「人のため」と大義名分を掲げ、攻撃的な意見をする方がいます。
しかし“あなたのため”と名前を挙げられた当人は、問題だと感じていないことも。
自身の攻撃性を正当化するために「誰かのため」と思い込んでいるケースがあるのです。
実例と、私見を述べる記事です。
“誰かのため”と銘打って、反対運動をする人達
今から40年ほど前に開拓された大型の住宅地の話です。
高級住宅地として販売されて以来、閑静な住宅街として時を過ごしてきました。
地区を分断するように有料道路が走ると具体的に発表されたのは、開拓されて10年程経った時のことでした。
開拓当初から道路計画が持ち上がっているのは知らされていましたが、大型の有料道路で乗り入れ口が遠く、住人にメリットがないことをこの時初めて知ったのです。
初期の住人たちは挙って反対をしました。
そして道路建設を反対するための係が、自治会で新設されました。
盛んな反対運動により工事業者の譲歩が見られたものの、道路計画そのものが見直されることはありませんでした。
多くの住民は工事業者の譲歩内容に満足し、道路計画を容認するようになります。
時が経ち、初期の住人が年を取って過疎化するに伴い、土地の価格が下落。
現在はわが家のような子育て世代が、ポツポツと転入する地域となりました。
わが家が土地の購入を検討し始めた時点で、既に道路建設予定地の住居が買い取られており、解体も済んでいました。
しかし予定地を囲うフェンスには、「建設反対」の横断幕が貼られていました。
反対運動が盛んだと聞いていましたが、道路建設ありきで購入に踏み切ります。
引っ越しをして自治会に参加して初めて、自治会と道路の反対運動が同一化されていると知りました。
自治会に参加することと反対運動に参加することが、同義となっていたのです。
道路係(仮名)という名がついていました。
近所の方は、「道路の反対運動を未だにしているのは一部の方のみ。いつまでやるのかしらね」と話していました。
道路係は順番で定期的に回ってきます。
わが家が自治会に入った当初は、毎月変わっていました。多くの住民は幹部が作成した広報紙を各戸に配布する仕事だけを担い、会議に出ることはあまりありませんでした。反対運動に積極的ではなかったからです。
そんな状況が続くと、それに不満に持つ幹部が現れました。
道路係の幹部とは、係の発足当初から関わってきた方達を指します。
自治会内で順番に回ってくる担当とは別に、反対運動発足当時から熱心に関わっている方達で、長年係の中心を果たしています。
幹部は「住人が道路計画に関心を持つように」と、毎月係の担当者を変えるのではなく、一年単位の交代制にするよう自治会に求めました。
そんな流れから、わが家に一年任期の道路係が回ってきた年の話です。
ある幹部の女性に悩まされることになりました。
私が係になる年度が始まる2か月も前に、その方はわが家にやって来ました。
既に書面で伝えられていた道路係の活動内容を、改めて口頭で伝えるためにやってきたのです。
任期が始まると、数日に一度という頻度でわが家のインターフォンを押すようになります。
やはり既に配布されている書面について、読めばわかる内容にも関わらず口頭で伝えたいといって呼び出すのです。電話をかけてきて、口頭で聞いたことを再度説明し出すこともありました。
二週間ほど続くと、負担に感じるようになりました。
一度体調が悪い日があり、インターフォンで体調が悪いので直接の対話は遠慮したいと告げましたが、まるで耳に入っていないかのように「玄関外に出て来てください」と求められました。
なぜ人の話を聞かないのかと疑問と小さな怒りが湧きました。
その方を不快に感じるようになっていきます。
一度その方に「私は道路建設が進んでいることを知って移住してきたので、反対ではないんです」と告げたことがありました。すると宇宙人でも見るような驚きの目で見られ、「私たちはみんなのためにやってあげてるの」と力強く語り出しました。
道路建設を反対している大勢のために、矢面に立って活動をしているのだと言います。
