児童相談所員が突然家に来て、驚き困惑した知り合いがいます。
私は三人の娘を育てる母ですが、長女が激しく泣く子だったので、ご近所や知らないお宅の奥さんが家から出てきて心配された体験がありました。
即通報と呼びかけることへの疑問と、虐待に間違われないための対処法についてお知らせします。
通報で虐待を疑われたと知る衝撃
知り合いの実話です。
上の子に比べて下の子はよく泣く子でした。
下の子ばかりかまうと赤ちゃん返りが加速するし、上の子をかまってあげる方がいいと聞いていたので、下の子を世話しながら時に泣かせっぱなしにして、上の子とコミュニケーションをとっていました。
そんなある日、インターフォンが鳴ります。
誰だろう? 今日届く荷物などあったかな? と受話器を取ると、「児童相談所です」と名乗られました。
二名の児童相談所の職員を家に招き入れました。
「お子さんの様子はどうですか。体を確認させて」と言われます。
やっと寝たところでしたが、起こして服を脱がせました。
「何なんですか? 虐待を疑っているんですか?」
意味が分からず聞くと、「子どもがずっと泣いている」と通報があったと言います。
三回通報があったら訪問する決まりなのだと説明されました。
「三回? 三回も誰かが通報しているということ?」
心臓が締め付けられました。
「子どもは泣きます。それに下の子は本当によく泣く子なんです。あ、たまに子育てを手伝ってくれる私の母はそれをよく知っているので、電話して直接話しますか?」と問いかけますが、「身内の方の話は結構です」と断られました。
身内だと庇うと思われているようです。
つまり夫も証言者になれないということを示していました。
まだ保育園にも幼稚園にも通っていませんでしたので、虐待をしていないと証言してくれる人はいないのだと気がつきました。
「下の子まで手が回らないのなら、お母さんが手一杯ということなので、こちらで預かりますよ」と職員が言いました。
児童相談所に連れて行かれたら、子どもに会えないまましばらく帰されないことがあると聞いたことがありました。
それに私は一切虐待などしていなません。赤ちゃんである下の子に、声を荒げたこともありません。
「結構です!」と断固拒否をすると、児童相談員は虐待の事実が確認できなかったためか、また来ると言って帰っていきました。
泣きながら母親に電話をかけました。
「誰が通報したのかわからない。虐待なんてしていないのに、私を虐待母だと思っている人が近所にいる。外に出るのが怖い。子どもを公園に連れて行くのも辛い」
それまで頻繁に子どもを公園に連れて行っていましたが、しばらくの間疑心暗鬼になり、外に出ることができなくなりました。
これは私の周りであった、実際の話です。
虐待を疑ったら即通報!は正しいのか
痛々しい虐待事件が後を絶ちません。
幼い命を一つでも多く救えるなら、何かあったら児童相談所や警察に通報を! と呼びかけられるのもの自然なことですし、勧められるべきことかもしれません。
しかし母の立場になると、周囲に監視され評価されているように感じ、息苦しさを感じるのも事実です。
子供の泣き声は迷惑と言われ、買い物に向かう公共交通機関で、「うるさい!」と知らない年輩の男性に怒鳴られる話は珍しくありません。
買い物先で子どもがグズッてひっくり返って泣いていると、買い物の途中でも店の外に引き上げ、落ち着くまで過ごさねばなりません。
公園で遊ばせていると子どもの声がうるさいと言われ、家で泣かせたまま家事を済ませようとすると、虐待をしているんじゃないかと疑われます。
子育て支援センターでできたママ友に愚痴ろうとしても、子どもに付きっ切りになり、話す時間はそう多く持てません。
子どもを泣かせてはいけないんだと焦ります。
母親も人間です。
産後は見た目にはわからなくても、重症と同等のダメージを受けている産後の身体で、身体の回復を待たずに、幼い子どもの命を守るという重責を負っています。
子どもを助けることは通報することだけでしょうか。
そして通報が善意だけとは限らない場合があるのはご存じですか。
それによって親をさらに追い詰める可能性があることをもっと知っていただきたいのです。
虐待の捏造
親と児童相談所のトラブルは少なくありません。
虐待をしているのに自覚がない親がいるので、仕方がないことです。
児童相談所に強行する権限を持たせることも必要と考えます。
しかし、通報者の精査はされていないのが現状です。
嫌がらせで虐待をでっちあげ、かけがえのない親子の時間が壊されるケースが実際に発生しています。
保育園の先生が虐待はないと証言しても聞き入れず、子どもによくある怪我の内出血を理由に数年間親子が離され、裁判になるケースがあります。そこに通報者は関わりません。
対象者への匿名性は守られる必要があります。
しかし悪意のある通報者が責任を問われないことに、問題はないのでしょうか。
育児の責任は誰のもの
日本の男性の家事育児の負担は先進国の中で最低レベルです。
社会の働き方の問題も大きいのですが、家事育児は母親が担うものという認識が強い世代に育てられたため、親という意識が育ちにくいという問題を抱えています。
家事育児に協力的な夫は徐々に増えていますので、過渡期と言えるでしょう。
保育園や幼稚園から呼び出されるのは母親です。
仕事を抜けたり、調整をするのも病院に連れて行くのも母親の仕事だと社会が認識しています。
夜泣きで眠れず、昼間もまとまって寝てくれず、お昼寝の時間に一緒に寝たくても、子どもと同じタイミングで眠りにつけるかは日によります。
余裕がなくなった母親が、時に声を荒げたり、子どもを泣かせたままで一息つくことはあるかもしれません。
そうなったら虐待と言われても仕方ないのでしょうか。
原因は母親ですか?
