「さくらの親子丼」をご存じでしょうか。
真矢みきさん主演の深夜帯ドラマです。
シリーズ化されていて、2020年12月に3シリーズ目が最終回を迎えました。
私は「さくらの親子丼」のファンです。
毎回欠かさず視聴していました。
非行などの問題行動がある子どもや親子にスポットを当て、心の葛藤や成長を描く内容です。
ドラマはわかりやすくまとめられています。葛藤や考えさせられるエピソードがてんこ盛りです。
「さくらの親子丼」の魅力と、今からでも見られる方法、ドラマのセリフにあった「虐待を受けた人は冷静に虐待児のフォローができない」についての私見を記します。
さくらの親子丼・第一シリーズ・詳細
第一シリーズは2017年10月に放送が開始されました。
真矢みき演じる“さくら”さんが営む古本屋が舞台です。
さくらは古本屋を訪れた非行少年少女に、無料で親子丼を提供する活動をしています。
さくらには非行未成年者に息子を殺された、辛い過去があります。
息子を失った心の傷は大きく、夫と上手く行かなくなって離婚しました。
娘がいますが、娘は兄を殺した非行未成年に恨みを抱えていたため、さくらの活動に否定的です。
さくらはあらゆる葛藤の中で「お腹を満たせば心も満ちる」と考え、問題を抱えてやってくる未成年者たちに食事を提供し続けていました。
古本屋には一筋縄でいかない問題を抱えた子ども、親子たちが訪れました。
暴行に遭い、怪我をした非行少女“あざみ”は、行く当てがなく、偶然さくらの家に住むことになりました。
あざみは、実はさくらの息子を殺した女性の子どもでした。
ピックアップエピソード・貧困の兄妹
さくらの古本屋に日常的に出入りしている少年がいました。
少年は、酒乱の父親が妹に性的暴行を加えそうになったのを止めるため、父親を包丁で刺して殺害した過去がありました。
少年が少年院を出所すると、母親は男を作って出ていきました。
少年は献身的に働いて妹との生活を支え、アイドルになる夢を応援しました。
しかし兄である少年の過去が、妹のデビューの障壁になりました。
事務所は、兄を死んだことにしてデビューさせる計画を持ち掛けます。
二度と妹と会わないよう求めたのです。
さくらは反対しますが、兄は条件を飲み、陰ながら応援しようとします。
しかし妹は納得せず、デビューを諦めて兄と暮らすことを選ぼうとしました。
妹を無理やり連れて行こうとする事務所員の姿が、妹に性的暴行を加えようとした父親の姿に重なりました。
当時の心境が蘇った兄は、鉄パイプで事務所員を殴って逮捕されます。
デビューがなくなり兄とも離れ離れになった妹は施設に保護されることになりました。
終わり
一筋縄ではいかない“問題のある”子どもと親
あらすじだけでは、救いのない話だと思われるかもしれません。
私たちが暮らす日常では、問題のある子どもたちの起こした事件ばかり注目されますが、ドラマでは事件の裏にある「心」の経緯を知ることができます。
さくらさんや周囲の人たちが、“問題のある”子どもをどうしてやることもできない現実に向き合っていきます。
犯罪者家族と被害者家族の物語
さくらの家に住むことになったあざみは、母親を覚えていません。
あざみが赤ん坊の時に、当時未成年者だったあざみの母親が殺人を犯したため、それから離れ離れで暮らしていました。
あざみは10代後半になっても母親というものへの憧れを抱いていました。
同時に「母親が殺人者だから、亡くなった被害者のためにも自分が幸せになってはいけない」と思っていました。
さくらは偶然、あざみが息子を殺した女性の子どもであることを知ります。
葛藤を抱えながらも、いつしか、あざみを本当の娘のように思うようになりました。
同時に、あざみの母親を恨む気持ちも持ち続けていました。
ある事件をきっかけに、さくらはあざみの母親の消息を知ります。
あざみを手放したくないと思いながらも、あざみに母親の居所を伝えることにしました。
あざみは母親に会いに行きますが、母親の反省が見られない身勝手な言動を目の当たりにして怒ります。
「さくらさんに謝れ」と言い残し、古本屋に帰りました。
その後、あざみの母親の経歴を調べると、殺人を犯した後に二度逮捕されていたことがわかりました。
覚せい剤使用と、幼児誘拐でした。
母親もまた、あざみを求めていたのです。
母親はさくらに謝罪をしたいと古本屋を訪れます。
さくらは会いたくないと拒絶しますが、「あざみ(加害者側の人間)をそばに置くなら、謝罪を聞くべきだ。加害者も被害者も苦しみの中でもがいている。これ以上生きていけない(状態だ)」と娘に諭されます。
子どもを想う同じ母親として、あざみの母親はさくらに心からの謝罪をしました。
さくらは「あなたを許すことは一生ない」としながらも、「人生を無駄にするな。しっかり生きろ。奪った命の分しっかり生きろ。あざみのためにしっかり生きろ。約束しろ。それができないなら今ここであざみの母親をやめろ。私があざみの母親になる」と涙ながらに伝えました。