建設容認派が圧倒多数になっていることを、気づかないようにしているように見えました。
発足当初は住人のためだったのでしょうが、今となっては反対運動が生活の一部となっており、生きがいとしているようでした。
この件を詳しく書いた記事がこちらです。
ある公共事業に、付近の自治会全体で反対運動を起こした事例があります。活動は効果を発揮し、事業が止まることはなかったものの、住民に譲歩した形となって行きました。多くの住民が容認するようになった中、公共事業計画が着工するのですが[…]
“隣人のため”と理由をつけて、業者に抗議をする人
図面を出せ・図面を描き直せと業者に求める
わが家の土地には東京電力の電柱が立っています。
電柱分の土地を貸している契約で、数年に一度、少額が振り込まれます。
その電柱が古くなったため新しいものに差し替えるという連絡が、東京電力が委託した会社(以降、業者)から入りました。
仮の電柱をすぐ近くに立てて、電線をそちらに架け替えてから古い電柱を抜き、新たな電柱に差し替えて仮の電柱から電線を切り替えるという工事内容でした。
当時わが家は、家の建て替え計画が進んでいました。
工事のタイミングによっては電柱周りのコンクリートの打設が綺麗に仕上がらない可能性がありましたので、事情を話して工事の日程について詰めました。それでも、2、3回電話連絡をした程度で、話しを終えています。
少し経ってから、改めて業者から連絡が入りました。
「あの、工事について何か問題がありますか?」と聞いてきたのです。
私は不思議に思いました。
「先日お電話で話した通り、〇月〇日~〇日の間に工事を完了していただければ大丈夫です。どうしたんですか? 何か問題があったのですか?」と聞きました。
すると、「電柱の架け替え工事をする際は、近隣のお宅にも予め挨拶をして回るのですが、麒麟さん(わが家)のお隣の志田さん宅に伺った際に、工事は迷惑だと強く抗議をされました」と言うのです。
お隣のお宅は志田さん(仮名)という中年のご夫婦が住まわれています。
とても愛想がよく優しい印象の方で、良好な関係を築いていましたので驚きました。
電柱はわが家の敷地内の、そのお宅に近い位置にありますが、工事が行われる昼間は志田さんご夫婦共に仕事で不在にしていることが多いはずです。平日に家にいるのは一日程度。どう迷惑を被るのだろうかと、不思議に思いました。
業者は続けて「それで仮の電柱が具体的にどの位置に立てられるのか、図面を持って来いと言われまして。そして志田さんが言うには『麒麟さん宅も非常に迷惑している』とおっしゃるんです……。それで連絡させていただきました」と言います。
電柱の付け替え時に、CADで作った図面など作らないのが通常なのだそうですが、「正式な図面を持って説明に来るのが社会人として当然だ」と言われ、作って行ってもなんだかんだと埒が明かない文句をつけられて、描き直しをさせられて、何度も隣の家に通っているのだそうです。
私が「約束の期間内で工事が終わってくれれば問題ありません。天候などで期日内に工事できない場合は、その時に相談できればいいと思っている程度で、全く気にしていません」と伝えると、「そうですか。よかったです。ありがとうございました」と電話が切られました。
あの人が工事車両を邪魔に思っているから、車で来るな
わが家の建て替えが進むと、何度かホームメーカー(以降、HM)から「志田さんから注意を受けている」と聞くようになりました。
わが家の敷地横に工事車両が停められることが、不快だったようです。
HMは対応が良いと評判の会社です。
物の整理や周辺の掃除、近所への挨拶などはしっかりやってくれていましたが、工事中はどうしても大きな音が出たり、工事車両による不便を近所にかけてしまいます。
申し訳ないと思い、志田さんのお宅に挨拶に行きました。
するとその時は笑顔で「問題ないですよ」と対応してくれるのですが、その後も業者は志田さんから何度か注意を受けました。
