家を新築するにあたり、譲れない希望の筆頭が天然一枚板のカウンターを作ることでした。
通販で探したり、天然木を扱っている実店舗を見て回りました。
乾燥済みと売られているものでも、その後数センチ単位で歪む木材が少なくないことがわかります。
調べても奥が深く、素人が判断するには限界を感じ、木材選びが難航しました。
しかし偶然入った伊東のお店で、条件に合う板と出会います。
興味のなかった種類の板でしたが、店長の木材への愛と情熱と、十分すぎる説明により、購入に到りました。
一連の経緯と、一枚板を購入する際にポイントとなる項目についてお知らせします。
一枚板の魅力・杢目
天然木の一枚板は手入れがされていれば、100年単位で使用し続けることができます。
“家の歴史と共に磨かれていくカウンターを作りたい”家づくりにおいて抱いた、一番の希望でした。
元々木材が好きな私は(真鍮やステンレスも好きですが)、木の杢目がよく見えて、耳のある板が希望でした。
木の端の、幹の表面に当たる部分が耳です。
寿司屋のカウンターなどに使用されるのは、耳を切り落とし、直角に切られたものが多いようです。
誤ってグラスなどを耳に置いてしまうと床に落ちる危険性があるからです。
新居のキッチンカウンターに使用したいと考え、W2500mm、奥行きはD600~800mmを想定し、探しました。
材は栃が第一希望でした。
栃は縮み杢(ちぢみもく)と呼ばれるモヤモヤとした杢目が美しく見えるからです。
☝ちょっとわかりにくいですが、モヤモヤと光って波打つ杢目が縮み杢やトラ杢と呼ばれる模様です。
これは表面がガタガタなのではなく、浮き出るように見える模様なのです。
見る角度によって輝き方が変わります。非常に美しい杢目です。
https://solidwood.jp/top/woodgrain
栃は切り出した時には白っぽい色になるのが特徴です。
紫外線に当たることで変化し、経年変化を経て、あめ色になることでも知られています。
しかしこの栃は人気が高く、また実を落とす木でもあるため、実を食べて生きる動物たちのために保護されていて、近年価格が高騰する材となっています。
特に縮み木が出る材については、ダイニングテーブルのサイズだと100万することも珍しくないのだとか。
それでも栃がいいなと思いながら、色々な店を探しました。
インターネットで仕上げ前の切り出したままの木材を探しました。
安い材もあり、魅力的ではあったのですが、どんな保管をされているのか、どれだけの乾燥がされていてどれだけのゆがみが出る可能性があるのかなど、実際に見て、プロに聞かないとわからないという不安がありました。
【伊東】かりゆし工房・いちまいのいた
ある日、一枚板を扱う店を探しに、伊東に向かいました。
観光がてら思い付きで向かってしまったため、寄ろうと思っていた店が定休日でガックリ。
しかし売り物らしい板が雨ざらしになっていたので、どちらにしても購入は控えたと思います。
仕方がないのでそのあたりをドライブすると、すぐに別の店を発見しました。
それまで気が付かなかった小さな店でしたが、開いていたので入ってみました。
それが「かりゆし工房」でした。
中の写真は家族が映っているものしかなかったので、モザイクをかけています。
右奥に一枚板が並んでいます。
店内を見る限りは扱っている数が少なく感じましたが、店奥にたくさんの材が置かれていて、見せてもらうことができました。
かりゆし工房の店長は、木材愛が凄い!!
本当に凄い!
