高齢化が進む地域に引っ越して二年目に、自治会役員当番が回ってきました。
私は手のかかる一歳の長女の相手をし、次女を妊娠していて悪阻中でした。
夫は会議に出席するために会社を休まねばならず、手当てが減り、査定にも響いて収入が減りました。
順番だということで仕方なく役員を引き受けたのですが、意外と悪いことばかりではありませんでした。
そして高齢で役員を引き受けた方に、思わぬ光明がありました。
自治会の思わぬ効果について記します。
高齢化地域の自治会存続と仕事量
我が家は高度成長期に一気に宅地化された地域にあります。
自治会もしっかりと作られました。
そして今。
地域の高齢化が進んだ影響で、役員の仕事を回避しようと自治会の退会者が続いています。
残された新参者の我が家のような若い世帯が、自治会役員を数年ごとに担わねばならなくなるかもという危機に直面しています。
夫婦ともに仕事をするのが普通になっていて、昔と違い子どもだけで習い事に行かせるのは危険なので送迎があるなど、自治会の出席が難しい状況にあります。
自治会は若い世帯に期待していますが、その前に仕事の簡素化が必要です。
我が家が担当した仕事内容を挙げると、以下のようになります。
〇夏祭りの出店者担当 月に1回~会期が近くなると2回の会議。出店者説明会、夏祭り二日前から当日、翌々日の片づけまで出席。
〇交通安全担当 月に一回の会議の他、各イベントに月一回以上参加の役割分担あり。
夫には町会の会議の出席をお願いしました。
私は退職前の仕事に関連していたため、夏祭りの出店者担当と、交通安全担当(なぜか女性指定でした)をしました。
疑問だったのは交通安全担当でした。
始まるまでは地域の小学生などの見守りをしたり、道路標識の設置検討などをするのかと思っていましたが、そういった活動は一切ありませんでした。
警察署の交通安全イベントや総会に参加し、地域の高齢者サークルのイベントや総会の受付手伝い、ごみ処理施設の見学の頭数を増やすための活動が求められました。
これは必要な仕事なのか? ともやもやとしながらも、幼い長女を連れて夜に会議に出席しました。
地域の方と揉めたくなくて、「この仕事は不要では?」とは言えませんでした。
妊娠後期にキャンペーンの手伝いで雨の駅前で配布物を配ったことがあります。
小一時間かけて通行人に配布活動をするのですが、飽きてしまった長女が私の手を振り払って走り出しました。
車が近くを走っているため、子どもを一人で走らせるわけにいきません。
妊娠中の大きなお腹を抱えて、慌てて走って追いかけました。
雨で道路が濡れていたため、滑って転びました。
その瞬間、股が濡れる感覚がありました。
やばい!
と思いましたが、すぐに長女を追いかけて捕まえました。
周囲は驚いてみていましたが、少し距離があったため誰も助けてはくれませんでした。
残り少なくなっていた配布物を配り終えて、先に帰らせてもらい病院にかかりました。
結果的に無事だったのですが、肝を冷やしました。
自治会の仕事って、どこまで責任感を持って挑むべきなのか疑問に思いました。
役員をして心身ともに若返った、ある高齢男性の話
夏祭りの担当者の中に、70代中盤の男性がいました。
男性は持病があり、夏祭りが終わったら入院することが決まっていました。
祭りの担当は「無理のない範囲で参加する」と自己紹介で離しました。
当初は自発的な発言がありませんでした。
自己紹介で言っていた通り、活動に消極的でした。
そういう方がいるのは仕方のないことです。
無理をするのはよくありません。義務感で参加されているのだろうと思いました。
自治会の仕事がある男性に起こした変化
夏祭りの準備は滞りなく進みました。
担当者間で揉める年度があるようですが、私が役員を担当した年度は総じてコミュニケーションが円滑でした。
私は相変わらず悪阻が続いていました。
会議を抜け出してトイレで嘔吐して戻るなどしましたが、楽しく役割をこなしました。
70代の男性は、学校から借りる備品の管理を担当していました。
