フジテレビ取材で誘導発言を放送された私の例と、フジテレビへの不信感

都内公園の大縄跳び禁止を紹介したフジテレビの情報番組「とくダネ!」をめぐり、インタビューに答えた住民が、誘導尋問された発言を勝手に放送されたと申し立てていた問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は14日、「人権侵害や放送倫理上の問題はなかった」とする見解をまとめた。

産経新聞


このニュースが2020年10月14日の日テレのnews everyで流れました。

私の感想は、「相変わらずやってるんだ。」でした。

10年ほど前にフジテレビの街頭インタビューを受け、意図した発言とは全く逆の意味として編集され、放送されたことがあるからです。

私の場合は政治的な発言ではなかったですし、誰かを傷つける内容ではなかったため異議申し立てはしませんでしたが、インタビューに居合わせた友人は「ビックリするほど変えられてますね。」と感想を言いました。

このような捻じ曲げがあっていいものなのか? と疑問に思っていました。

その詳細についてお知らせします。

インタビュー


10年ほど前、仕事で関りがあった大規模物産展に、会社の同僚と行った時の話しです。

仕事の一環で出展者と密なやり取りをしていたこともあり、どこの出展者がどんな出品をしているかを詳しく把握していました。

何社か報道陣が入っていることは知っていましたが、気にすることなく行動をしていました。
その日は一般客として参加していたからです。

あるゼリー屋は、柑橘系の果物をそのまま絞った商品を出品していました。
今は有名な商品となりましたが、当時はまだ売り出し中であまり知られていませんでした。

ほぼ本物の味なので、皮のほろ苦さや風味が感じられ、果物の甘さはあるものの、酸味も強く濃厚な味を感じられる商品でした。

一緒に物産展を回った同僚はとても可愛らしく、見栄えのする女性でした。私と彼女は大の酒好きで、飲み友達でもありました。甘いものは嫌いではないけど、特別好きなわけでもなく、酒とつまみを好む人種でした。

私がゼリー屋で注文をしていると、離れたところにいた報道陣がグングンと近づいてくるのが目の端で見て取れました。

酸っぱくて美味しいゼリーを受け取った私と、付き添いで立っていた彼女をカメラに収めています。

会計が終わると、インタビュアーと思われる女性に有無を言わさず「こちらに来てください。」と人の往来を避けられる一角に誘導されました。
「テレビに映りたくないんだけどな。」と思ったのと同時に、同僚はスッとその場を離れてこちらを観ていました。どうやら彼女も映りたくなかったようです。


インタビュアーが質問を投げかけてきました。

何を買われたんですか?

ゼリーです。酸っぱくて美味しいんです。

女性は甘いもの好きですよね。

私は甘いものは好きではなくて。これは酸っぱくて濃厚で美味しいんですよ。

甘いものは買われましたか?

買ってないです。馬刺しとか牡蠣とか酒が好きなので、そういった酒のつまみになるものを買いに来ました。


もっと細かい問答があったのですが、省略します。

「甘いものが好きな女性のインタビュー」が欲しいのだとよくわかりましたが、私は甘いものが好きではないので言えることはありませんでした。

そして私は物産展に関わっていましたので、全出展者の中でスイーツをメインに扱っている会社の方が少ないことを知っています。その他の魅力も知ってほしいと思い、「こんな商品も売っていて、おもしろい」というようなことを客の立場として言いました。

しかし、

甘いもののお店も沢山出ていますよね。


“甘いもの”に話を戻されます。

誘導尋問


「そんなに甘いもの好きな人に取材をしたいなら、私は的外れだから、他を当たってくれー!!」と思いますが、慣れないカメラを向けられて高揚していたこともあり、酒のつまみ商品についてベラベラと喋り続けました。

「この女、どれだけ酒を飲みまくっているんだ。」と疑われる内容でした。実際飲みまくっていたので正しいのですが。


それでも、

甘いものを食べるとどんな気分になると思いますか?

と私の話しを遮って質問が続きます。


おぬしもしつこいな!!
甘いものは食べないって言ってるのに!!


そして私は、これを言わなきゃ終わらないんだと悟りました。

幸せな気分になりますね。(多分ね。私はそうじゃないけど)

と言った途端。

ありがとうございました。



即、終わりました。



……なんだか疲れた。




近くでインタビューが終わるのを待っていた同僚が、「随分囲まれていましたね。」と言います。恐らく、4、5分は囲まれていたように思います。

どこのテレビ局なのか、どんな番組で使用されるのかという説明は一切ありませんでした。
腕章だったかカメラ機材だったかに、フジテレビか、FNSの記載があり、「フジテレビらしい。」というのが唯一の情報でした。

一つの取材をいくつもの情報番組で使用することは珍しくないでしょうし、使われるかどうかも分からないので番組の説明は難しいと思うのですが、せめて「フジテレビです。」と名乗ってくれると親切だと感じました。

フジテレビに麒麟さん映りますかね?

