男性ばかりの職場で度々直面した「男の言い訳はみっともない」論。
言い訳(理由の説明)をしないことを自ら選びながらも、ストレスを溜め込む男性達を見てきました。
女性の私が見た、男性社会のストレスについて述べます。
男の言い訳はみっともない?
ある休日。
夫が愚痴を言い始めました。
「昨日、職場で一人一台持っている端末の調子が悪くてさ。仕事で小さなミスを何回かやっちゃったんだよね」
端末から得られる情報を元に精査して、仕事を回していかなければならない状況でした。
しかし夫の端末の調子が悪いため、情報に遅れが生じて判断が遅れてしまったとのこと。
「例のあの人がさ。俺の反応が遅いと言ってみんなが聞いてるインカムで怒鳴り散らすんだよ。疲れた」
夫の職場の年配社員の中に、人のミスに非常に厳しい方が一人います。
例のあの人とは、その人のことです。
怒鳴り散らすことで有名で、自分には甘いけれど、少しでもミスをした後輩を叱責する癖がある方でした。
「端末の調子が悪いって説明したらいいんじゃない? あなたのせいじゃないし」と私が言うと、「言わない。何か言うと『言い訳するな』ってさらにヒートアップするから」と夫が言いました。
夫の職場は男性ばかりです。
女性は一人もいません。
年配社員相手に限らず、職場で何かの理由を説明すると「言い訳」だと怒られると言います。
そのため40代から30代の社員は、何かあっても原因を説明しないことが普通でした。
「男の言い訳はみっともない」に隠されたマウント
言い訳とは本来「責任逃れのための言葉」です。
原因を説明することは、責任逃れではなく、「原因が別にある」事実を伝える意味しかありません。
夫の場合、端末の調子が悪いうちはミス(ミスに見える行動)が繰り返されることになります。
原因が別にあると知らせることは、個人のミスでないと知らせるだけでなく、今後起こり得る仕事の不都合をカバーする体制作りをすることにもつながります。
「説明しようとすると『言い訳しやがって』とさらにヒートアップして、余計にストレスになるんだよ。プライド守ろうとしているのか、引っ込みがつかなくなるみたい。おさまるまで相当時間がかかって面倒だから、俺が我慢した方が丸く収まる」
と夫が言いました。
続けて、
「怒鳴り散らして、『スミマセン』の謝罪を聞きたいの。自分が“上”だと知らしめて、マウント取りたいだけなんだよ」
と呟きました。
後輩を怒鳴るのは、自分のプライドを守るため
えええええ~!?
プライドを守るために後輩を怒鳴り散らすなんて、どんだけ幼稚なのよ!?
と私は心から驚きました。
くだらない。
実にくだらない、小さな男! としか思えません。
女ばかりの職場なら、逆に総スカンを食らうのではないでしょうか。
とはいえ、同様の事例を私は知っていました。
私は男性ばかりの業界で仕事をしていた時期があります。
唯一の女性営業として仕事をしていて、後輩男性を叱ったこともありました。
ある時後輩男性たちと飲みに行き、その先で、私が叱った事例は私の勘違いだったことが発覚します。
私はとんでもなく恥ずかしいことをしてしまったと思い、後輩に「知らなかったよ! そうならそうと言ってよ! ごめんね~!! 本当にごめんなさい」と平謝りしました。
すると後輩の一人が、「麒麟さん(私のこと)は誤解だと分かれば謝ってくれるってわかってるからいいんですよ」と言いました。それに別の後輩たちも頷いています。
そして「誤解とわかっても、ごちゃごちゃ言うなとか、言い訳するなって余計怒られたり、スルーする先輩や上司がすごく多くて面倒なんですよ。だから誤解でも言わないです」
これにも後輩男性たちが深く頷いていました。
その話を聞いて、思い出したことがありました。
自分の勘違いを後輩のせいにする例
先輩が電話で「デスクに資料があるはずだ。中を確認してくれ」と指示してきたときのことです。
探しても、資料が見当たりませんでした。
ないことを告げると、「必ずある。俺は今朝見たんだから。お前がおかしい。探せ」と怒り出しました。
焦って探しますが、どうしても見つかりません。
「ちゃんと見ろよ!」と言い捨てられて、電話を切られました。
怒りの形相で社内に戻った先輩は、私を見るなり「ちゃんと探せよ!」と怒鳴りましたが、先輩は自分のデスクに資料がないことに気が付きます。
デスクではなく、違う社屋の違う部署に資料を置きっぱなしにしていたことがわかりました。
私が見つけられるはずがありませんでした。
先輩の勘違いだったことが分かったにも関わらず、バツが悪いのか、まるで私が悪いかのように舌打ちをして見せ、それ以降資料について何も口にしなくなりました。
マジで、何なの?
