裸体の芸術と卑猥の境・ショーパブ、ストリップバー、性をテーマにした舞台の鑑賞で感じたこと

「一糸まとわぬ裸体をさらす」

事実が変わらなくても、見る側、見られる側の意識によって、それは芸術にも卑猥にもなりえます。

その境はどこにあるのか。

自身の経験から考察します。

ショーパブは芸術か卑猥か

ある地方都市の繁華街に、有名なショーパブがありました。

ショーパブが入っているビルはピンクな店で占められていて、風俗ビルとして有名でした。

今から15年程度昔、当時の彼氏がそのショーパブのボーイをしていました。

金を稼ぐためにボーイになりましたが、結局大した金にはならず、キャストの女性達の態度が最悪だとよく愚痴っていました。

女性達は上半身を出し、下半身も最低限の着衣しかつけない格好で踊ります。
客席を回り、少ない衣類にチップを挟んでもらいステージに戻ります。

客が特別な金を払うと、指名されたキャストを呼んで個室に入ることができます。

表向きはどうかわかりませんが、個室では客がキャストに触ることが黙認されていました。
客は発情するのが普通でした。

店では最後まで相手をすることが“一応”禁止されていましたので、多くの客は本番ができる店などにはしごするのが、よくある流れでした。

キャストは男性たちの欲望に合わせた見世物ですので、心と行動に乖離が生まれ、ストレスが溜まるのでしょう。

裏では客のことをボロクソに言い、ボーイにも姿恰好から行動までありとあらゆることに悪態をつけていたようです。
チップをもらう際など、客に触られたくないのに触られることへの不満が多いようでした。

彼氏はボーイを始めてからキャスト達の愚痴ばかり言うようになり、口調も非常に激しくなっていきました。
キャスト達の攻撃的な非難と同様に、心底憎むような言い方をするので、「夜の世界は厳しい」と思ったものでした。

彼氏がキャスト女性達の胸を見て仕事をしているのは嫌ではないのか、と度々友人に聞かれましたが、彼氏を通じてそういう世界を知れることが面白く、抵抗を感じたことはありませんでした。

私が地方都市から都内に移住したこともあり、会社勤めをしている私と夜働いている彼氏とのすれ違いが続きました。
少しして別れ、夜の店の話しを聞けなくなりました。

彼氏は私を追いかけて都内に出るために金を稼ごうとしていましたので、必要がなくなったからなのか、その後ボーイを止めたと聞きました。

とにかく話しを聞く限りは、客はキャストを性的対象とみていることが多いようでした。
ショーパブは「性的」であり、「卑猥」に近いものと感じました。

ストリップバーは芸術か卑猥か

都内に暮らし始めて少ししたころ、友人に「一緒に行ってほしいところがある」と頼まれました。

港区の倉庫のような建物の中に、男性キャストのストリップバーがあるのだと言います。
興味があるけれど一人では怖くて行けないので、付き合ってほしいということでした。

未経験でしたし面白そうだと思い、承諾しました。

繁華街から少し外れ、目立たない倉庫のような建物の中に店はありました。

私は店の情報を知らず、友人も住所だけを頼りに行ったので迷いました。
やっと着いたときにはステージが始まっていて、末席に座ることになりました。

入場料は九千円だったと思います。
それとは別に、一万円単位で店内で使える紙幣に似せたチップに交換することができます。

好みのキャストが自分の席の近くを練り歩く際、チップを衣類に挟むのです。

このシステムは地方都市のショーパブと同じでした。

私も友人も興味本位で行きましたので、チップの換金はしませんでした。

ステージでは8~10人程度、逞しい体つきの白人男性たちが音楽に合わせて踊っていました。

客席のキャパシティは40名程度だったように思います。
客席はパイプ椅子で、一席ずつ間が取られていました。
恐らくはキャストが客の周囲を回りやすいように考えられているのだと思います。

海外ドラマで警察がつけているような帽子を被り、ノースリーブの白のカッターシャツを着て、下半身は黒くエナメル質のブーメランパンツ、黒いブーツを履いていました。

ブーメランパンツには黒いサスペンダーがつけられています。

ストリップバーですので、男性キャスト達は踊りながらカッターシャツを脱ぎました。

帽子とブーメランパンツとサスペンダーの状態で、彼らが客席を回ります。
明るいとも暗いとも言えない会場内を、照明がせわしなく動きました。

そこで初めて気が付いたのですが、客席にはVIP席のような、ステージを目の前に特別感を持って作られた客席がありました。

その席には、銀髪のスタイルのいい美人らしき女性が座っていました。

銀髪は明らかなウイッグで、メイクは欧米風。露出度が高くボディラインが出る服装、坂道を下るときは危険なほど高いヒールを履いている、明らかな日本人でした。
目当てのキャストがいるようで精一杯姿勢を正し、緊張しながらも余裕があるように装っているのがわかりました。

「あのウイッグは何のためなのか」と疑問に思った瞬間、同じように金髪のウイッグを着け、似たような恰好をしている別の客を見つけます。

彼女たちはキャストに気に入られるために、彼らの出身国のファッションを真似ているようでした。

彼女たちはたくさんのチップを、お気に入りらしいキャストのサスペンダーに挟んでいきました。
サスペンダーの役割は、チップを挟むためだったようです。

キャスト達がステージに戻り、ストリップショーが再開しました。

VIP席の女性が一人ステージに招かれ、彼女の周りをキャスト達が音楽に合わせて官能的な動きをしながら回りました。
女性が席に戻るよう促され、最後のパンツを取るしぐさをした瞬間、場内が暗転。ショーの一曲が終了しました。