学校に連絡を取り、学校の先生と話して備品を確認。ボランティアを募って取り仕切り、備品の拭き掃除をした後に祭り会場に搬入、掃除をして返却する仕事です。
その男性は「私はできない」等言うことがありましたが、共に備品管理を担当していた高齢女性達は男性の指示を待つタイプの方でしたので、必然的にその男性が主導しなければなりませんでした。
例年夏祭りを支えているサポーターが男性に助け舟を出しながらではありましたが、仕事は順調に進んで行きました。
驚くことに、仕事が進むにつれて男性はみるみる元気になっていきました。
まず目線が変わりました。
下を見ていた視線が正面を見るようになったのです。
弱弱しかった声に、張りが出るようになりました。
引きずるように歩いていたのが、しっかりとした足取りになりました。
足元がおぼつかない高齢男性が、コンテナに上って見たもの
男性の変化はあからさまで、度々夏祭りの担当者内で噂になりました。
祭り当日は天気に恵まれて、盛況に終了しました。
祭りの翌日、祭りで出たゴミを業者が回収しに来る予定になっていました。
その立ち合いが、私の最後の役割でした。
回収日の早朝に、他の祭り担当者から電話をもらいました。
たまたま散歩中に付近を通ったところ、ゴミが入ったコンテナをカラスが荒していたというのです。
コンテナは上部が開いているものでした。
鳥に荒らされないようカバーをしていたのですが、風で一部が剥がれてしまったようです。
現場に向かうと、例の70代中盤の男性と、同じく祭り担当をしていた70代女性がコンテナに登ってカバーをかけ直してくれていました。
コンテナは2mほどの高さがあり、周辺のものに足をかけて上らなければなりません。
私は二人の姿を見て驚きました。
30代になったばかりの私が、70代の彼らの代わりをするべきだと思いました。
私がやりますから、下りてくださいと叫びましたが、妊娠初期の私には任せられないから、コンテナには上がらずに見ていてとお願いされました。
カバーをかけ終えてコンテナから無事に下りた二人は、「こんな高いところによじ登ったのは久しぶりだ」と大笑いしました。
もし怪我でもしたら大変だとハラハラしたものの、笑顔を見てとても嬉しくなりました。
男性の心境の変化が体調を回復させる
後日、祭りの反省会がありました。
最後に一人ずつ挨拶をするなか、例の男性の番になりました。
男性は、
たくさんの人と話すようになり、やりがいを感じるようになった。
気持ちが晴れやかになり、身体にもいい影響がでて、予定されていた入院の日数がかなり短縮されることになった。
夏祭りのお陰だと思う。ありがとう。
と発言されました。
男性の変化は皆が感じていましたが、それが体の内部まで回復させるのだと驚きました。
おお~! とどよめきが起こり、拍手が巻き起こりました。
私はとても感動しました。
負担ばかりと思われがちな役員の仕事に、こんな隠れた効能があるとは思いませんでした。
自治会役員仕事量削減への取り組み
自治会は町内の電灯や害虫、自治会館の管理をしたり、救護講習や災害対策、公園などの清掃活動など秩序を保つための大事な役割を担っています。
高齢化が進み、年齢や持病で役員を断るケースが増えています。断りずらいからと、自治会を退会する世帯も増えています。
退会者がでると自治会費が減り、地域の管理に影響が出ます。
そして数の少ない若い世帯が役員を回すことになり、負担を懸念した若い世帯も退会する可能性が出てきます。
我が家の地域では、少しずつ自治会の仕事を減らそうという動きが出ています。
自治会の仕事は正直面倒だなと思っていましたが、上に挙げた男性のようにいい作用をもたらすことがあります。
そして引っ越し二年目に参加したことで知り合いが増え、地域のことをよく知ることができました。
簡素化は必要ですが、自治会も捨てたもんじゃありません。
以上、自治会役員が得られる意外な効果の実体験でした。
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