私も好きなものについては、熱いと言われることが多々あるのですが、店長を超えられる人は中々いないように思います。
実は我が家、予算が非常に安かったんです。
恥ずかしい話ですが、10万円台で見つけたいと思っていました。
店に予算を聞かれて素直に言うと、ほぼ門前払いのような予算です。
しかしこちらの店長は違いました。
凄く忙しいらしい中現れた若い店長でした。
恐らく当時40歳そこそこでしょうか。
我が家の予算を聞いたにも関わらず、全く手の届かない木材の説明まで約二時間、物を見せてくれながら説明を続けてくれました。
私は興味があることは手に入らないものだとしても「知りたい」と思う質で、質問をしたからだとも思うのですが、大抵の店では「安い客」と知ると、あまり熱心に対応してくれないんですよね。
時間は有限ですし商売ですから仕方ありません。
私もいつも店員の反応を見て引くのですが、こちらの店長は私が「こんなに時間取って大丈夫?」と思うほど熱心に、全ての質問に丁寧に答えてくれました。
縮み杢が好きだと言ったら、色々な木材の杢をこれでもか! と見せてきました。
その姿に夫も感動。
希望した栃は予算を大幅に超えること、そして栃は真っ直ぐに伸びる木でないために歪みが出やすく、管理が難しいと説明され、納得の上諦めました。
マホガニー
予算内に収まるのはシポマホガニーと呼ばれる木でした。
仕上げ前の写真☟
W2300×D700~750(耳含む)×H45mm
安定性や耐久性が高く、完全乾燥済みで今後殆ど歪むことはないだろうとのことでした。
縮み杢もあるよと、木の魅力を存分に語ってくれます。
☟これは私が仕上げた後の写真です。
写真だと窪みがあるように見えるでしょうか。
表面はフラットですが、モヤモヤと模様が浮き出ているため、そのように見えます。
歪みを確認する
歪み、捻じれがないかを確認します。
木材を切り出すのは機械です。
切り出した後にさらに乾燥させ、歪みを取る加工が必要です。
この板は既に歪みが取られたものでした。
その後は歪みは出ていません。
歪みが出ていれば、今後も進む可能性があるので注意が必要です。
歪みが出ていないことを、目の前で測って教えてくれます。
含水率
木材がどれだけ水分を含んでいるか、含水率を確認します。
含水率が高いと、今後乾燥が進むことになります。
含水率%=(乾燥前重量ー全乾重量)÷乾燥後重量(g)×100で表すことができます。
12.0%でした。
乾燥材の基準が含水率20%と言われていますので、かなり乾燥が進んだ材だということがわかります。
一般的に12.0%まで含水率が落ちていれば、よほど湿度の高い場所で長期間使用しない限り歪むことはありません。
お店によって「乾燥済み」とうたう基準が違うようなので、購入を検討している方は含水率を確認することをお勧めします。
歪みやねじれが生じてしまうと、素人がもとに戻すのは非常に難しいです。
しっかり乾燥が済んだ木材であれば、水をかけても染み込んで腐ることはないそうです。
※プールに浸からせたり、雨ざらしだと染み込んで腐る原因になります。
水に濡らして含水率を見たり等、色々と説明をしてくれました。
一枚板を購入
私も夫も、これだけ木材への愛が溢れる人の言うことなら間違いはないと確信し、購入を決めました。
余裕のある予算内でした。
恐らく、きちんと乾燥していてこのサイズでこの価格は安いと思います。
仕上げは別料金です。2万円から5万程度だったでしょうか。
私は自分で仕上げをしたかったので、金額はうろ覚えです。
仕上げをするときの注意点や、オイルのことなどを教えてもらい、送料を払って後日納品してもらうことにしました。
店長のお勧めの仕上げ油はくるみ油でした。
かりゆし工房内装
かりゆし工房のお手洗いをお借りしました。
ドアのデザインが非常に好みで、許可を取って写真を撮らせていただきました。
店長が自ら内装に手を入れているそうです。
急いで撮ったので斜めですが……。
そして店の扉が古い扉を使った吊り戸でした。
私の好みでした。
☝この真ん中の戸が、☟のように吊られています。
余談でした。
桧原水
かりゆし工房には、木の皿やカトラリーなどの小物が売られています。
その中に「桧原水(ひのきげんすい)」というものがあります。
桧から抽出された無添加の樹木水です。
桧の香りがします。
私は桧花粉症がありますが、花粉は入っていないためアレルギーは起こしません。
これを夫が気に入り、詰め替えを買い足して使っています。
部屋の乾燥対策や消臭などにいいそうです。
私はあまり関心がないのですが、夫が気に入っているので紹介しました。
一枚板は私が自力で仕上げました。
それは別記事に書いています。
一枚板の購入レポートと、かりゆし工房の紹介でした。