私と友人は面白みを感じられず、途中で退席しました。

「最後は見せないらしい」という発見と「女性客のインパクトが強すぎた」という衝撃が残りました。

そもそもヌードデッサンを経験してきていますので、見たところでどうとも思わないのですが、最後まで見せないなら男性キャストのストリップバーはどれだけ需要があるのか? と疑問に思いました。

男性の裸は、水着などで見慣れていますからね。

友人は海外暮らしが長く、色々な国の男性と付き合っていましたので「外人はロングの黒髪とか、日本人らしい日本人が好きだから、ファッションを外国に寄せたら逆効果なんだよね」と呟いていました。

男性のストリップバーは性的な印象は少なかったように思います。
しかし芸術かと聞かれると、それもまた違いました。

「なんだかよくわからないもの」という位置づけでした。

性行為をテーマにした舞台は芸術か卑猥か

男性のストリップバーに行った頃、別の友人に「舞台を観に行かないか」と誘われました。

テーマが「性」で過激な表現があるため、受け入れられない人もいるのだと友人は前置きをしました。
キャパシティが立ち見を含めて100人程度の小さな芝居小屋で公演され、大きくは広報されていない特殊な舞台なのだそうです。

客は女性限定とされていました。

「とても美しくて、素敵だと思うのだけど、中々理解されないの」と友人は言いました。

麒麟なら性的な表現も受け入れるのではないかと思ったようです。
「同士」を獲たい目的があるようでした。

そんな特殊な舞台なら一度見てみようと、チケットの購入を頼みました。
詳しくはわからないのですが、ファンからの口コミつてに、関係者から直接チケットを買うシステムなようでした。

客席は小さな芝居小屋によくある、パンチカーペットが貼られた平台を段状に積み重ねられたものでした。
誘導された座席の場所は、舞台中央の数段上がった場所で、舞台を観るには良いとされる場所でした。

女性限定のため、女性ばかりが40人近く入っていたと思います。

開演まで場内を見ていると、上部のバトンに仕掛けられた照明が、私の左横にシュートされているのがわかりました。

小さな劇場ですので、客席にキャストが出てくるのは珍しくありません。
ここで何かの演出があるのだと思いました。

公演が始まりました。

雷と雨の効果音が続きます。

キャストは男性一人に女性が二人でした。

セットはありません。黒い舞台に照明が落とされているだけでした。

男性一人と女性二人が舞台上の床でゴロゴロと舞うように動いたのち、男性は衣類を脱いでいきました。
殆ど身に着けない状態で客席に現れ、私の左横に座り、考え込むようなポーズを取ります。

演出とはいえ、求めていないのに裸同然の男性に隣に来られるのは「微妙」と思いながら、男性が舞台に戻るのを待ちました。

舞台に戻った男性は、女性二人に介助されながら衣類を全て取り、全裸になりました。

男性は客席に足を向けて仰向けに寝転び、両手両足を床につき、腹を突き上げる動きを何度も繰り返しました。
照明が暗めに調整されていましたが、全て見えます。

比喩的な動きではなく、音に合わせるわけでもなく、性行為そのものの動きのように感じられました。

終始セリフはなく、その行為が10分、20分と続きました。

性行為か自慰行為、恐らくは自慰行為を表現していたのだと思います。
男性は途中性的反応を見せていました。

最後は大きな雷の音と共に暗転し、終演となりました。
最後にキャストが舞台で挨拶をすることもなく、退場を促されました。

「どうだった!?」と友人はわくわくした表情で聞いてきましたが、正直「私は何を見せられたのだ」と意味が分かりませんでした。

私の反応が良くないと分かったのか、友人は「中々ね、難しい内容だと思うんだけど、幻想的で美しい芸術だと思うんだ」と力説を続けました。

「芸術なら、女性限定にする意味が分からないな。芸術に性別は関係ないんじゃない? キャストの男性が、まさに自慰行為をすべく女性限定としているように見えて、あまりいい気持ちはしなかった」と言うと、「女性が性を感じるには、男性客がいると人目を気にして観に行けないから、配慮だと思う」と友人は言いました。

なるほど。そういうこともあるのだろうかと思いました。

しかしあれが芸術なのかと聞かれると、私の中では違いました。
何が性か、何が芸術かは個人の感覚によって違うのだと思いました。

それにしてもチケットぴあなどに出さず、直接のチケット販売に限るあたり、公然わいせつ罪に当たるのを自覚しての公演だったのでしょう。
それも芸術と言えば表現の自由が保障されるべきなのでしょうかね。

芸術と卑猥の境

私の感覚が柔軟性に欠けるのか、ストリップバーも性行為をテーマにした舞台も、芸術も感じなければ、性的な興奮もありませんでした。

単純に好みの問題なのでしょうか。

どんな意味であってもいいのですが、単純に面白みを見つけられなかったことが残念でした。

舞台に誘ってくれた友人には「こういう世界があるとは知らなかった。勉強になった」と伝えたものの、未だに理解できません。

理解するものではないのでしょうかね。
不快感しかなかったんですよね。

魅力を具体的に語ってくれる方がいたら、是非教えてください。

 

芸術と卑猥の境は私にはまだ難しいようです。
そして芸術の幅は広い。

 

難しい。

 

 

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