高齢の猫や犬・積極的治療はどこまで!?治療と看取りの境

猫や犬は体の不調を言葉で伝えてくれません。

目に見えて不調が出た頃には、病気が進行していることが少なくありません。

猫は神経質な動物であることもあり、入院や治療が大きなストレスとなることも。

病気の進行具合や年齢、精神面、金銭面などから、治療をするべきか見守るか悩むことがあると思います。

主に猫の積極的治療と看取りに切り替える境について、経験を踏まえて個人的思いを綴ります。

猫は家族


私と夫は独身時代からそれぞれ一匹の猫を飼っていました。

どちらも元は野良や捨て猫で、保護をしたり、里親となって育ててきました。

結婚し、二匹も一緒に暮らし始めます。
相性が良かったのか、異性の組み合わせがよかったのか、二匹は時に喧嘩をしながらも追いかけっこをしたり、一緒に眠るなど仲良くしていました。(去勢、避妊手術済)

私と夫の間に子どもが産まれ子育てに切磋琢磨している間、二匹は遠巻きながら温かく見守ってくれました。

二人目の子どもを出産し、三ヶ月が経った頃、夫が飼っていた雄猫の様子が明らかにおかしくなりました。

猫の腎臓病


慌てて病院に連れて行き血液検査をすると、末期の腎臓病であることがわかりました。

数値が非常に悪く、生きているのが不思議なくらいだと言われます。

急遽設備の整った救急病院に入院し、点滴治療をすることになりました。
稀に治療が反応し、危機的数値から回復することもある、と聞いてのことでした。


雄猫は当時10歳でした。
非常に神経質な子で、来客には全身の毛を逆立てて怒り、攻撃し、怪我を負わせる子でした。

ここでは先住君と呼びます。


夫にべたべたに甘える子で、仕事から帰宅した夫に常について回りました。
先住君にとって私は夫を取り合うライバルな様で、攻撃的になることがよくあり、近づいてくることは殆どありませんでした。



末期の腎臓病について医師は、「きちんと観察をしていれば気づいたはず」と言いました。

腎臓病は進行するにつれて、大量の水を飲み、大量の尿を出します。
顕著な変化が見られる病気です。


飲み水がやたら減ることに気が付いていました。
二匹で一つの皿を共有しており、二匹がよく飲んでいるのだろうと思っていました。
水を飲むことはいいことだと、人間と同じように考えていました。


トイレの水分が多いことも気が付いていました。

当時古い家に住んでおり、トイレの真上にガス給湯器がありました。
火種を点けて点火する非常に古い給湯器で、水が滴っていました。

水が垂れないようにタオルを巻いていましたが、トイレの多量の水分は、塞ぎきれなかった水が滴り落ちてしまったのだと安易に考えていました。


妊娠中と産後は思考がよく回らず、常に眠気とだるさの中、上の子の世話や家事で手一杯で、猫二匹の観察が全くできていませんでした。
本当に、全くと言っていいほど関心が向けられていませんでした。


先住君がこうなるまで気が付かなかったのは、私のせいでした。

自分の無関心と無知が情けなく、猫の病気について予め知ろうともしていなかった自分を恥じました。


入院は10日間に及びました。
猫は神経質なため、最長でも10日間が限界なのだそうです。


先住君は入院中、医師たちを激しく攻撃しました。

夫は仕事が忙しく見舞いに行けなかったので、私が毎日通いました。

フラフラな体でゲージ越しに私にも多少怒っていましたが、「やっぱり飼い主さんにはあまり怒りませんね。」と医師は言っていました。「飼い主さんがいないときは常に緊張状態なんです。」


退院時、ごくわずかに数値が回復しましたが、危険な状態であることは変わりませんでした。
点滴でどうにかなる状態でないことがわかりました。


医師から、「本来であれば医師は治療を勧めるべき立場なのですが、回復の見込みが殆どなく、通院が非常に大きなストレスとなることがわかります。飼い主さんには柔和ですので、自宅でゆっくり最期を過ごす方が先住君のためだと思います。」と言われました。

治療と看取り


私と夫は涙ながらに医師の言葉を受け止め、納得しました。


「助かってほしい」と治療に励もうとしてしまうけど、それは飼い主の勝手であって、本人のためにならないことがあると知りました。


「水分が取れず苦しいと思いますので、スポイトなどで口に含ませてあげてください。最期は大きく痙攣することがあります。よく見られる症状ですので、驚かないでください。」