親として責任を果たせないのなら子どもを作るべきでないと極論を言う人がいますが、その結果が危機的な日本の少子化を進行させているように思えてなりません。
世帯収入の低下だけでなく、精神的圧迫感が大きく影響している可能性はないのでしょうか。
育児の支え・近所付き合い
私には三人の子どもがいます。
上の子はとにかく泣く子で、起きている間は授乳で口を塞ぐ以外は常に泣いていました。
大きく生まれたせいか体力があり、泣きつかれて寝ることもありませんでした。
夜中も一時間から二時間おきに目を覚まし、仕事に行く夫を起こさないように別室に移り、月明かりの中すり足でぐるぐると動き回り寝かしつけを繰り返しました。
昼間もよく泣きましたので、産後の身体は回復が遅れ、悪露は三ヶ月続きました。
ある日の夕方、ベビーベッドで寝着いたので夕食の準備に取り掛かりました。
少しして夫が帰宅した頃、子どもが盛大に泣き出しました。
夕食の下ごしらえも終わっていないのにと少し焦りを感じながら子どもに近寄ろうとすると、裏のお宅の奥さんが庭越しに我が家に向かって「大丈夫!?どうしたの!?」と叫びました。
一軒家が建ち並ぶ住宅街です。
気候のいい時でしたので、窓を開けていました。
うるさいと言われるかもしれない。
通報されて児童相談所が来た知り合いの話を聞いていましたので、夫も私も「虐待を疑われているかもしれない」と焦りました。
しかし奥さんは「すごい泣き声だから、どうかしたのかと心配しただけよ。救急救命士の資格持ってる息子がいるから、何かあったら言ってね」と笑いました。
「凄くよく泣く子で、おむつを替えて授乳も頻回で、健診でも十分体重が増えていると言われているから母乳は足りているはずなのに、ずっと抱っこしていても泣き続けるんです」と話すと、「あらー、元気な証拠だね。お母さんは大変だね。ここら辺は高齢化が進んで子どもの声が聞こえなくて寂しいから、もっと聞かせてほしいくらいよ。今度子どもを連れて家に遊びにおいで」と言ってくれました。
産後三週間で引っ越しをしましたので、ご近所の方との付き合いが殆どありませんでした。
この言葉に、大きく心が安らぐのを感じました。
お隣の奥さんとも話をするようになりました。
裏の奥さんもお隣の奥さんも子育てを終え、孫を持っていました。
育児が辛いとき、たまたま家の前で会い相談を聞いてもらうと、「私の時はあまりに腹が立って、息子の頭をスリッパでパコン! って叩いたことがあるわよ。」「子育てしていた時期に子どもに怒鳴ってたら、近所のおじさんに、お母さんの方が元気だねって言われたわ。」と経験談をたくさん話してくれるようになりました。
「完璧な親なんていないわよ」
その言葉が私をリラックスさせてくれました。
恐らく、虐待を疑ったら通報するより前に、私を心配して話しをしに来てくれると思います。
その安心感で頑張れます。
虐待を疑われたくなければ、親は心の門を開くこと
母親の私が黙っていたら、周囲は誤解したかもしれません。
近所とコミュニケーションを図ることは、お互いの理解に必要です。
冒頭に挙げた知人の例では、賃貸物件が多いエリアに建つアパートで、ご近所との付き合いが全くなかったそうです。
詳しい話はしなくても、挨拶をし、良く泣く子なので、と伝えていたら状況は変わっていたかもしれません。
だからと言って彼女が悪いわけではないのですが。
虐待を疑ったら
虐待かも知れない、でも違うかもしれない。もし本当に虐待だったら早く子どもを助けてあげたい、そう思うのは大事なことです。
子どもの命が最優先です。直接子どもの親と話がしたくても、怖い人だったら、逆恨みをされたら、と思うとできないという気持ちもわかります。
そういった方は、是非近所の方と話をしてみることをお勧めします。
「あそこの子どもはよく泣いているみたいね」と話してみたら、「良く泣く子らしいよ、いいお母さんよ」とそのご近所の方はご存じかもしれません。
また、民生委員に相談をしてみるのもいいでしょう。
実際私の住む地域でも虐待が疑われる事例があり、民生委員の方が報告を受け、散歩がてらに毎日確認をしに行っていました。
時には疑われている母親や子ども当人と偶然会い、世間話しから普段の様子を聞き出すなどし、聞いていたほどの問題は確認できなかったと調査を終えたことがありました。
そういった手がない場合の手段が通報です。
子育ての責任は親が負うもの・しかし世間の理解で親は育つ
子育ては両親と、両親を囲う環境に左右されるのだと実感します。
相互の理解が親を育て、結果、子どもを増やすのではないでしょうか。
☟長女のその後の話。