【萩尾望都】ポーの一族・あらすじ

ポーの一族は絶大な人気を誇る少女漫画です。

古いので、若い方は知らない方もいるかもしれません。

最近では宝塚歌劇団で舞台化され、2021年1月には梅田芸術劇場で俳優の千葉雄大さんが舞台「ポーの一族」でアラン役に挑戦されることが発表されました。

ポーの一族を知らない方に、ポーの一族の魅力を知っていただくべく、あらすじをお知らせします。

深い情感に溢れた作品です。

是非漫画で読んでいただくことをお勧めします。

ポーの一族について


ポーの一族は別冊少女コミックにて1972年から連載された漫画です。

作者は萩尾望都さんです。

幼くして捨てられたエドガーとメリーベルを保護したのが吸血鬼「バンパネラ」のポーの一族の老ハンナでした。

子どもの姿でバンパネラになったエドガーは、成長できない寂しさの間で揺れながら、長い時を生きて行きます。

エドガーと関わった人たちが日記や遺書に記したり、子どもや孫に語ることで、人々の記憶に残り、やがて一本の線で結ばれて行きます。
出会いと別れを繰り返し、多くの人間とバンパネラの人生が、色々な人の視点から描かれている物語です。

単行本の物語は時系列ではありません。
時代が交錯しています。

単行本に掲載されている最初の話「ポーの一族」のあらすじを紹介します。


ポーの一族


ポーツネル男爵一家がバンパネラの村「ポーの村」から離れるところから物語が始まります。

一家はポーツネル男爵が父親、シーラ婦人が母親、14歳のまま成長しない主人公のエドガーと、13歳のまま成長しないメリーベルの4人家族です。

エドガーとメリーベルは血がつながった兄弟ですが、両親と血のつながりはありません。
全員がバンパネラです。

目的は新たにバンパネラに迎え入れる人を探すことでした。


一家が寄ったあるホテルで、メリーベルが貧血を起こし、色男のクリフォード医師と知り合います。
クリフォード医師は女性癖が悪く、美人なシーラに興味を持ちました。


エドガーは体の弱いメリーベルに血を分け、メリーベルの回復を祈ります。


その後エドガーは貿易商会の子息であるアラン・トワイライトと偶然知り合い、興味を持ちます。
アランが通う学校、セント・ウィンザーに転校を希望しました。


父親役のポーツネル男爵とエドガーは折り合いがよくありません。


ポーツネル男爵は「胸に杭を打たれたくなかったら、ガラスに映ることを忘れず、息をするふり、脈のあるふり、鏡に映るふり、指を挟まれたら痛がるふりを忘れるな。」と釘を刺し、学校に通うことを認めます。

寂しがるメリーベルに、「アラン・トワイライトという友達を連れてくる。」とエドガーが伝えます。


転校初日にアランに話しかけると、「家に財産があり、市全体が自分の支配下にある。ぼくに従え。」とエドガーを支配下に置こうとします。エドガーは「一人ではなにもできないのか。」とアランを非難しました。

アランは同級生たちを使ってエドガーに嫌がらせをします。バランスを崩したエドガーがガラスを割って大怪我をしました。

アランは焦り、エドガーをクリフォード医師の元に連れて行きます。


クリフォード医師は手当てをしながら、エドガーの大人びた口調に「もう10年も経って大人になってから言うものだ。」とたしなめますが、エドガーは「10年経ってもぼくはこのままだ。」と心で思います。


怪我をして目立ってしまったことをポーツネル男爵が怒ります。
人間より傷が早く治ってしまうため、治さないよう注意し、成人した人間でないとバンパネラの仲間に入れられないのだから、友達に手を出すなと言って、エドガーと喧嘩になります。


エドガーは子どものままバンパネラにされていて、成長できないことに強い孤独感を抱えていました。

エドガーの心の支えはメリーベルへの強い愛情でした。
メリーベルのためにも、友達が欲しいと考えていました。



アランは父を亡くし、母親が病気で寝込んでいます。
伯父が一時的に会社を継いでいて、お金のために伯父の娘のマーゴットと結婚するよう迫られていて、鬱屈した思いを抱えて生活していました。



アランは同級生に金を渡し、怪我以来学校を休んでいるエドガーの様子を見に行かせますが、エドガーに追い払われます。
エドガーが待っているのはアラン本人でした。

エドガーがアランに会いに行くと、アランは家の鬱憤を抱えて飛び出してきたところでした。
そこでエドガーについて来たメリーベルとアランが出会います。


アランは一目でメリーベルに惹かれました。かつての婚約者で亡くなったロゼッティ・エンライトにそっくりだったからです。
ロゼッティの焼き絵を見せられたエドガーは、メリーベルの幼い頃のものかと焦ります。


