16歳を過ぎた愛猫が度々鼻血を出しました。
医師に鼻腔腫瘍の可能性を指摘されました。
高齢のため検査を含め、腫瘍治療をしないと決めた我が家ですが、その後症状が見える度に動揺しました。
腫瘍の治療をしないと決めた我が家の精神的ドタバタと、愛猫の症状についてお知らせします。
経過
毛色と体型が似ていることから、愛猫の仮名をツチノコとします。
2月
ツチノコは今年2月に初めて鼻血を出しました。
驚いてすぐに病院に連れて行き、二週間分の抗生剤の処方を受けました。
薬で完全すれば鼻炎の範疇で、治療は終了と言われます。
薬の効果があったようで、早々にくしゃみや鼻血が治まります。
腫瘍じゃなかった。よかった。
そう安心していました。
4月末
その後コロナ自粛のストレスか(自粛中子どもたちが家で大暴れしていたため)、膀胱炎になりました。
再度病院にかかり、また抗生剤の処方を受けています。
膀胱炎の治療は長くかかる場合もあるそうですが、ツチノコの反応が良く数日で改善しました。
二週間薬を飲み切って治療を終えました。
8月
8月に入りすぐ、また派手に鼻血を出しました。
実は7月上旬くらいから度々鼻血を出していましたが、極微量で鼻の脇に少し染み出る程度で、本人も元気でしたし自然と治まりましたので様子を見ていました。(鼻血はすぐに病院にかかるのが理想です)
前年に足の腫れで入院してから入院や検査システムが整っている救急病院にかかっていましたが、鼻血の再発時には近場の動物病院にかかりました。
そこで処方されたのがビクタスという抗菌剤とゲンタロール点鼻薬でした。
二週間続けて症状が改善されなければ腫瘍の可能性が高いため、救急病院にかかるよう言われます。
服薬を開始して3日程度で鼻血が治まり、一週間でくしゃみもほぼなくなりました。
やっぱり腫瘍じゃなかったんだ。よかった。
ところが薬が飲み終わる二週間目の最終日、つまり薬が効いているはずの日に再度鼻血を飛び散らせます。
8月中頃
すぐに救急病院にかかりました。
ツチノコの担当医が不在だったため、別の若い獣医師が診てくれました。
鼻血は2月から一貫して左鼻からしか出ていないこと、薬を飲んでいても出血すること、8月には鼻詰まりが見られることから、腫瘍の可能性がかなり疑われると言われます。
腫瘍の検査を勧めるものの、多額の費用と猫に大きなストレスがかかることから、腫瘍だった場合に治療をすると決断をしてから検査をした方がよいと説明されました。
治療をしない決断
我が家は先住猫を腎臓病で亡くしています。
元気になってもらいたいという思いから治療にやっきになりましたが、先住猫に大きいストレスをかけてしまっただけで、大きな結果が得られませんでした。
最終的には医師からこう諭されました。
「自宅でゆっくり最期を過ごす方が先住君のためだと思います」
家族でゆっくり過ごした最期の時間は、かけがえのない、とてもいい時間となりました。
全身麻酔をかけて挑む検査は、リスクがあります。
ツチノコは別件で入院したことがありました。
体はよくなったのに、食欲が回復するまでに時間がかかりました。
明らかにストレスでした。
16歳の高齢で、治療をしても劇的に寿命が延びるわけではありません。
病院で診察台に乗ると心細さから私の懐に潜り込むツチノコ。……家族で静かに暮らす方が幸せなのではないかと感じていました。
再発して病院にかかる前に夫と話し合い、検査や治療をしないと結論を出していました。
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鼻炎の可能性をかけ、薬を試していくことになりました。
8月下旬
帰宅後、新たに処方された抗生剤を飲んでも、2日から3日に一度は鼻血を出すツチノコの姿を見ては心が乱れました。
「腫瘍の治療をしないことは正しいのだろうか?」
鼻腔腫瘍は進行すると顔の変形や眼球が押し出されたり鼻や目、口から出血があると言われます。
「見た目に大きく現れる変化を受け止められるのだろうか。
そんな状態になって、ツチノコは痛みや痒みで辛くならないのだろうか」
色々な思いが交錯しました。
悪性腫瘍ができ、苦しまないよう安楽死を選んだ知り合いがいたことを思い出しました。
しかしその後も「これでよかったのだろうか」と悩んだと言います。
ツチノコにとって何が最良なのかを考えました。
家族として暮らしてきたペットの犬や猫が、回復の見込みのない病気を抱え、苦痛に苦しみだした時、あなたならどのような選択を…
安楽死については、苦しむ姿を見たくない、変形した顔を見たくないなどの理由から選択するのは飼い主のエゴであり、あくまで末期で助からず苦しみが続くなど、ペットのために選択するべきだと再確認しました。
私ができることは、ツチノコがどうしたいかを感じ取ることだと思いました。
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9月
担当医に診てもらうことができました。
前回処方された抗生剤に大きな効果が見られなかったため、追加でステロイド剤の処方とネブライザーの治療を受けました。
ステロイド剤を飲み始めて一日以内に一度出血したものの、その後は一度も出血しませんでした。
症状は鼻詰まりで少し鼻が鳴る程度で元気でした。
一週間後の診察は担当医に緊急の処置が入ったため、腫瘍の検査を勧めた若い医師が診てくれました。
