ある男性が婚約破棄をしました。
結婚の話が具体的に進んだ後に問題が起こり、両家の金銭的な感覚の差が明らかとなって婚約破棄に到るのです。
発端は「結婚式にどれだけ金をかけるか」でした。
実例をお伝えします。
婚約破棄の理由は、彼女の「高すぎる結婚式の理想」だった
彼と彼女は中学校時代に出会いました。
優等生で交友関係が広く目立つ存在の彼は、地味だけれど芯があり、意思が強い彼女に惚れました。
中学校を卒業する時に、彼が彼女に告白をする形で付き合い始めます。
彼は県下でトップクラスの男子校に進学し、彼女は共学に通い出しました。
当時は携帯電話が普及する前で、PHSが主流でした。
彼女に促されるままに親を説得してPHSを持ちましたが、ほどなくして彼女から別れを告げられます。
彼は学校生活が充実していたこともあり、彼女と会う時間があまり作れませんでした。
毎日のように電話で話しをしていましたが、「会えないからつまらない。好きではなくなった」と彼女が言い、関係が終わりました。
彼は高校を卒業後、一流の大学に進学しました。
大学名が活きたのか、周辺の女子大生にとてもモテました。
サークルを通じて、綺麗な女性達が次から次へと寄ってくるのです。
彼はイベントでは中心的立場にありましたが、遊び人ではなく、落ち着いたタイプでした。
女性達からみると“手堅い相手”だったのかもしれません。
彼はその中の数人と付き合いましたが、彼女たちが彼に合わせた言動をすること、大学在学中ながら結婚願望が強すぎることが気がかりでした。何より知識や持論を話すと、「すごい、頭がいい」と感心するだけで、話しができないことが残念でした。
彼は彼女たちが「一流大学卒の夫が欲しい」のだと想像しました。
僕を好きなのか、一流大学卒の男が好きなのかを考えると“きっと一流大学卒の夫を知人に自慢したいのだろう”と行きつくのです。
どの女性とも半年から一年程度の付き合いで、長くは続きませんでした。
彼は大学院に進みました。
大学院を卒業するころ、中学の同窓会で高校時代にフラれた元彼女と再会します。
意見をはっきり言う彼女を、彼はまた好きになりました。
そして二人は付き合い出します。
大好きな彼女との結婚
彼女は実家から大学に通い、卒業後も実家から会社に通勤をしていました。
彼女は彼に専業主婦になりたいと漏らし、結婚願望をほのめかしました。
彼は大手企業に就職しました。
大学、大学院に通うために借りた奨学金の返済が始まりました。成績優秀者として学費を一部免除されたとはいえ、数百万の大きな額です。
彼女には奨学金という借金があることを話していましたが、彼が勤める会社は手当や福利厚生がよく給与額も伸びていくことが予想されていたため、問題視されなかったようです。
彼は実家が裕福ではなかったからなのか、割と倹約家でした。
手堅い資産運用にも興味があったため、奨学金の繰り上げ返済はしていないものの、二年が経つ頃にはある程度の貯金ができていました。
彼女が「すぐ結婚しないのなら別れる」と言い出したことがきっかけで、結婚に向けて動き出しました。
彼は彼女の両親と面識がありましたが、改めて挨拶をしに行きました。
実家が裕福ではないので、結婚にかかる費用は自分の貯金で賄うつもりであるとも説明をしました。
人見知りがあり少々奥手でもある彼女も、緊張をしながら彼の両親と対面を果たしました。
彼女が口を開くことは少なかったものの、彼の実家は聞いていたより貧乏とは思えず、よくある普通の家庭に感じられました。
結婚式の「夢」と「予算」という現実
「二人の貯金で賄える式にしよう」と話していましたが、結婚式に夢が膨らんだ彼女は、費用が高いゲストハウスでの結婚式を望むようになります。
彼女に「見学だけ」と言われてゲストハウスの見学に行くと、彼女が日程を仮押さえしてしまいました。
彼は驚き、彼女を彼が一人暮らしする部屋に連れて帰りました。
そこで改めて、結婚後の新居の契約料や家具等の購入費等の予想を伝え、ゲストハウスでの式は難しいと説明をしました。
すると彼女は酷く怒ります。
一生で一度の結婚式に妥協をしたくないと主張。
彼は悩み、彼女に近い年齢の自分の姉(新婚・親族のみの海外挙式経験者)に相談をしました。
姉は「身の丈に合った式をするのが理想だが、挙式後の生活を質素にするなどして返済に励む等の計画が立てられるのなら、彼女の希望を叶えてあげてもいいのかもしれない」と答えます。
彼は彼名義でローンを組むことを検討し、契約の方向で考えだしました。
すると彼女は、和装とドレス姿で前撮りをして、披露宴当日は二度のお色直しをしたいと言い出しました。
希望するドレスの内の一着は、オーダーメイドです。