その先輩は私を女だからという理由で侮る発言を度々していましたので、女だから八つ当たりされたのだと思っていました。
しかし後輩たちの話をきいて、同僚や後輩には誰にでも逆ギレをするのだとわかりました。(上司には低姿勢)
クライアントのミスを報告することは、自分の正当性を主張することになる?
こんな例もありました。
仕事であるイベント現場の取り仕切りをしたときのことです。
一般客を対象にした販売系イベントの現場でした。
私の会社が仲介をして、出展者の要望に合わせた冷蔵冷凍設備を搬入していました。
出展者が設備に商品を入れた翌日、冷凍設定を頼んだはずなのに、冷蔵設定になっていて商品が傷みかけたという苦情がありました。
温度設定の管理を設備会社に発注したのは、私でした。
出展者から苦情を聞いたのは、ヘルプで来ていた社内の先輩でした。
すぐに謝罪をして、設定を変えたと言います。
私を見つけるなり、「お前の指示が間違っていた。商品の弁償をすることになるかもしれない」と叱ってきました。
あの出展者からは確かに冷蔵設定の申し込みがあったはずだと思い、その場で資料を確認すると、やはり冷蔵設定で申し込んだ証拠書類がありました。
「先方のミスですよ」と先輩に言うと、「そんなに自分の正当性を主張したいのか」とさらに責め立ててきました。
……え?
意味が分かりませんでした。
こちらは申込通りに設定をしたのに、先方のミスだと知らせずに、私の会社が弁償するっておかしくない??
どんな申し込みがあったかなど、まず温度設定変更の対応をしてからの話だということも分かります。
しかし対応後も確認せずに決めつけて、怒り出すとは……。
ちょっと意味が分かりませんでした。
「私が正しい」と言いたかったわけではありません。
弁済が伴う事例を私のミスと誤解されることに納得が行かないのは確かですが、それよりも会社の信用に関わることなのが心配でした。
そこで上司には顛末を報告しました。
結果的に弁償代の一部を私の会社が負い、大部分を主催者が負うことで決着がつきました。(一度は私のミスとみなされたことと、今後の付き合いを加味しての折衷案)
資料の確認もせず、即座に私のミスと決めつけた先輩は、それまで一度も私と仕事をしたことがありませんでした。
個人的な付き合いもなく、人柄も知りません。
こいつは要注意。
とそれからは注意するようになりましたが、その後は絡むことがありませんでした。
私は後輩男性達と違い、誤解をされたと思ったらその都度説明をしていました。
そのため、「これだから女はうるさい」と一部先輩からウザがられていました。
そんな噂を聞いていたのかもしれないですね。
ミスを見つけたくて仕方なかったのか、一度怒ってしまったため引けなくなったのか。
とにかく、了見の狭い人だと残念に思いました。
男の意地とプライドを守る10年間
職場には「言い訳は格好悪い」と言って誤解を解かず、そのまま仲違いをして10年以上引きずっている人たちがいました。
なぜきちんと理由を説明しないのか!? と私にはまったく理解できませんでした。
誤解を解かずにストレスを抱え、「仕方ないこと」と諦めて針の筵で生活することが、言い訳をするより格好いいことと思っているでしょうか。
双方から個別に話を聞くと、共にまた仲良くしたいとい思っていたことがわかりました。
そこで予め双方に話を通した上で交流する機会を作りました。
しかしブランクが長かったこともあって、揉める以前ほどの関係には戻れませんでした。
溜め込んだストレスはプライドと直結していて、全てを払しょくするほど弱みをさらけ出せないようにも見えました。
プライドが傷つくのを最小限に抑えるために、余計なことを言わずにストレスが溜まる方を選ぶ。
そんな様子でした。
私からすると、「無駄なプライド」と思えました。
男性からすると、それこそ守りたいものなのでしょうか。
「言い訳はみっともない」のマウントは男性間で起こる?