これ以上工事車両を減らすことができませんでしたので、再度「何度かご注意をいただいているみたいで、本当に申し訳ありません」と挨拶をすると、志田さんは「ああ、うちは全然かまわないんですけどね、青砥さん(仮名。志田さん宅のお向かいのお宅)が迷惑しているみたいだったので、代わりに注意をしたんです」と言いました。
青砥さんは若い夫婦で、奥さんは妊娠中です。
青砥さん夫婦も愛想がよい方達ですが、その分不満を言いにくかったのだろうかと心配になりました。
「そうでしたか。お手数をおかけして申し訳ありませんでした」と謝ると、志田さんはいつものニコニコ顔で、「いえいえ、僕たちはなんとも思っていませんから」と最後まで笑顔でした。
後日、何度か仮住まいから青砥さん宅に謝罪に行きましたが、インターフォンに出ることはなく、人気もありませんでした。
俺はエライんだぞ・数十年後も補償しろ
家が完成して外構工事に入りました。
わが家と志田さんのお宅の境にある境界壁はわが家の持ち物ですが、一部だけ、志田さん宅が新たに建てた壁が並行して建っていました。その壁の下部は、わが家の壁とコンクリートによって繋がれていて、いわば抱き合う形となっていたのです。
境界壁は建設から40年以上経っていますので、災害で倒れる危険性が高いということで、作り直す計画でした。
コンクリートで繋がり、抱き合わせとなっている志田さん宅の壁をどうするかという問題がありました。
そこでコンクリートで繋がれている部分を砕いてわが家の壁を新設して、志田さん宅の壁の強度に不安があったり志田さんの希望があれば、新設したわが家の壁にボルトで繋いで、再度抱き合わせる形にしようとHMで計画を練りました。
もし繋がれている部分を砕く際に志田さん宅の壁を傷つけてしまうことがあったら、HMの責任で作り直すというのも計画内でした。(志田さん宅の壁は流通量の多いブロックなので新設しやすいものでした)
志田さん宅の壁も築40年弱とかなり古く、近所からも「地震が起きたら危ない」と注意を受けていましたので、補強がされるのは悪い話ではないと思われました。
車の苦情の件もあったため、まずは図面を持って私が志田さん宅に行き、壁の話をしました。
私はかつてイベント企画営業の仕事をしており、造作物の取り仕切りで法人相手にプレゼンをしたり現場の監督もしていたので、ある程度の知識がありました。
志田さんが「うちも費用を出したほうが良いですか?」と聞いてきたので、負担は必要ないこと、補強もするし、万が一傷つけることがあったら新たに作り直すことを話しました。
その時は朗らかに、「わかりました」と言っていました。
後日HMが改めて説明に伺いますと話して、その場は何の問題もなく終わったのですが……。
数日後、HMの外構担当(50代男性)から「境界の壁について、志田さんと揉めています」という報告を受けました。
志田さんが何を問題にしているのかをHMに聞いたところ、「工事と関係のない話を持ち出して来たり、言うことに一貫性がないし理屈も通っていないので、正直なところ何を言っているのかわかりません。わかるのは、業者を下に見ているようだということだけです」という事でした。
何度も呼びつけられて、一度につき一時間から長いと2時間以上の間、意味の分からないことで叱られるのだとか。
居合わせた現場監督からも同様の話しを聞きました。「志田さんは、たまにいる厄介なタイプの方ですよ」と言うのです。
私は仮住まいにいましたが、仮住まいが近所でしたので、夫と度々建替え現場に足を運んでいました。
ある時、外構担当者が志田さん夫婦に詰め寄られている現場を目撃します。
私と夫は志田さん夫婦の背後から近寄る格好になったため、すぐそばに行くまで志田さん夫婦に気付かれませんでした。
そのため志田さん夫婦が何を言っていたのかよく聴こえていたのですが、外構担当者から聞いていた通り、話の内容に一貫性がなくよくわかりません。
志田さんが社会でどんな地位にいるかや、何を学んできたか、自分がどれだけ偉いか、専門家でもない志田さんの友人が「志田さん宅の壁は強いから壊れない」と言った、などでした。