他にも費用の高い演出のオプションをいくつも希望していました。結婚指輪は芸能人がつけていたと話題になった有名ブランド。当初要らないと言っていた婚約指輪も、上等なものが欲しくなったと続けました。
彼は頭を抱えました。
何度予算の説明をしても、「一生に一度の結婚式だから妥協したくない」と繰り返されて、一切の妥協がありませんでした。彼は結婚式のことを考えると、気分が落ち込むようになります。
一方彼女も、彼が再三費用の話しをしてくることに、怒りが募っていました。
夢に見た結婚式を、費用が足らないという一時的な理由で妥協しなければならないのは、納得ができません。
彼は私を好きではないのかもしれないと、疑うようになりました。
そもそも彼の家からは、金銭的な余裕がないという理由で結納金も受け取っていません。結納金があれば結婚式の費用に回せます。
考えれば考えるほど、「彼の家はおかしい」と感じるようになりました。
両家の金銭感覚の違い
彼女は彼に、実家から援助がもらえないのかと聞くようになりました。
彼は驚きました。
結婚の話が出た当初から、金銭的な余裕がない親には頼れないと話していたからです。
彼女は、結納金をもらっていない現状がおかしい。結納金と婚約指輪代を実家が負担し、結婚式の費用も援助するべきだと主張を始めました。
彼女に妥協できるところはないのかと聞くと、披露宴の料理の質を落として、酒の提供もなくせばいいと言いました。
彼の友人や親族には酒を好む人が多くいましたので、本来ゲストをもてなすべき披露宴でゲストの待遇を悪くするのはおかしいと反論。高価な演出を減らすべきではと提案すると、彼女は怒り、泣きました。
その頃、彼は仕事が忙しくなり、平日は21時以降しか連絡が取れませんでした。
しかし彼女は「21時以降は寝るので連絡できない」と言うようになります。
休日に会おうと持ち掛けても、彼女は「友人と約束があるから」「結婚前に自由に遊びたい」と言って、彼と会おうとしませんでした。
彼は彼の両親から度々「結婚式はどうする予定なのか」と聞かれていました。詳しく決まったら話すからと伝えていましたが、何度目かに聞かれた時に、彼女の希望と予算が合わなくて悩んでいる、と漏らしてしまいます。
彼の両親は心配しましたが、費用を援助できるわけではないので見守ることしかできませんでした。
彼の母親は彼女に悪い印象を持ちました。現実を見ずに贅沢ばかりを言う女性を妻に持ったら、将来息子が苦労すると想像したのです。そこで彼の姉に当たる娘に、彼女の愚痴を言うようになりました。
彼女は数カ月もの間、彼を避けました。
彼はどうするべきか迷い、度々姉に相談をしていました。
姉は彼女が彼を避けることについて「話し合いができない相手」と問題視しました。彼への愛情があるとも思えませんでした。
しかし彼に彼女への思いが残っているのを感じていましたので、母親の愚痴を聞き流し、彼には「どうにか話し合いをして、わかってもらうしかない」と伝えるにとどまりました。
ある日突然、彼は彼女の実家に呼ばれました。
数か月ぶりに会う彼女は素っ気なく、居心地が悪く感じられました。
彼女の父親は彼に、結婚式をどうするつもりなのかと訊ねました。
彼の父親は、娘の結婚相手は高学歴であること、と条件づけていました。
彼女が付き合った彼氏はどれも父親のお眼鏡に叶わず、唯一賛成したのが彼だったと、過去に彼女から聞いていました。
その話を、彼はその場で父親の口から直接聞くことになりました。
その上で、以下の話しをされました。
・いくら金銭的に余裕がない実家とはいえ、全く金がないわけではないはず。数百万は出せるのではないか。
・結婚式は女性の夢だ。それを叶えるのが男の甲斐性だ。
・結婚式や結婚後の居住費等は男の実家が出すもの。どうしても額が足りないのなら、こちらも一部援助しても良い。
彼は溜まらず、彼の両親に相談しました。
彼の両親は内心怒りましたが、息子が中学生時代から好きだった女性との結婚話をとん挫させるわけにいかないと思いなおし、彼女の両親と直接話す場を設けることにしました。
彼の父親は彼女の両親に、勤めていた会社が給料未払いが数ヶ月続いたのちに倒産したこと、その後下請けだった会社に入り勤め続けているが給料が大幅に落ちたこと、倒産と子どもたちの進学が重なり親族から借金をして進学させたこと、子どもには奨学金を借りさせたこと、子どもが独立した今も生活が厳しいことを、恥を忍んで伝えました。
その上で、結婚式は一日のみのイベントに過ぎないため大金を継ぎこむべきとは思っておらず、結婚式はそこそこにして、その後の生活を豊かにすることを考えてもらいたいという願いも伝えました。
彼女の父親は、結婚式は女性の夢であり、費用は男性の実家が出すべきだと譲りませんでした。
そして「私も景気に左右され、2千万あった年収が1千万に半減して苦しかった。苦しいのはどこの家でも同じだ。それでも費用を捻出するのが親だろう」と諭すように語りました。