経過が良好だったため、今後ステロイド剤の量を減らすなど調整をしながら、続けていくことになりました。
ステロイド剤は鼻炎にも効きますが、リンパ腫などの腫瘍にも効くのだそうです。
このまま続けて、良くなっていけばいいと期待しました。
安心して帰宅する車内で、ツチノコの様子が激変しました。
酷い鼻鳴りをさせ、苦しがりました。
苦しみながらくしゃみと鼻血を出し、酷く嘔吐きました。
鼻からの出血も続きました。
あまりに苦しそうなので帰宅後病院に電話しました。
担当医ではなく、代理で診てくれた若い医師が対応してくれました。
腫瘍の場合は進行すると片鼻だけでなく両鼻が塞がるようになり、苦しむのは仕方がない。様子を見てほしい。
こんなに苦しそうなのに、こんな生活を死ぬまで続けなければいけないのか。
安楽死の言葉が頭に浮かびました。
その後三時間経っても鼻血を出しながら苦しんでいました。
若い医師から以前止血剤を勧められたことがありましたので、止血剤だけでももらおうと再度電話をしました。
ツチノコを連れて行けば止血剤の注射をすることができると聞き、苦しんでいましたが連れて行くことにしました。
一日に二度目の受診
担当医も代理で二回診てくれた若い医師も不在だったため、別のベテランな印象のある先生が診てくれました。
上に載せた動画を先生に見てもらいました。
今は少し落ち着きましたが、それでも苦しそうです。こんな状態が続くのが、ツチノコにとっていいのでしょうかと聞きました。
獣医師:「……確かに苦しそうですね。恐らく吸い込んで飲み込んでしまったのでしょう」
私:「こんな状態で、鼻炎の可能性は残っているものでしょうか?ネットで調べても、鼻腔腫瘍と確定しているように感じてしまいます」
獣医師:「 うーん。確かに症状からすると、腫瘍の可能性を強く疑うんです。でもこの動画の状態は、鼻炎でもあり得る症状です。吸い込んで咽るような状態に陥ったんだと思います」
私:「え、鼻炎でもあり得るんですか!?」
獣医師:「 ありますね。今出ている血も、鼻水に血が混じっている状態ですし。猫の鼻血は人間と違って危険なサインであることは確かですが、鼻炎を拗らせて鼻血を出しやすい子がいるんです。腫瘍の可能性が確かに高いようにも見えますが、鼻炎と症状が非常に似ているために、例えば顔の変形があるとか鼻血意外に明らかな変化がないと所見ではわかりません」
私:「……まだ鼻炎の可能性があるんですね」
微かな希望に縋るような、そんな状態でした。
獣医師:「検査をしなければ確実なことは言えません。症状を見たら腫瘍の可能性が高いですが、最初の出血が2月ですよね。 先生がカルテを確認しました。2月の出血が腫瘍が原因だとしたら、半年経っている今、ここに居られてないと思うんですよね。 犬や猫の腫瘍は人間とは違って進行が非常に速いんです。治療をしない場合は症状が出てから早ければ一か月、長くても半年で亡くなる子が多いです。半年たっている今、体重も落ちず食欲もあって顔の変形もないと、腫瘍でない可能性もあると言えます」
若い医師は腫瘍の可能性が限りなく高く、確定くらいの説明をしていたのですが……。
獣医師:「検査をしない限り、絶対に腫瘍だ、腫瘍じゃないと断言はできません。症状だけを見たら腫瘍である可能性が高いのは確かです。2月の鼻血と8月の鼻血の原因が違う可能性もあります。ただもともと鼻血を出しにくい猫が、別の要因で鼻血が続くのは珍しいとも言えます」
私:「止血剤は打ちますか?」
獣医師:「これは先生によっても意見が変わるのですが、止血剤は劇的に効く薬ではないんです。お守り程度に考えられているといいと思います。ステロイド剤の効果があったようなので、ステロイドの注射を打って、鼻の通りをよくするためにネブライザーを試してみるのはどうでしょうか」
以前ネブライザーを使用したときに少し苦しそうにしたように感じたのですが、その後の一週間はステロイド剤の効果なのか状態が良かったので、再度試してみることにしました。
止血剤は使用せず、ステロイドの注射をしてもらいました。
血は止まり、少しのくしゃみと鼻づまりがある程度に戻りました。
一日に二度も診察を受け苦しい時間も長かったため、食欲が少し落ちていましたが、7割程度食事を摂ることができました。 一日経った今はのんびり寛いでいます。
家族の受け止め方
急変し腫瘍が進行しているのかもしれないと思った私は、病院に行く前に仕事場の夫に状況をメールで連絡しました。
私がもうダメなのかもしれないと思っていましたので、夫にもそう伝わりました。
私は血の気が引いていたと思います。ツチノコは私が独身時代から飼っていた子です。
ツチノコにどれだけ頼っていたかを痛感していました。
子どもたちが学校や幼稚園から帰宅するのを待って二度目の診察に向かいました。ツチノコが苦しんでいるから静かにしてあげてと子どもたちにお願いすると、いつもは全く言うことを聞かないのにツチノコの心配をして静かに過ごしていました。
二度目の診察を終えてすっかりツチノコの体調が落ち着き、鼻炎の可能性はあると確認できたことで、気分が一転します。 鼻炎の可能性が少なからずある!と喜ぶ私に夫は呆気に取られていました。
この先どうなるのかわかりません。また動揺するかもしれません。少しずつでも覚悟をつけて強くなりたいです。
2023年6月追記