母親は「もう一度やり直す。ごめんね」とあざみに謝りました。
「これからはこの子のためにしっかり生きます。許してください」とさくらに伝えました。
後日、あざみはさくらの親子丼を食べて、母親と暮らすために古本屋を後にしました。
終わり
さくらの親子丼2・詳細
第二シリーズは2018年12月に放送が開始されました。
主演は同じく真矢みきさんです。
舞台は“さくら”さんが営む古本屋ではなく、弁護士が運営する、子どもシェルターです。
さくらの息子が殺された事件で、加害者の弁護士をしていた先生と繋がりを持ち続けていました。
子どもシェルターの食事担当者が逃げ出してしまったため、居合わせたさくらがピンチヒッターとして期間限定で手伝うことになりました。
子どもシェルターは親の虐待や性暴力などから逃げてきた子どもたちをかくまう施設です。
一般の住居を使用し、近所にも一般家庭を装って存在していました。
親や大人を信じない子どもたちに、さくらは面食らいます。食事担当がすぐに逃げ出してしまう気持ちがわかりました。
親と子どもは必ず求め合っているはずだと主張するさくらと子どもたちは対立します。
さくらは、親を求めて家に帰った子どもが、いとも簡単に裏切られ、傷ついて戻ってくる姿を目の当たりにしました。
子どもを愛さない大人がいることを知り、子どもは生きるために親を捨てるのだということを学びます。
様々な問題を抱えた子どもにスポットを当てて、親と子どもの関係が描かれます。
さくらの親子丼3・詳細
第三シリーズは2020年10月に放送が開始されました。
主演は同じく真矢みきさんです。
舞台は第二シリーズに続き、弁護士が運営する子どもシェルターです。
施設に関わる若手女性弁護士は、被虐待児でした。
子どもシェルターの子どもたち同様に、自身も問題を抱えたまま大人になっていました。
子どもたちを救いたいと思い取った行動が、必死さのあまり逆効果となり、子どもたちとの間に軋轢を生んでしまいます。
シェルターを運営する弁護士のいう「虐待を受けた人は冷静に虐待児のフォローができない」状態でした。
育った環境の違いが子どもたちの付き合い方に影響が出ることや、子どもシェルターが社会的に偏見の目にさらされやすいこともテーマになって物語が展開していきます。
子どもの問題行動の裏にあるもの
私は親との関係に悩んだ過去があります。
その影響からか、周囲にはやはり親との関係に悩んだ友人知人が多く居ます。
所謂非行をしていた人もいます。暴走、暴力、薬、年齢をごまかした夜の世界……。
彼らに言えるのは、全員親との関係が上手く行っていなかったことでした。
どうしてこんなことになってしまうのだろうと、常々考えていました。
彼らには自分を信じるための地盤が脆いという特徴がありました。
地盤が緩いので踏ん張りがきかず、頑張ることができません。
そんな自分に失望し、さらに自分を信じられなくなります。
自分を含め、誰かを信じるためには、根拠が必要になります。
この人は信用してもいいのだという「根拠」です。
「信じる」は「頼る」にも似ています。信じるという感情は自分を守るための感情とも言えます。
人を信用し、信じた通りであった「根拠」が自分の自信になります。
人を頼り頼られることが、逃げ場となり勇気となります。
その源は親の愛情から始まります。
親の愛情を実感することが「根拠」になり、自信になり、人を頼る力になり、精神の成長に繋がります。
さくらの親子丼はあくまでドラマです。
実際はドラマに描かれるより、さらに難しい事案が多くあると思います。
一度誰かに勇気をもらっても、育った環境が不安定だとふとした時に気持ちが倒れてしまうからです。
第三シリーズで「虐待を受けた人は冷静に虐待児のフォローができない」というセリフがあった時に、複雑な気持ちになりました。
自分に当てはめすぎると冷静に子どもの気持ちを見ることができない場合と、だからこそ寄り添える場合と、両極端なケースを想像しました。
かつて児童養護施設で働くことに興味を持ち、求人を調べたことがありました。
「子どもに家庭と同じ温かさを与えてくれる方」「子どもと一緒に笑顔を作れる方」という募集内容に並び「子どもを救おうとしない方」「子どもに期待しない方」を求める、という記載を見たことがありました。
「愛情を与えれば、子どもは応えてくれるはず」という大人の身勝手な期待は裏切られるのが普通であり、下手な期待をしているとすぐに傷ついた気になり、辞めてしまうのだといいます。
そうやって人が固定化せず、入れ代わり立ち代わり関係が築けなくなることが問題なのだと書かれていました。
興味本位から求人を探していた自分を恥ずかしく思いました。
覚悟が足りていないことを思い知りました。
ドラマは現実より優しい描き方をされていますが、考えさせられる、いい作品だと感じます。
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