彼の父親の年収は、倒産前の最高額が550万。転職後は400万未満に落ち込んでいました。しかし具体的な年収を伝える気にはなりませんでした。ただただ、相容れないことだけがわかりました。
彼と両親は肩を落として帰りました。
結婚をしても幸せになれない相手がいる
彼は姉に「結婚しても幸せになれるとは思えない」と漏らしました。
姉も同意しました。
彼が切り出す形で、一旦、結婚を白紙に戻すことになりました。
彼の気持ちが引いているのが分かったのか、彼女から連絡が来るようになりましたが、彼はかつてのように楽しく話をする気にはなれませんでした。
少しして、彼の両親が小型の新車をキャッシュで購入しました。
実家が近いため、彼女は彼の両親を目撃して知ります。
彼女は、結婚式に援助しないのになぜ車を買うのか、と怒りました。
彼女が疑問に思うのは当然かもしれません。
しかし彼の両親の視点は違います。
彼の両親が乗っていた車はかなり古くなっており、買い換える必要がありました。車がないと買い物等に不便するからです。これまで中古車を購入したこともありましたが、調子が悪くなって修理費がかかるなどして長く乗れなかったため、小型の新車購入に踏み切りました。
ローンで購入すると支払額が増えるため、先々の収入と支出を考えた上でキャッシュで支払いました。
貯金はある程度ありますが、今後の生活を考えると贅沢はできません。
息子の一日限りの結婚式に、その費用を援助するのが親の務めだとは思えませんでした。
援助してしまっては、自分たちの生活が立ち行かなくなる可能性があるからです。
将来的に金銭面で子どもに頼ることになってしまっては、本末転倒です。
結婚式には援助しないものの、新居の準備金として50万円の援助をする話しになっていましたが、彼女が彼に別れを切り出したことで、必要がなくなりました。
車をキャッシュで購入したと聞いたことが、決め手となったようです。
彼は、「わざとキャッシュで購入したと伝えて仕向けた。彼女から別れてほしいと言ってくれて助かった」と姉に漏らしました。
式場のキャンセル料は彼が支払いました。
婚約破棄の慰謝料まで請求されたくない、中学生の時から好きだった人と、これ以上揉めたくないというのが本音でした。
身の丈に合う結婚
彼は婚約破棄をした時を振り返り、「僕は彼女に愛されていなかった」と漏らしました。
きっと彼女も、「私は愛されていなかった」と思っているでしょう。
彼女は彼と別れて一年から二年後、同じ会社に勤める男性と結婚しました。
ゲストハウスで結婚式ができたのかどうかは、わかりません。
彼は彼女が結婚したと同級生から聞いたころ、新たな彼女ができていました。
新しい彼女は学歴は高卒ですが頭の良い女性で、彼と話が合いました。
実家に金銭的な苦労があり進学が叶いませんでしたが、田舎から都心に出てバリバリと働いていました。
とんとん拍子に結婚が進み、式と披露宴は彼女の希望で、親族だけの小規模のものになりました。
披露宴は、二人の趣味のレストラン巡りの中で美味しいと感じた星つきの店で行われ、とても好評でした。互いの親族の距離が近いこともあり、談笑するなどして記憶に残る良い宴となりました。
その後も「僕たち夫婦はかなり仲が良いと思う」と夫婦共に言うほど、順調な結婚生活を送っています。
両家の金銭感覚と、結婚後の生活
私は前述した彼と同じく、金銭的な余裕がない家で育ちました。
対して私の夫の実家は、非常に裕福です。
しかしこれまで大きな問題は起きていません。
結婚の顔合わせから結婚式まで、私と夫の貯蓄(ほぼ私の)で賄いました。
義実家も私も私の実家も、結婚式に大金をかける必要はないという認識を持っています。
義母は結納についても、「結納をしてもいいのだけど、お嫁さんを買うようで気が進まない」と夫に漏らしていました。私も私の実家も結納に興味がありませんでしたので、断っています。(色々な考えがあると思うのですけどね)
結果的に、義実家からは結婚のお祝いとして50万円をいただきました。
(余談ですが、全額夫が騙されて作った借金返済に消えています。夫の両親は夫の借金を知らず……笑)
家を建て替える際には、夫の両親が指定した土地をローンで購入することになった都合もあり、援助をもらいました。
長く住む住居には、ある程度お金をかけると良いと義両親は言いました。
私も同様の考えでしたので、義両親の援助はとても嬉しいものでした。(でも相当な額の住宅ローン組んでます)
金銭的な余裕に差があっても、結婚生活は上手くいきます。
それよりも、「どこにお金をかけるか」の価値観が重要なのでしょう。
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