警察に期待した男
夫の職場での話です。
ついに切符切られましたよ。
これまで一度も切られたことないのに。最悪。
☝切符とは、交通違反をすると警察から渡される反則切符のことです。
これまで止められたことは何度もあったけど、素直に謝り倒すと見逃してくれてたんです。それが今回は見逃してくれなかった。なんでだよ。
何でだよ、っていうより、これまで見逃されていた事実が凄い。
交通違反を見逃されることなんてあるの!? しかも何度もって。すごいな。
我が家は一度も見逃されたことはありません。
標識がわかりにくいスポットで他の車も引っかかっている中捕まり、納得がいかなくて抗議しても通らないことはありましたし(都内)、ひじ掛けに肘をつき耳に手のひらを当てて運転していたところ、携帯電話を使用していたと勘違いされ、違うと訴えても「見ていたから」と一点張りで切符を切られた知り合い(横浜)もいます。
理不尽を感じる場合であっても、見逃されたことはありません。(警察批判じゃないですよ。一部の理不尽を除けば、取り締まるのは大事なことだと思います。)
そんなラッキーが続く人もいるのかと感心しました。
その話を聞き、昔の話しを思い出しました。
蜂に期待した女
小学生の頃の話しです。
私は蜂に好かれているのだと思っていました。
妄想に励み、頭の中は常に物語であふれていました。
客観視に乏しい年齢でしたので、主役は私でした。
物語の内容は変身願望に溢れた内容でした。
その中に、「蜂に好かれている。」という思い込みがありました。
きっかけは何かの拍子にミツバチの背中を優しく掴んだら、持つことができたことです。
元に戻すと蜂は飛び去って行きました。
皆が怖がる蜂ですが、私は持つことができる、という特別感を味わいました。
蜂と一言で言っても、「ミツバチ」です。やっぱり。
それ以上に大きい蜂が身の回りにいた覚えがありません。いたのかもしれませんが、そのころの私にとって蜂と言えば絵本に出てくるミツバチでした。
期待は成功から生まれる
美少女戦士セーラームーンのアニメ放映が始まっていました。
変身して戦うのが格好いいという憧れがありました。
友達が怖がる中、蜂を掴み無事に放ったことで羨望の眼差しを受けることになりました。積極的に 蜂を掴みにかかり、特別感を味わいました。
後にも先にも友人たちの中で特別な存在になったのは、蜂を掴んだ時だけだったのかもしれません。
違う年、違う日に三匹は掴んだと思います。
そしてある年の5月。小学校登校中に通学路脇に咲くツツジの蜜を吸うミツバチを掴みました。
ミツバチの尾が丸く曲がり、私の指に刺さるのを見ました。
そして痛みが走りました。
つまり刺されました。
咄嗟に蜂を振り払い、
痛い!
と声を上げました。
上級生が慌てて私を学校の保健室に届けてくれました。
蜂を持ったら刺された。
という私に、
当たり前でしょ!
と保健医が半ば叱り気味に言いました。
「私は蜂に好かれている。」とはとても言えません。
なぜなら、つい今さっき、好かれていると思っていた蜂に刺されたからです。
振られたも同然でした。
私は失恋したばかりで呆然としていました。
針は残ってないわね。
この後、病院に行ったような。
覚えていません。
私は蜂に好かれていなかったという事実がショックだったことだけをよく覚えています。
今であれば、「人間がそれぞれ好みを持つように、蜂にも好む人間が違うのカモよ。」と無駄にポジティブに考えられるかもしれませんが、その時はそれどころではありませんでした。
それから今に至るまで、蜂を持つことはありませんでした。
蜂(ミツバチ)の生態
この記事を書くにあたって、ミツバチについて調べました。
刺すミツバチはメスなのだそうです。
刺されなかった三回はたまたまオスを掴んでいたのかもしれません。
メスの針は抜けにくい構造となっているため、刺した後に針を切り離し、逃げます。
しかし針と共に一部の機関も切り離してしまうため、長く生きられず死んでしまいます。
人間より柔らかい皮膚の動物などに刺した場合は針が抜けやすいため、死ぬ確率が低いようです。
また、嬢王バチの針は抜けやすい構造をしているので、何度も刺すことができるそうです。
私を刺した蜂は嬢王バチだったのか、まだ幼かったので皮膚が柔らかく針が抜けやすかったのか。
とにかく蜂には生命の危機を感じさせたということです。
「蜂に好かれている。」が聞いて呆れます。
期待して裏切られる
夫が同僚の話しを嬉々としてしてきたとき、私は蜂の記憶が蘇りました。
裏切られた気になってしまう同僚の気持ちがよくわかりました。
しかしよく考えてみれば、裏切られたのではなく、その前が超ラッキーだったに過ぎません。
ラッキーマン、ラッキーウーマン(キッズ当時)が本来のレベルになっただけです。
レベルが下がるのは癪に障りますが、仕方のないことです。
夫や子供たちに、
蜂を持ったら刺されたことがある。
と告白したら、
はー!? ママなにやってんのー!?
と笑われました。
私の切ない思い出話は家族の笑いの種となりました。
普通レベルに落ち着いた私は、家族に笑われて報われました。
以上、切ない思いででした。