メリーベルがまだ人間だった幼い頃は100年も前のことで、アランが知るわけがなく、別人と知って安心します。
未練を断ち切らせようと焼き絵を落として割り、エドガーとアランは大喧嘩になりました。


エドガーとアランの親しい様子を見て、ポーツネル男爵が「親しすぎる。」と怒ります。



クリフォード医師をターゲットにしたポーツネル男爵とシーラは、クリフォード医師の師であるカスター先生の家に招かれます。
そこにはカスター先生の娘であり、クリフォードの婚約者でもあるジェイン嬢がいましたが、クリフォードはシーラしか見ておらず、ジェインは傷ついていました。


しかしクリフォードが、死角にあった鏡にポーツネル男爵とシーラの姿が映っていないことに気が付きます。

二人を疑いますが、他の鏡に映っている姿を見て、気のせいだと思い込もうとします。

クリフォードに疑われていると知らないポーツネルとシーラは帰宅の途につきました。
シーラは自分に嫉妬するジェインを気に入り、新たなターゲットにしました。



日曜日の教会のミサに、ポーツネルとシーラが参列します。
クリフォードはその姿を見て、思い過ごしだったと安心します。


アランは心のうちにためてきた辛い思いをエドガーに打ち明けようとします。
エドガーはアランが心を許していることを知り、仲間に迎えたいと、首に唇を寄せました。

アランは驚いてエドガーを突き飛ばします。
真っ赤な唇のエドガーを見て、アランは聖書を読み上げます。

聖書が苦手なエドガーは逃げ帰りました。



バレたから逃げようとポーツネルに言いますが、信仰心が薄いこの街であれば、恐れず向かっていくべきだと諭されます。


翌日、何食わぬ顔をして学校に行くと、アランから無言で十字架のネックレスを渡されました。

喜ぶフリをして十字架を受け取り、「首筋にキスをしてからかっただけ。怒ってないんだね。」と喜んで見せます。アランは青い目と赤い唇を思い出し、怪しみながらも、見間違いだったのかと疑心暗鬼に陥ります。

そこにアランの母親が危篤という知らせが入り、アランは急いで帰宅します。
母は持ち直し、安堵しますが、伯父一家にマーゴットとの結婚を急かされ、断ると責め立てられました。


アランはポーツネル家を訪ね、メリーベルに結婚の約束を迫ります。
「二年か四年かあとでいい。約束だけして。きみがもっと大人になって(から)。」というアランに「それはむりよ。」とメリーベルは答えます。
「なぜ。」と聞くアランに「わたしたちといっしょに遠くへいく?ときをこえて遠くへいく?」と問います。

雨に濡れて体調を崩して帰宅したアランは、夢の中でエドガーがバンパネラだと確信しました。


メリーベルに話を聞いたエドガーが、眠っているアランのベッドを訪ねます。
指先からアランのエナジーを吸ったところでクリフォード医師が部屋に入ってきました。

クリフォードは総毛だった異様な冷気に驚き、バンパネラが頭をかすめますが、まさかと打ち消します。



シーラとメリーベルは街でジェインと出会います。

メリーベルがまた貧血を起こしたため、近くのジェインの家で休ませてもらうことにしました。
シーラはジェインに似合う帽子を取りに一端帰宅すると言い別れます。


帰宅する途中の海辺でシーラはクリフォードと出会います。
雷が鳴り雨が降り出したため、近くにあった小屋に駆け込みました。


クリフォードは美しいシーラにキスをしますが、顔に当てた手に脈が触れないことに気づき、人間でないことを確信します。

その場にあった鍬を手に取り、シーラに突き刺しました。


同時に激しい落雷と大雨に晒され、シーラは命からがら逃げ出します。


何とか家に帰りついたシーラをエドガーとクリフォードが看病しました。
傷は肩から胸へとザックリ切られていて危険な状態でした。

せめて一日待って血が止まってからでないと助からないと言うエドガーに対し、すぐに逃げなければみんなやられてしまうとポーツネルが怒ります。

そこでエドガーが、メリーベルがいないことに気が付き、シーラにメリーベルがどこにいるのか問いただします。



そのころメリーベルはジェインの家で雷を怖がっていました。

ジェインがメリーベルを抱きしめ、安心させているところにクリフォードがやって来ます。


ずぶ濡れのクリフォードは「ジェインはなれろ!」と叫び、銀製の弾の入った魔よけの銃を持ち出します。ジェインは止めますが、メリーベルは銃で撃たれ、灰になって散りました。