そんな話の中に、「もし壁が数年後、数十年後に倒れたら補償できるのか。いくら出せるのか」と何度か織り交ぜているのが気になりました。
その話が再度出たタイミングで、背後から「志田さん」と私が声をかけました。(夫は交渉事や説明が苦手なため、私が先導を切っています)
志田さん夫婦はとても驚いた顔をして振り返り、私と夫を見ました。
「ご心配をおかけして申し訳ありません」と言うと、「いえいえ、全然大丈夫ですよ」と志田さん夫婦は一気に態度を変えました。
「何か、こうして欲しいという要望はありますか?」と聞くと、「別にないんですけどね」と笑います。
取って付けたように、「ほら、外構のこの部分とか、汚いし、麒麟さん宅は若い夫婦だから、業者に指摘できないんじゃないかと思って、代わりに言ってたんですよ」と言いました。
外構はまだ途中ですから、仕上げも掃除もまだできていません。
志田さんが指摘した箇所がその後どうなるか、私は事前に知っていましたので、心配はしていませんでした。
「そうですか。ありがとうございます。抱き合わせの境界壁の件ですよね? ご心配なら以前お伝えしていた通り、最初から新設した壁に抱き合わせてボルトで繋ぎますから、強度を保てます。数十年先の補償は難しいですから……」と伝えると、「それができるならそうしてもらおうか」と志田さん夫婦が示し合わせたようににこやかになり、「それでお願いします」と言いました。
この後全く関係のない話を志田さんが朗らかに話すのですが、割愛。
「本当に、ご迷惑やご心配をおかけして申し訳ありません」と私と夫、外構担当者で頭を下げて、志田さんが家に帰っていくのを見送りました。
外構担当者は「麒麟さんが来られて、志田さんは一気に態度を軟化させました。来ていただいて助かりました。初めて具体的な話になりました。これで工事が進みそうですね」とホッとしていました。
私は東京電力の委託会社が、志田さんの対応に苦慮していたことを思い出しました。
HMにしたように、関係ない話を関係あるように話して、ストレスを与えていたのだろうと想像します。
HMの年配の担当者は、「工務店をしていると、言いがかりをつける人に度々出会う。他者が家を建て替えることに劣等感を感じている人もいるし、普段ストレスを溜めていて、逆ギレしてこない相手を選んでしつこく攻撃する人もいる。その中でも、志田さんは中々手ごわいタイプ」と結論付けました。
以降、志田さんがHMを呼びつけたり、苦情を言ってくることはありませんでした。
誰かを理由にして正当化
外構工事まで全て終わって仮住まいから戻ってきても、青砥さん宅は殆ど人気がありませんでした。
暫くして奥さんを見かけた時は、お腹にいた赤ちゃんを抱いていました。
建て替え工事中、車両などで迷惑をかけたことを詫びると、青砥さんの奥さんは「え? 車両を邪魔に思ったことありません。出産で長く実家に帰っていましたし、夫は勤めがあるので家に残っていましたが、昼間は会社に行っているので、多分知らないと思います」と言いました。
志田さんは車両への苦情も、青砥さんのせいにしていたようです。
他のご近所にも挨拶に回りましたが、「お互い様だし、マナーの良い業者で世間話もしてくれてよかったよ」と言われてホッとしました。
正当化と盲目になるための自己暗示
家の建て替えが終わって少しの間は、志田さんに対して不信感がありました。
とても愛想がいいけれど、腹の底では不満を持っているのだろうか。
それに対して、私はどうしたらいいのだろうと思ったのです。
しかしその後は何の問題もなく、にこやかに挨拶したり会話をする付き合いが続いています。
にこやかな部分だけを見ていると、いい人だと感じるのですよね。
「誰かのために」と思うことで自身を正当化する裏には、後ろめたさがあるものなのでしょうか。
だからこそ、業者に文句を言う自分を隠したり、道路工事容認派が殆どなのに、見てみないフリをするのかも。
自分のためだけに行動をするのは、案外とても難しいものなのかもしれません。
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