「甘いものが好き」って言わせたかったみたいだから、私に取材したのが間違ってるよ。望んでる反応できなかったから使われないと思うよ。


見栄えのする可愛い同僚と、その仲間と思われる女(麒麟)がゼリー屋で商品を買っていたので、「甘いもの好きな女子の二人組だろう」と見込んでインタビューしてきたのでしょう。

それがまさかの、魚介や馬刺しが好きな、ただの酒飲みだったわけです。
とんだ見込み違いでした。

編集された放送


使われないと思うよ。


と言っておきながら、もしかしたら使われるかも!? と帰宅後はフジテレビの番組を観ていました。


すると物産展のニュースが流れました。物産展のスイーツが人気というような取り上げられ方だっだと思います。
「物産展のスイーツを買いに来た女性達の声」として、最後に私が映りました。


使われたのは、私が最後に仕方なしに言った一言「幸せな気分になりますね。」でした。


同僚もテレビを観ていたようで、すぐに連絡が来ました。

ビックリするほど変えられてますね。

全く逆のことを言っていたんだけどね。それを言わないと終わらないと思って言ったことが、やっぱり欲しい言葉だったんだわ。

物産展とはいえ報道なのに、誘導ですよね。


フジテレビへの不信感


釈然としませんでしたが、誰も傷つかない内容でしたし、ほんの2、3秒映っただけでしたのでBPOに訴えることはしませんでした。

報道や情報番組に演出があっては、事実が捻じ曲げられてしまいます。こんなことがテレビ業界では普通なのだろうかと疑問に思いました。


その後東日本大震災が発生しました。
他社が被災地に必要な物などを積極的に放送する中、フジテレビは涙を誘う演出やドラマ仕立ての放送が目立ちました。もともとあった不信感が決定的となり、フジテレビの報道番組を避けるようになりました。

NHKの特集取材


20年近く前の話になります。友人の彼氏がNHKの30分番組の特集を組まれることになりました。

彼は学校でいじめを経験し、引きこもった経験がありました。それを語り聴かせる活動をしており、その活動にスポットが当てられたのです。

当時彼は既に引きこもりではありませんでした。私の友人と出会って非常に明るくなり、結婚の話も出ていました。
彼の家で密着撮影をしている最中に彼女が行くこともあり、彼女の存在も知られていましたが、NHKの番組では彼女の存在を伏せられ、未だに塞ぎ込んだ生活をしているような演出がされました。

部屋の配置も撮影にあわせて変えられ、求められてポエムを書いたのに、自発的に書いたようなナレーションが流れました。

番組の趣旨からして、今後どうなるかわからない彼女の存在を出すのは憚られたのかもしれません。部屋の配置については、今ほどカメラが小型化していなかった時代でしたので、スペースの問題があったのかもしれません。取材対象には細かい説明はされず、どういった描かれ方をするかも番組が出来上がるまで知らされないので、取材対象側は戸惑いを感じやすい現実があります。


番組に「伝えよう」という意思がある限り、何らかの演出は必ず伴います。
どこからが操作にあたり、どこからが虚偽といえるのかは難しいラインがあると言えます。


※20年近く昔の話です。NHKのエピソードについては全くの操作とは言い難いものでした。また、その後NHKの別番組にて創作が問題視された一件があったと記憶していますので、今は改善されている可能性があります。

創作はどこから


冒頭の「とくダネ!」の問題でBPOは以下の見解をまとめました。

報告書では、撮影と放送に対し承諾がなかったとまではいえず、本意でない答えを強いる誘導質問や捏造(ねつぞう)があったと断定することもできないため、人権侵害や放送倫理上の問題があったと判断することはできないとした。
その上で、街頭インタビューの場合、取材を受ける人が不慣れであり、番組名や質問の趣旨などを可能な範囲で説明し、映像使用についても本人の意向を明確に確認しておくことが望ましいとした。

産経新聞




私が受けた物産展のインタビューによる放送は、本意でない答えを暗に強いられた誘導尋問だったと思っています。しかしBPOにかかれば、「断ることができたのだから誘導尋問ではない」とみなされるのかもしれません。

そして「希望通りの発言をしない人だ」とわかっても諦めず、意図通りの言葉を引き出そうとしつこく質問を続けるインタビュアー側の問題が(ほとんど)ないとされてしまうこと自体に問題を感じました。



今後、フジテレビが取材の方法を検討してくれるよう願っています。



皆さんはどうお考えでしょうか。

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