騒ぎを聞きつけたカスター医師に「うちくだけ悪魔を!」と呼びかけます。

ジェインはあまりのショックに狂ってしまいました。


一人になったクリフォードの元にエドガーが現れ、話しかけます。
「メリーベルの悲鳴が外まで聞こえた。ぼくは間に合わなかった。」

「悪霊! 消えろ! お前たちは実在しない!」クリフォードが叫びます。

「実在している。あなたがたよりはずっと長い時間を。なにかいいのこすことは?」エドガーが静かに問います。

「消えろ! おなえたちはなんのためにそこにいる。なぜ生きてそこにいるのだ、この悪魔!」
クリフォードの叫びと共に、エドガーはメリーベルが撃たれた銃でクリフォードを撃ちました。



倒れたクリフォードの前で「なぜ生きているのかって、それがわかれば! 創るものもなく生み出すものもなく、長いときをなぜこうして生きているのか。」エドガーは自分に問いかけます。


その時、ポーツネルとシーラは馬車に乗ろうとしていました。
しかしシーラは直前に灰となり散ってしまいます。

散る瞬間を見た御者を打ち、ポーツネルが馬車を動かしますが、対向車と衝突し、散ってしまいました。


遠くから見ていたエドガーは、自分が一人になったことを知ります。



「幕だ、すべてはおわった! もうメリーベルを守るために生きる必要もない。生きる必要もない……。」と悲しみながら笑います。




体調がよくなったアランが母親の部屋を訪ねると、伯父が母親にアランとマーゴットの結婚を進めさせるよう話しているところでした。
その様子から、伯父と母親ができていることを知ってしまいます。


その場から逃げたアランを伯父が追ってきました。
掴まれた肩を振り払った拍子に、伯父が階段から落ち、死んでしまいます。

マーゴットに人殺しと叫ばれ部屋に逃げ込みメリーベルの名を叫ぶと、窓からエドガーがやって来ました。

「メリーベルはもういないよ。」
「メリーベルはどこに?」

アランはメリーベルが生まれる前に戻ってしまったことを悟ります。


「ぼくはいくけど」エドガーが言いました。
「どこへ」アランが聞きます。
「遠くへ。きみはどうする? くるかい?」

アランは何も言いません。

「おいでよ。一人ではさびしすぎる」

エドガーの伸ばした手に、アランが手を差し出します。


風が吹き込む窓の奥に笑い声が聞こえ、二人は消えてしまいました。



あるドイツの学校で、生徒が門を指さし、転入生の存在を知ります。
それがエドガーとアランでした。



~ポーの一族~終わり

ポーの一族・目次


ポーの一族は、上にあらすじを紹介した「ポーの一族」を始めとした数々の作品で成り立っています。


単行本に収録されている順の作品名はこちらです☟

ポーの一族
ポーの村
グレンスミスの日記
すきとおった銀の髪
ペニー・レイン
はるかな国の花や小鳥
リデル♥森の中
一週間
メリーベルと銀のばら
エヴァンズの遺書
ピカデリー7時
ホームズの帽子
小鳥の巣
ランプトンは語る
エディス


掲載順と連載時期は違うようです。

作品ごとの掲載時期☟

すきとおった銀の髪(『別冊少女コミック』1972年3月号)

ポーの村(『別冊少女コミック』1972年7月号)

グレンスミスの日記(『別冊少女コミック』1972年8月号)

ポーの一族(『別冊少女コミック』1972年9月 – 12月号)

メリーベルと銀のばら(『別冊少女コミック』1973年1月 – 3月号)

小鳥の巣(『別冊少女コミック』1973年4月 – 7月号)

エヴァンズの遺書(『別冊少女コミック』1975年1月 – 2月号)

ペニー・レイン(『別冊少女コミック』1975年5月号)

リデル・森の中(『別冊少女コミック』1975年6月号)

ランプトンは語る(『別冊少女コミック』1975年7月号)

ピカデリー7時(『別冊少女コミック』1975年8月号)

ホームズの帽子(『別冊少女コミック』1975年11月号)

一週間(『別冊少女コミック』1975年12月号)

エディス(『別冊少女コミック』1976年4月 – 6月号)

春の夢(『月刊フラワーズ』2016年7月号、2017年3月 – 7月号)

ユニコーン(『月刊フラワーズ』2018年7月 – 9月号、2019年5月 – 6月号)

秘密の花園(『月刊フラワーズ』2019年7月号、2020年8月号 – )

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%81%AE%E4%B8%80%E6%97%8F

「春の夢」は2017年、「ユニコーン」は2019年にそれぞれ独立した単行本になっています。



本編の中で代表的な物語は、エドガーとアランが出会う「ポーの一族」、エドガーとメリーベルがバンパネラになるいきさつが描かれた「メリーベルと銀のばら」でしょうか。

ポーの一族は全てを通して、非常にいいんですよね。


それにしても「すきとおった銀の髪」から描いているとは、構成力が素晴らしく、凄い漫画家だと改めて思います。





私の母が好きでしたので、実家に単行本がありました。



私も好きになり、文庫本を買って手元に置いています。


非常に魅力的なお話です。

是非読んでみてください。

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