医師からスポイトを受け取り、一切の治療を諦めて帰宅しました。


それから一週間は穏やかに過ごしました。

その後先住君は階段を上れなくなり、私や夫が抱っこして移動させました。


夫は仕事から帰ると先住君を抱っこし続けました。

いよいよ逝ってしまうのではと気が気でなく、昼夜を問わず先住君の様子を窺う日々が続いていました。

臨終


夫が仕事で不在の晩、深夜に何度か先住君の様子を窺いました。
夫が不在なら、私だけでも看取ろうと思っていました。

しかし痙攣を一人で見るのは辛いとも思っていました。


先住君の頭を撫でると、「やめろ」とでも言いたそうに足で手を払いました。
ツンデレだった先住君らしい行動でした。

最近はそんな元気もなかったのに、今夜は払う元気があるのだと安心しました。

何日も眠れていなかったこともあり、安心して猛烈な眠気が襲ってきました。

「あと三時間もすればパパが帰って来るからね。」そう声をかけて寝室に戻り、夫に「今夜は大丈夫そう。」とメールを送って眠りにつきました。



ポンポンと身体を叩かれました。
目を覚ますと夫がいました。

そして私に首を振りました。


飛び起きて先住君がいる籠に向かうと、硬直した彼がそこにいました。


私が眠りについた三時間後、夫が帰宅した時には既に硬直していたと言います。
私が先住君に声をかけてすぐに亡くなったようでした。


病気を見逃してしまった後悔、看取れなかった後悔が長く残りました。

家族で過ごす時間


治療を諦めてから最期まで10日間の時間は、かけがえのない時間でした。


先住君は大好きな夫にこれまでよりたくさん抱っこされ、幸せそうに見えました。

私にも甘える仕草をしたり、日向ぼっこをしたり、とても穏やかでした。


末期になるまで気がつけなかったこと、最期の瞬間を看取れなかったことを後悔しましたが、無理に通院を続けなかったことに後悔はありません。


通院を続ければ数日から数週間長く生きられたかもしれません。

しかし先住君と私たち家族にはこれが最善だったと思っています。

猫の鼻血


私が独身時代から飼っていた猫は雌猫で、今年16歳になりました。
人間で言うと80歳です。

仮にツチノコと呼びます。(似ているので)


一昨年から度々体を悪くして、検査や服薬をしてきました。

一昨年は先天性の骨の奇形と肉の癒着からの痛みがあり、現在まで継続してサプリを服用しています。

昨年は足が大きく腫れ、食欲不振や体力の低下もあり、腫瘍の可能性があることから10日間入院、抗生物質の点滴が覿面に効いたことから細菌感染だったと結論付け経過観察の通院を続けた後、治療を終えています。


今年はコロナの影響でストレスが溜まり、膀胱炎になり通院。
その後くしゃみと共に鼻血を出し、抗生物質で同時に治療し、症状が収まったため治療を終えました。


しかしこの夏にくしゃみと鼻血が再発します。


二週間の抗生物質をもらい、一時は症状がなくなりましたが、また再発しました。


ツチノコは生後三ヶ月の時に保護活動をしている方から譲り受けました。
元は野良猫だったと聞いています。

当時から軽いくしゃみをしていました。
猫の風邪は一度かかると潜在的に残り、ストレスがかかったり体調を崩すと症状が出ると言います。

度重なる体調不良と、コロナで外に出られなくなった子どもたちが大騒ぎするストレスから、慢性鼻炎になったのかもしれないと当初は考えていました。


しかし鼻血は左鼻からしか出てきません。
最近は鼻づまりもあり、苦しそうです。


鼻に腫瘍ができた場合の、典型的症状だと言われました。




「腫瘍の可能性があるので検査を勧めますが、腫瘍が確定した後にどうするかを決めてから検査を受けるか決めてください。
CTやMRIを撮るのに10万程度の出費があります。全身麻酔をするので体への負担もあります。
摘出手術や抗がん剤治療をしないのであれば、お勧めしません。
腫瘍であることがわかったら、細胞を取って検査します。約5万円かかります。
その後手術や抗がん剤の費用が発生し、放射線治療をする場合は大学病院に通う必要があります。どうされますか。」

医師から問われました。

命の長さ


最初に鼻血を出した時、その場でネットで調べました。
人間と違い、鼻血は危険なサインと知り、すぐに病院に連れて行きました。

再発を二度繰り返し、不安になって調べれば調べるほど、腫瘍の可能性が高いことしかわかりませんでした。




去年足を腫らし入院したあと、体は回復したのに食欲が戻るまでに時間がかかりました。
人懐っこく素直なタイプですが、入院が大きなストレスとなったのは確かでした。


私が毎日見舞いに行くと、一緒に帰りたいと身体を寄せ鳴きました。
元気になるとわかっていたので入院を続行しましたが、腫瘍の場合、治療してどの程度よくなるのかわかりません。


「放射線治療で寿命近くまで生きられるケースがありますが、治療をしても長く生きられない場合も多くあります。副作用がある場合もあります。
家猫の平均寿命が18歳として、今16歳です。あとの2年をどう考えるかだと思います。」

ツチノコの命の時間をどう考えるのか決めなければなりません。



二度目の再発の時、夫と今後について相談していました。

体にたくさんの負担をかけても長く生きられない可能性が高く、高齢なため体力の心配もあります。

何がツチノコのためになるのかを考えたら、家から離れて大きな治療をするより、時間を大切に家族で一緒に過ごす方がいいだろうと答えが出ていました。


「“今は”積極的な治療を考えていません。」と、つい含みを持たせてしまいましたが、伝えました。

当面の治療


腫瘍の検査を受けず、鼻炎の治療を一通り試すことにしました。


鼻炎はウイルス性や細菌性など様々な原因が考えられるため、想定して薬を試していくことになります。

一通り試し、効果がなければ後は見守るしかないということです。


ツチノコは家に帰り、リラックスしています。
鼻詰まりが辛そうですが、今のところ元気で食欲もあります。

たまにくしゃみと鼻血を出しますが、一日に一、二度程度です。


今後はどうなるのでしょうか。

奇跡的に薬が効いてくれたらいいのにな。

正直衰弱していくツチノコを見たくありません。



しかし飼い主の責任として、人生のパートナーとして、一緒に温かい日々を過ごして行きたいと思います。


その後の話☟




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