私が勘違いを解いたり言い訳(事実の説明)をいちいちしていたからか、私に理不尽な言い方をする同僚男性は少なかったと思います。
女は初めから範囲外とされているし、女はうるさいから放っておけと思われていたのかもしれません。
後輩男性達の話では、もっと頻繁に理不尽を感じているようでした。
男性同士の間で、プライドと意地が出やすいのでしょうか。
男同士の付き合いも、女性同様なかなか大変だと感じました。
男社会の理不尽なストレスと若い世代の価値観の違い
夫は年配社員の話に続けて、こんなことを言いました。
「20代とかの最近の若い奴はさ、理不尽に納得しないで噛みつくんだよ」
後輩への愚痴が始まりました。
「言うべきことを言うのはいいんじゃない? 自分のせいじゃないのに、説明できなかった今までの方がおかしかったんだよ」
と私が言うと、
「俺はこれまでずっと耐えてきたんだよ。若い奴が噛みついて、先輩が怒りまくって、間に挟まれるのは俺ら中堅なんだよ~」
夫の泣き言でした。
収まりのつかなくなった先輩の怒りを、若い世代が受けとめることはありません。
先輩の収まりのつかない怒りがずっと我慢してきた中堅社員に向けられ、後輩からは「例の先輩の言う事おかしいっすよね。先輩(夫のこと)もちゃんと言わなきゃダメですよ」と責められるのだと言います。
若い世代の主張はもっともでした。
若い社員の言動は、かつての私にも重なりました。
だから我慢するタイプの社員に煙たがられたのでしょう。
女性はうるさい生き物だが、男だらけの環境に女性が増えると環境が整うと言われています。
煙たいことを散々言って、少しずつ理不尽を減らしていくのが女性の特徴なのかもしれません。
女性ばかりの環境もまた別の問題があり、男性が入ると秩序が守られやすくなると言われていますね。
若い世代は昔ながらの男性の理不尽を許さない、新たな価値観を持っているのでしょう。
それは女性的ともいえるのかもしれません。
いえ、そもそも性別で分けるものではなく、これまで「男性はこういうもの」「女性はこういうもの」という社会的先入観の根強さから意識を縛られていたものが、変わっている証なのかもしれませんね。
因みに私が男らしいと感じた上司は、プライドや意地を通すことは一切ありませんでした。
自分の失敗やできなかったことを反省と共にしっかり語る人で、ミスを無暗に責めたり理不尽な言動が一切ない人でした。
男性の中にはその人を「意気地なし」と評する人がいましたが、自分を飾らず、自分を守るために人を犠牲にしないその人こそ、男の意地が感じられる、格好いい男だと感じていました。
夫が無駄なストレスを抱えないよう、理不尽に当たる奴は「人として非常に格好悪い」と周知される社会になってほしいです。
既になっているのでしょうか?
でも未だに野放し状態なんですよね。
夫を含め、容認してしまう人たちがいるから。
モラハラと共に、なくなっていくことを願います。
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