とんだ迷惑事を起こしてご近所に謝り倒した話です。

深夜二時の放水トラブル

夫が深夜二時に仕事から帰宅しました。

私は子どもと眠っていましたが気配で起きました。

お向かいの★★さんのお宅の庭から道路に、
大量の水が放水されてたよ。

夫

え？
放水？

玄関を開けてお向かいと我が家の間の道路を見ました。

確かにお向かいの★★さんのお宅から、アーチを描くように大量の水が放水され続けています。
お向かいのお宅は雨戸を閉めていて、庭と道路を隔てる塀は施錠され、玄関ポーチの明かりも消えています。

麒麟

……これ、庭の蛇口が飛ぶとかしたんじゃないの？
知らせた方がいいよね。

深夜だよ。非常識じゃない？
変質者だと思われても嫌だし。
放水が続いても危険がないから大丈夫だよ。

夫

麒麟

だけどこの水量が朝まで続いたら、
水道代が２、３万じゃ収まらないよ。

仕方ないんじゃない？

夫

常識か非常識か

★★さんのお宅は現役を退いていて、年金受給世代です。

私は家計を握る主婦ですので、水道代で無駄に出費をするのは嫌だろうと考えました。
無駄に出費するよりは、深夜に叩き起こされる方がいい！

確かに深夜にインターフォンを鳴らされたら怖いかも知れない。
電話ならいいのでは？

今思うと突っ込みどころ満載の思考なのですが、電話ならいいだろうと自治会名簿を探しました。

お向かいさんは我が家と住所が続きではありません。
住所は何番になるんだろう？
眠い目を擦り、★★さんの名前を探します。

あった！！

名簿に載っていた★★さんの名前は、同じ丁目で一軒だけでした。

大失敗

早速電話をかけます。しばらく呼び出しが続いた後、男性が眠そうな声で出ました。

麒麟

深夜に申し訳ありません。私は向かいの◇◇です。
★★さんのお宅のお庭から大量の水が放水されています。
水道代がかなりかかると思われます。
蛇口を確認された方がよろしいかと思いまして連絡させていただきました。

男性は少し戸惑ったあと、確認すると言って電話を切られました。

私の仕事は終わった。
と思いながら玄関を開け、お向かいの様子を伺います。しかし一向に出てくる気配がありません。

おや？
どうしたのかしら。

何だか胸騒ぎがします。
おや、お向かいさんの門に住所が記載されているじゃないの。

距離がありますが電灯の明かりを頼りに視力の良さを発揮して見てみると、あれ？

先ほど電話した★★さんの名簿の住所と違う……。

そんなバカな！！　何で！？　
この丁目で★★さんの名前は名簿に一軒しかなかったのに！！

家に入って名簿を見返し、スマートフォンで住所を検索します。←今更。

名簿の★★さん、お向かいさんじゃない！！　間違えた！！

慌てて間違えて電話してしまった★★さん宅に向かいます。
深夜二時過ぎにサンダルで近所を疾走する主婦。

電話で叩き起こしてしまった★★さん宅は家中に電気が点き、電話に出られたご主人やお子さん達が総出で庭を確認されていました。

失敗に気付き謝り倒す

疾走する頭ボサボサの私に気付かれたご主人がこちらを見ました。
門外から、

麒麟

先ほど電話をした◇◇です！
申し訳ありません、電話をする相手を間違えてしまいました。
本当に申し訳ありません！

渾身で謝りました。頭を下げまくりました。因みに初対面です。

なんて非常識なことをしてしまったんだ！！　と半泣きで謝りました。

するとご主人は、そうですか。異常がないからどういうことかと思いました。では。と言ってご家族と家に入られました。
怒りたいところだろうに。紳士な方でした。

半泣きのまま、とぼとぼと歩いて家に帰ります。

家の前には相変わらず水が放水され続けています。

インターフォンを鳴らして知らせた方がいいのだろうかと考えましたが、先ほどの失敗が尾を引いて「また失敗したら。」と怖くなりました。
睡眠を邪魔するのは良くない、と消極的な理由を挙げ、朝まで待つことにしました。

水の音を聞きながら玄関を開けた時、とてつもない虚しさが襲ってきました。

失敗を報告

布団に入り半分寝ていた夫に、

麒麟

間違えて違うお宅に電話して起こしちゃった。
謝りに行ってきた。

もー、だから余計なことしないほうがいいって言ったのに。
仕方ないことなんだから。

夫

夫はそのまま寝てしまいました。

がっつり落ち込んだ私はしばらく眠れませんでした。
間違って電話をして起こしてしまった★★さん一家も眠れていないでしょう。

明るくなったら改めて謝りに行こうと思いました。

謝罪に次ぐ謝罪

朝６時に気がついた時には、水道が止められていました。

私は相変わらず落ち込んでいました。
謝罪の品を購入して謝りに行こうと家を出た時に、お向かいさんに会いました。

水が放水されていましたが、大丈夫でしたかと聞きました。
大丈夫も何も、既に止められているのだから大丈夫と言えば大丈夫なのでしょうが、聞きました。

庭の蛇口が外れてしまったために起こったことだそうで、元栓を止めたのだと言いました。
いつから出ているかわからないから水道代が怖いと話していました。

手土産を持って起こしてしまった★★さん宅を訪ねました。

改めて謝罪をすると、快く受け取ってくれました。やはり眠そうにしていました。
犯人は私です。

その時我が家は引っ越しをして一年に満たず、お向かいさんが自治会に未加入であることを知りませんでした。
自治会に未加入だと自治会名簿に詳細が載りません。
私の知識不足と確認不足が招いた事態でした。

あー、失敗した。あー、中途半端だ。
結局人に迷惑をかけただけでした。

あー！

あー！！！

私のしょうもない失敗談が、誰かの慰めになりますように。