することはなく、軽蔑しか起こりませんでした。
なぜかと言えば、簡単です。
パートナーは生きていて、感情があるからです。
パートナーが不倫を知ったらどう思うのか、想像しないことにすべての答えがあります。
闘病で辛いとき、パートナーに当たることもあるでしょう。
なぜ病気になってしまったのか、当人が周囲に引け目を感じることもあるでしょう。
人生を共にすると誓ったパートナーが、自分の病気を理由に不倫したと知ったら、どれだけの絶望感を抱くか想像できないのでしょうか。
私は夫を支えるために心の摩擦を受け入れました。
夫を傷つけたくなかったからです。
もし摩擦に耐えきれず、本当に異性に頼りたくなったら、その前に本心を夫に伝えようと決めていました。
夫を傷つけることになっても、裏切るよりはずっとマシです。
不倫は心の殺人と言われるように、最大の裏切りであり、人生を引きずる傷になるからです。
一時夫に責められたとしても、一緒に泣いて、一緒にストレスや悲しみを背負うことが、夫婦があるべき姿だと思いました。
逃げて病気を重くする
奥さんが癌だと言うのに不倫して、亡くなった後にすぐに再婚した人がいたのよ。
そういう話し、よく聞きますね。
病床の奥さんは気づいてたのよ。私は奥さんから直接聞いたの。
病気っていう引け目があって、気づいているけど責められなくて辛いって言ってたわ。
旦那さんは奥さんが気づかないと思っているのか、どうせ何もできないとでも思っているのか……。
奥さんは旦那さんの不倫で心が弱ってしまってね。旦那さんの不倫がなければもっと生きられただろうに亡くなってしまったの。
……不倫は心の殺人ですから、体が弱っているときに心が殺されたら、病気が急速に進むかもしれませんね。
私は辛かった日々の先に、病気に効果があるかもしれない技術を知り、資格を取ろうと決めたことで心の摩擦が軽くなりました。
その後少しして、
麒麟が前向きでいてくれてよかった。
と言われたことがありました。
実はね、動揺したよ。やっぱりショックだったから。
しんどかった。
ポツリポツリとしんどかった時の思いを話しました。
それだけですべてが消化されたような解放感がありました。
やはり私が頼りたいのも守りたいのも、夫なのだと実感しました。
結論
何のために、誰のために体裁を繕うのか。
本当に守りたいものは何なのか。
支えるというのはどういうことなのか。
病気の発覚をきっかけに考えさせられました。
病気や進行度、完治するのか一生付き合うのか、当人のもともとの性格によって、家族の支え方は変わるでしょう。
正解の定型はありません。
しかし、不倫の理由をパートナーの病気にするのは卑怯だと、私は思います。